高齢の親の【500円玉貯金・小銭貯金】銀行に入金すると損する? 相続の対象になる?注意ポイントをFPが解説
「実家の掃除をしたら結構な額の小銭貯金が出てきた」「母親が自分のへそくりのためにコツコツ500円玉貯金をしていた」。そんな大量の硬貨をどうすべきなのか、親の小銭も相続の対象になるのか。小銭貯金の損しない扱い方について、親の介護経験をもつFPで行政書士の河村修一さんに教えてもらった。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、内外資系の生命保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/
親の小銭貯金や500円玉貯金、どうする?
近年はキャッシュレス化が進み、現金を使う頻度が減少しています。とはいえ、高齢者の中には、まだまだ現金主義のかたも多いかもしれません。
親が保有していた小銭貯金や、ご自身が始めた500円玉貯金など、小銭がある程度貯まっている場合、どのように対処すればいいのでしょうか。親から小銭貯金を受け継いだ場合はどうなるのでしょうか。
貯まっている小銭の金額によっては、貯金や紙幣への両替など活用法を考えることもあると思いますが、やり方によっては損してしまうことも。せっかくコツコツ貯めた小銭、損しないための注意ポイントについて解説していきます。
貯まった小銭の活用法
貯めた小銭の活用方法として考えられるのは、以下の3つです。
【1】自宅で保管し、少しずつ使う
【2】銀行に持参して口座に入金する
【3】紙幣に両替する
それぞれ、メリット・デメリットや注意点を考えてみましょう。
【1】自宅で保管しておくときのメリット・デメリット
自宅に保管しておき、少しずつ日常生活で使っていきます。メリットとしては、貯まった小銭の量にもよりますが、銀行まで持っていく手間が省け、ちょっとした買い物で小銭を使うことができます。徐々に小銭の量を減らすことが可能になります。
一方、デメリットとしては、貯まった小銭を減らすのに多くの時間を要することや災害などの場合に紛失するリスクがあります。
また、金額によっては空き巣や強盗の被害にあったり、認知症などで保管した場所を忘れてしまったりする場合もあるかもしれません。
【2】銀行に入金するには枚数によって手数料がかかる
銀行では、小銭の取り扱いに手数料が発生する場合があります。また、銀行によって取り扱いが異なるので事前に確認しましょう。
ここでは、全国各地にあるゆうちょ銀行を例に挙げます。ゆうちょ銀行では、ATM入金と窓口での入金があります。それぞれ確認していきましょう。
ATMで硬貨の預入を行う場合
ATMで入金をする場合、1枚から手数料がかります。例えば、1円玉26枚(26円)を預け入れる場合、110円の手数料が必要で、結果的にマイナスになってしまいます。
■ゆうちょ銀行/ATMの硬貨預け入れの手数料
1~25枚…110円
26~50枚…220円
51~100枚…330円
窓口で硬貨の預入を行う場合
窓口で入金する場合は、100枚までは無料です。しかし、1枚でも超えると手数料がかかります。例えば、1円玉101枚(101円)を預け入れる場合、550円の手数料が必要です。
貯金しいていた小銭を100枚以内だと大雑把に見積もって窓口で渡し、もし101枚だった場合でも、1枚の返金はできず、所定の手数料が発生します。
持参するときには、ご自身で枚数をしっかり数えて持参するようにしましょう。
小銭貯金を自宅で管理する際は、金額だけでなく、硬貨の枚数も一緒にメモしておきましょう。こうすることで、銀行に持ち込む際の確認作業がスムーズになります。
■ゆうちょ銀行/窓口での硬貨預け入れの手数料
1~100枚…無料
101~500枚…550円
501~1,000枚…1,100円
1,001枚以上…500枚毎に550円加算
※参考/2024年02月22日硬貨取扱料金改定のお知らせ ゆうちょ銀行
https://www.jp-bank.japanpost.jp/news/2023/news_id002035.html
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このほか、三菱UFJ銀行の場合、ATMでの入金は「大量硬貨取扱手数料」が設定されていて、100枚までは無料。三井住友銀行は「硬貨入金整理手数料」が300枚までは無料となっています。指定の枚数を超えると手数料が発生するので注意が必要です。
こうしたことから、小銭貯金を無料で銀行に入金するには、100枚ずつに分けてコツコツ入金するのがポイントになりそうです。
【3】紙幣に両替する
硬貨を紙幣にするには、上記の方法で銀行に硬貨を入金し、お金を引き出すときに紙幣にする方法があります。
また、銀行の窓口や両替機で硬貨を紙幣に両替する場合、1~10枚までは無料のことろが多いですが、銀行口座やキャッシュカードを持っているなどの条件があります。なお、ゆうちょ銀行では紙幣への両替は行われていません。
たとえば、500円玉貯金が200枚貯まって10万円だった場合、口座のある三菱UFJの窓口で両替をする場合、101枚~500枚までの手数料は、550円なので、手数料を差し引くと9万9450円になってしまうので、損をしてしまいます。
親の小銭貯金は相続の対象になる?
小銭の所有者が亡くなった場合、小銭貯金も相続財産になります。
親が小銭を自宅の目立たない場所などで管理していた場合、相続人もその存在に気付かずに相続税の申告をしてしまい、申告漏れが発生する可能性もあります。相続税が発生する場合は、申告漏れがあると相続税にペナルティが課されるため、親の小銭貯金を譲り受ける場合には注意が必要です。
※参考/国税庁「申告と納税」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/pdf/19.pdf
小銭貯金・500円玉貯金の扱いにはご注意を【まとめ】
貯めた小銭の処理は、意外と手間がかかることがあります。銀行での取り扱いは手数料が発生する場合が多いため、事前に確認が必要です。
手数料をかけない方法としては、「100枚までゆうちょ銀行に窓口入金」「100枚ずつ銀行のATMで入金する」があります。ただし、銀行により手数料や設定が異なるので事前に調べておくといいでしょう。
また、自宅で保管する際には、金額だけでなく枚数を管理しておきましょう。小銭を少しずつ日常生活で使っていく方法もありますが、キャッシュレス化が進む中、大量の小銭を持ち歩いたり、支払いで使ったりするのは気が進まないかもしれません。
小銭貯金がある程度たまっている場合は、ここで紹介した損しない方法を選んで銀行などに入金し、少しでも増える貯金方法を検討してみるのはいかがでしょうか。