“歌うこと”がもたらす健康効果とは?シニア世代のおすすめ!心も体も元気する「カラオケ」7つの極意【専門家監修】
日本のカラオケ人口は約3780万人(※)。誰でも気軽に行えるカラオケには、ストレス解消、免疫機能改善、血行促進、血圧安定のほか、さまざまな病気予防効果が期待できるという。ただの趣味にしておくだけではもったいない!日々を元気に過ごす極意を伝授する。
※全国カラオケ事業者協会『カラオケ白書2024』より
教えてくれた人
周東寛(しゅうとうひろし)さん/医学博士、南越谷健身会クリニック理事長。著書に『「演歌療法」で若返る』(コスモトゥーワン)ほか。
西尾慎太郎さん/音楽療法士、音楽を通じた機能訓練を行う「デイサービスM’s studio」法人代表。
歌うことで6種類の幸福ホルモンが分泌される
カラオケは、なぜ健康にいいのか。医学の立場からその治療効果を提唱する医学博士の周東寛さんが説明する。
「歌うと心地よい気持ちになりますよね。これは歌うことで、脳内からエンドルフィンやアドレナリンなど6種類の幸福ホルモンが分泌されるからです。この幸福な状態を“カラオケハイ”といいますが、この状態になるとふさぎ込んだ気持ちが解消し、精神状態も安定します。血行も促進されるので血圧も安定します。私の患者さんには、降圧剤と並行してカラオケや家で好きな曲(1日1回2〜3曲)を数か月間、歌い続けただけで血圧が30mmHg近く下がり、薬をやめても血圧が安定したかたがいます」(周東さん・以下同)
また、歌うことでダイエット効果もあるという。
「内臓付近の筋肉が刺激されて代謝が上がり、内臓脂肪の減少につながります。血行がよくなると体のすみずみまで酸素や栄養が行き届くので、肩こりや冷え症、便秘、更年期障害などの女性特有の不調改善も期待できます。さらに免疫機能が正常な状態になることで病気も予防でき、骨にカルシウムが吸収されやすくなるため、骨粗しょう症の予防にもなると医学的に明らかになっています」
加えて「カラオケは認知症予防や対策にもなる」と言うのは、音楽療法士の西尾慎太郎さんだ。
「音楽を聴き、歌を歌うことで記憶力や認知機能が刺激されます。認知症患者がカラオケで歌うことでイキイキし、気持ちが明るくなったり、前向きになったという例があります。歌うことで唾液の分泌が促進されて口腔機能が活性化し、嚥下(えんげ)機能が向上することもわかっています」(西尾さん)
体にいいことばかりのカラオケ。その効果を上げる歌い方を身につけよう!
歌って脳も心も体も若返る!7つのテク
歌い方や選曲を意識するだけで、ただのカラオケがダイエットや病気、認知症予防効果が上がり健康法になる。元気で長生きするためのポイントとは?
1:腹式呼吸で内臓を活性化
「歌う前に腹式呼吸のトレーニングを行うことが大切です」とすすめるのは、前出の周東さんだ。
「お腹が膨らむまで鼻からゆっくり息を吸い、吸い切ったらお腹がへこむまで吐き切ることが重要です。
次にお腹に手を当て、大きく息を吸い、息を吐きながら『あー』や『ヤッホー』など、何でもよいので腹の底から大声を出してみます。するとお腹がへこむのがわかるはずです。腹式呼吸を使った発声法を『腹式発声』と呼び、カラオケ健康法に欠かせない発声方法です。そのほかにも歌う前にトレーニング(下のイラスト参照)を行えば、声が出やすくなります」(周東さん・以下同)
歌う前にやっておきたい「腹式呼吸トレーニング」
1〜6を1セットとして1日にトータルで20回を目標に。カラオケをしなくても、健康効果が期待できるのでおすすめ。
<1>大声で叫ぶ。
<2>息を吸い「ハァハァハァ」と息を吐きながら発声。
<3>ドミソの音を「あ、あ、あ~」と大声で発する。
<4>口をすぼめて息を吐きながら「あ、あ、あ〜」と発する。
<5>口をすぼめて息を吐きながら「あ、え、い、お、う」と発する。
<6>唇を両手の指で左右に開き「あ、あ、あ〜」と発声。
2:ハミングでのどを強化
腹式呼吸ができたら発声トレーニングに挑戦しよう。
「プロの歌手でも毎日、ボイストレーニングを行っていますから、できれば3〜4日に1回は発声トレーニングを行いましょう。おすすめはハミングです。お腹に手を当てながら好きな曲を『ルルルル』や『ララララ』とやや大きめの声でハミングすることで腹筋が動くため、声が出やすくなります」
効果を上がる!「お風呂で発声トレーニング」
「湯船につかりながら、歌ったり、ハミングをすれば、のどが潤い美声を磨けます」(周東さん)
3:アカペラで聴力を強化
「人前で歌うのは恥ずかしい」「カラオケをするために出かけるのは面倒」という人は、ひとりで歌うだけでも効果がある。
「CDなどで好きな曲をかけ、それに合わせて歌うのはもちろん、曲をかけずにアカペラで歌うだけでも健康効果は高まります。アカペラは腹式発声などの基礎ができていないとしっかり歌えませんし、音程を理解していないと最後まで歌うことができません。まずは好きな歌をしっかり聴き込んでからアカペラで歌うと、聴く力と脳が同時に鍛えられます。
最初はうまくいかなかったとしても大丈夫。歌い込んでいくうちに上達していきます。音程にとらわれすぎるよりも、声に出して1曲歌い切ることです。歌いなれた童謡から始めてもよいかと思います。このときも、丸ごと1曲最後まで歌い切りましょう」