逆流性食道炎で食欲がない「消化がいいおかゆより、たんぱく質を摂るべき」理由を専門家が解説
胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで、食道の粘膜に炎症が起こる「逆流性食道炎」。日本人の約3人に1人がかかっているとされる現代病のひとつだが、食生活を見直すことで症状を軽減できるという。食道の粘膜を修復するのに必要なたんぱく質を「毎日50gは摂ってほしい」という管理栄養士のひびようこさんに、理想的な食習慣を聞いた。
教えてくれた人
ひびようこさん/管理栄養士。22年の管理栄養士歴で栄養相談実績は5000件以上。医療系スタッフ研修や一般向けセミナーも開催し、現在は「プレ更年期・更年期のための食習慣プログラム」を主宰。
逆流性食道炎に消化のいいおかゆやうどんは逆効果?
「逆流性食道炎の患者さんの場合、人によって合う食材が異なるので、この食材さえ食べていればいいとは、一概に言えません。しかし、たんぱく質は意識して摂ることが大切です」
とは管理栄養士のひびようこさん(「」内以下同)。
医師からの食事指導では、“なるべく消化のよいもの”とアドバイスされることが多いうえ、処方される薬は主に胃酸の分泌を抑えるもの。すると、どうしてもやわらかいおかゆやうどんなどに食事が偏りがちなので注意が必要だという。
「食欲もないので、パンやお菓子などで簡単に済ませる人も少なくないようです。いずれにせよ、炭水化物ばかりの食生活に。これを続けていると、栄養が偏って筋力や体力が衰えてしまいます。その結果、逆流性食道炎が悪化したり、治療が長引いたりしてしまうのです」
消化のよいものを食べないといけないのに、肉や卵を摂るには抵抗があるかもしれないが、たんぱく質は胃酸で壊れた食道の細胞組織を修復する働きもあるため、むしろ積極的に摂った方がいいのだ。
たんぱく質量が豊富な食材を選ぼう
「たんぱく質の摂取基準として国が推奨する量は、女性(18~75才以上)の場合1日50gです」
たんぱく質は一度にたくさん摂っても吸収されないため、1回の食事で20gを目安にし、約3回に分けてこまめに摂るのがいい。
「どの食材が不調の原因になるかは人によって違うので、比較的トラブルの少ない白身魚や鶏のささ身などから摂り、様子を見ながら食べる量を増やしていきましょう。魚や肉の脂身も控えめにしながら徐々に増やしましょう」
自分の体にはどんな食材が合っていて、何を食べると胸やけが激しくなるか、メモをしておくと、対策や献立が決めやすくなる。
食欲がないなら、たんぱく質量が豊富な食材を選んで摂るのもいい。その際は、下のリストを参考にしてほしい。
鮭は1切れで約22gのたんぱく質量なので、1食に入れておけば効率よくたんぱく質が摂れる。それでも不安な場合は、病院の管理栄養士に相談するのもひとつの方法だ。
1日50gを目安に食べよう!「食品に含まれるたんぱく質量一覧」
・鶏ささ身(1本・50g)…約12g
・鶏ひき肉(100g)…約17g
・豚ひき肉(100g)…約17g
・豚もも肉(100g)…約19g
・牛もも肉(100g)…約19g
・ロースハム(1枚)…約2g
・帆立貝柱(100g)…約18g
・たら(1切れ・100g)…約18g
・鮭(1切れ・100g)…約22g
・あじ(100g)…約20g
・まぐろ(100g)…約25g
・さば(100g)…約20g
・いか(100g)…約18g
・卵(1個)…約6g
・納豆(1パック)…約7g
・豆腐(100g)…約5g
・厚揚げ(100g)…約10g
・牛乳(コップ1杯200ml)…約6g
・ヨーグルト(100g)…約3g
・ご飯(100g)…約2.5g
※「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」参照
管理栄養士おすすめ!<たんぱく質を上手に摂る1日の献立>
<朝食編>
「食欲がなくても1日3回は食事をとること。食べられない場合は、少量ずつ5回くらいに分けてもOK」(ひびさん・以下同)。朝食のおすすめは、ご飯、みそ汁、納豆、卵焼きなど。
<昼食編>
「おかずは魚や肉にして、不調のときは揚げ物は避けて。大根やキャベツには、消化を助ける作用があるので、食べやすくおろしや千切りなどにして添えましょう」
<夕食編>
「野菜や肉、魚、豆腐など、野菜とたんぱく質を豊富に摂れる鍋がおすすめ。やわらかく煮れば、胃への負担も軽減されます」。食欲がないときは卵がゆも◎。
食欲不振のときに避けた方がいい食べ物
□ 甘い食べ物や飲み物
□ カフェインを多く含む飲み物
□ 酸味や辛味など刺激の強い食べ物や飲み物
取材・文/上村久留美 イラスト/こさかいずみ
※女性セブン2024年4月4日号
https://josei7.com/