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暮らし

《すみちゃんねる》60代の人気YouTuberが明かす壮絶介護生活「認知症のおばを20年介護して得たもの」

シニアインフルエンサーの人生に迫る企画、YouTube「すみちゃんねる ~シニア夫婦~」を運営する久美子さん(66才)にインタビュー。ほのぼのとした日常生活の動画が人気だが、その人生には「介護」が深く関わっていた。

すみちゃんねる・久美子さん/プロフィール

1959年徳島生まれ、66才。2019年、99才の寿美子おばあちゃんの様子を動画投稿するYouTubeチャンネル「すみちゃんねる」を開設。現在はシニア夫婦の日常や介護のことを配信し、幅広い世代から支持を集め、現在のチャンネル登録者数は約2万4000人。
Youtube「すみちゃんねる~シニア夫婦~」https://www.youtube.com/@sumi-ch
インスタ「sumi_w7すみちゃんねる」https://www.instagram.com/sumi_w7/

40代、初めての介護に戸惑うことばかり

「すみちゃんねる ~シニア夫婦~」(以下「すみちゃんねる」)で夫婦の日常生活を配信し、人気を集めている久美子さん(66才)。チャンネル名の由来ともなっているおば、寿美子さんを介護することになった経緯とは。

→60代夫婦の日常を発信《YouTubeすみちゃんねる》3本目の動画がバズった理由「フレンチトーストを焼いているだけなのに…」

――初めての介護で戸惑うことや困ったことはありましたか。

「おばさんの介護を手伝ってほしい」と、幼い頃からお世話になったおじに頼まれ、地元の徳島から奈良に引っ越したのは49才のときでした。

 当時おばは83才、近所の人によると70代から認知症の兆候はあったということでした。足腰が弱ったおじが、おばの世話を1人で抱えていて、ヘルパーさんやデイサービスなど介護保険のサービスを何も利用していなかったんです。

 おばは長らく専業主婦で自分のことはもちろん、夫の身の回りの世話もしてきた人でしたから、認知症を患っていましたが「まだまだ自分でできる」と思い込んでいたんです。突然やってきた私がお世話をしようとすると『なんで久美ちゃん、ここにいるの? 徳島に早よお帰り』としょっちゅう言われて参りました。

 私は父を早くに亡くしていて母はまだ元気でしたから、人生初めての介護。役所に行って地域包括センターを紹介してもらって介護認定を申請して、何もかもゼロからのスタートでした。

――介護認定を受けて介護生活は変わりましたか。

 おばの認知症は徐々に進行していたようで、すでに1人ではお風呂に入れない状況でした。まずはデイサービスの利用から始めたのですが、「なんであんなところに行かないといけないんや!』と拒むので、最初は1時間、次は2時間、3時間と利用時間を増やしていき、少しずつ慣れてもらいました。

 男性の介護スタッフがお迎えにいらっしゃると、愛想良く「お世話になります』と言いながら素直に従うのですが、私に対しては『あんたがあんなところに入れたんやろ!』と鬼の形相で…。当時はよく叩かれたり、ものを投げられたりしましたね。

おばの認知症介護、そしておじも…

――始めての認知症介護でご苦労が多かったですね。

 おばは認知症の進行とともに困ったことを度々起こすようになりました。夜中に起きて突然ご飯を炊いてみたり、真夜中に犬の散歩に出かけてご近所さんの家に犬が迷い込んでしまったり…。ご近所さんも事情をわかってくださっていたので助けられましたね。

 介護を始めて2年ほど経ったとき、おじにがんが発覚したんです。「余命半年」ということで即、入院となりました。おじの看病もありましたから、おばはショートステイを利用したり、グループホームにもお世話になりました。

 おじはしっかりした人でしたから、自分の状況を冷静に判断していたんだと思います。妻(おば)を残して先立つことを心配していたんでしょうね。自分がいなくなった後も私が困らないように色々と準備をしてくれていました。

 正式に養女になってくれないかと相談され、受けることにしました。養女となり、おじが亡くなった後、おばに変わってお葬式の段取りや家の後片付けをしました。

――徳島に住む実母はどうされていたんですか?

