「朝食を抜く」「食事後すぐ寝る」悪習慣と言われる定説には医学的根拠がない? 空腹時間がメタボや動脈硬化の予防に効果的【医師解説】
「朝ごはんを食べないと健康を害する」健康な体作りのために信じられてきた食習慣の通説だが、医学的なエビデンスはないとナグモクリニック総院長の南雲吉則医師は語る。従来の常識を覆す、健康寿命がのびる食事法を解説してもらった。
教えてくれた人
南雲吉則さん/医師・ナグモクリニック総院長
朝食を抜くと「若返り遺伝子」が活性化。食べてすぐ寝れば認知症予防に
朝食はその日の活動を左右するもので、朝しっかり食べないと「頭が働かない」「生活リズムが乱れて体に悪い」と指摘されてきた。
しかし、ナグモクリニック総院長の南雲吉則医師はこう語る。
「朝食を抜くと健康を害するというエビデンスはありません。近年は逆に朝食を抜いて“空腹時間をなるべく長くする”ことのメリットを示す研究結果が次々と発表されています。例えば朝起きて胃もたれや胸焼けしているような時は、無理に食べると体調を崩してしまう可能性がある。むしろ朝食を抜いて胃腸の疲れを回復させてあげるほうがいいのです」
当たり前のように思われている「1日3食」の食習慣も、定着したのは戦後のことだという。
「給食制度も含めた戦後の学校教育の影響が大きい。当時は物資が乏しかったため、育ち盛りの子供が栄養失調になるという懸念から、1日3食が啓蒙されるようになったのでしょう。
戦前は、農村などでは1日2食が一般的。いまでも子供は1日3食のほうがいいと思いますが、この飽食の時代にあって大人が1日3食の習慣を続けていると、むしろ栄養過多で健康を損ねるリスクが高くなります」(南雲医師)
朝食を抜いて空腹時間を長くすることには、3つの大きなメリットがあると南雲医師が続ける。
「脂肪を燃焼させてメタボリックシンドロームを防ぎ、肌や筋肉の再生を促す『成長ホルモン』の分泌も促されます。全身の細胞の損傷を修復することから、若返り遺伝子として注目されている『サーチュイン遺伝子』も活性化することが分かっている。
さらに長寿ホルモンと称される『アディポネクチン』の分泌が増えることも報告されています。アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、血管の内側を修復し、血管を若返らせて動脈硬化を防ぐ働きがあることも判明しました」
睡眠のベストタイミングは夕食後30分以内
食べてすぐ寝ることも体に悪いとされてきた。「消化が悪くなる」「肥満につながる」「逆流性食道炎の原因になる」などと理由が語られてきたが、南雲医師によれば根拠がないという。
「私が調べた限り、食後すぐに寝ると病気のリスクが上がるという研究論文はひとつも見つかりませんでした。基本的に消化が悪いと人は痩せるのですが、肥満になるという矛盾する言説になっている。また食道と胃の間には噴門弁という逆流防止弁があるので、横になったからといって食べ物が逆流することはありえません」
逆に、夕食後30分以内に寝ることには大きなメリットがあることが分かってきたという。
「胃の中に食べ物が入ると、血糖値を下げるためにインスリンが大量に分泌され、脳が低血糖状態になって自然な眠気に襲われる。食後は最も深くて質の高い睡眠に入れるベストのタイミングなのです。熟睡すると脳内では免疫細胞の一種である『グリア細胞』が活動し、老廃物を排出して認知症のリスクを低下させるとも言われています」(南雲医師)
※週刊ポスト2025年10月3日号
●16時間の”空腹時間”で病気知らず!医師が明かす1日3食は食べ過ぎの真実