 おばの介護を続けながら、奈良と実家の徳島とを行き来していたのですが、母は84才のときに胃がんが発覚して1年ほど闘病して、2020年2月に他界しました。

 母は「入院するのは嫌だ、死ぬまで自分の家にいたい」と言うので、病院の先生に相談して在宅医療を選択したんです。母のための在宅医療のチームを組んでもらって、訪問医、看護師さん、介護士さん、薬剤師さんが定期的に自宅に来てくだり、最期まで家で過ごすことができました。母は元々社交的な性格だったのでお友達もたくさんいて、常に誰かが様子を見に来てくれていましたね。

母の最期は「眠るように逝った」

 おじが亡くなり、1人でおばの介護生活を続ける中で、いまの夫と出会って再婚しました。しばらく奈良で暮らしていたのですが、おばを連れて神戸で暮らし始めました。ある朝、母のヘルパーさんから朝方に電話が来て…。『いつものようにお家に伺い、お母様が寝ていらっしゃるかと思ったら、亡くなられていました』と連絡を受けて、慌てて徳島へ向かいました。

 訪問医から「苦しまずに眠るように逝かれたと思います」と言われたのは、救いでした。母が亡くなる直前の電話履歴を見たら、夜にヘルパーさんに電話をしているんです。ヘルパーさんは『充電器はどこにあったかしら?』といつもと変わらず話をしたとのことでした。携帯を握ったまま寝ている状態で亡くなっていたと。

 母はおしゃべりが好きで、自宅で療養中にもいろんなお友達と電話で話していたんです。だから携帯電話を手にしながら旅立ったのは、なんだか母らしいなと思いました。最期に立ち会えなかったのは悔しくもあるのですが、母を看てくださっていた訪問医からは、

「病院でも自宅でも最期を迎えるときに必ずしも家族が立ち会える人ばかりではありません。病院だって夜中にご家族が来られない状況で旅立だれることもあります。だから最後を看取れなかったことを後悔しないでくださいね」と言われていました。患者本人だけでなく家族のケアもしてくださっていたいいお医者様だったと思います。

――おじや実母が旅立ち、おばの介護は20年間続いているのですね。

 そうですね。実の親ではないので、少し距離感を持って接することができているのかもしれませんね。それに、おばの介護費は、おじが財産を残してくれましたから、そこから捻出できています。

 おば被爆者手帳を持っているので医療費はかからないんですよ。広島出身のおばは、原爆が投下された日、離れた場所の工場にいて、きのこ雲を見た言っていました。翌日に親族の安否を確認するために広島市に入ったので、入市被曝だったそうです。夜は火の玉のようなものが空に上がっていくのを見たと幼い頃に聞き、怖かったのを覚えています。

 おばとは長らく同居してきましたが、家族で面倒を見るのはなかなか大変になってきていましたから、神戸に引っ越すと同時に地域の特別擁護老人ホームに申し込みをしていました。4年待った後、特別擁護老人ホーム(特養)に入所しました。おばは来年100才になります。

 おばの介護を20年近く続けていますが、ケアマネジャーさんからは、「介護保険は本人のためじゃなくて、介護をするご家族のためにあるんですよ」と言われたことがあり、だから介護保険サービスもしっかりと活用してきました。

 母のときもそうですが、家族に寄り添ってくださる医療・介護スタッフに恵まれてきたと思います。おばの介護や親族の看病を経験したことで、介護、看護を通して人の命の重みや、当たり前の日々の尊さを学びました。もちろん、つらくて涙した日々、失った悲しみは消えませんが、それを抱えながらも、穏やかに日々を過ごすことが、私なりの”昇華”だと感じています。人間として色々な経験はさせてもらったのですが、だからこそ子どもたちには同じ思いはさせたくないと思っているんです。(次回につづく)

取材・文/廉屋友美乃

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