卵は「食べすぎ注意」ではなかった? イタリア最新研究で判明。卵を週3個以上食べると高血圧、脂肪肝リスクが低下
栄養価が高い「卵」だが、食べ過ぎは悪玉と呼ばれるLDLコレステロールが増加して動脈硬化のリスクが高まると言われていたが、イタリアの最新研究で、むしろ高齢者が3個以上卵を食べると高血圧や脂肪肝のリスクが下がるこが明らかになったという。詳しい話を専門家に伺った。
教えてくれた人
渡辺尚彦さん/高血圧専門医・日本歯科大学客員教授
イタリアの研究で「週3個以上の卵」で血圧が下がったという報告が
コレステロールの含有量が多いことから「食べ過ぎ注意」と言われてきた卵。しかし、昨年1月に従来の通説を覆す研究結果がイタリアから届いた。
高血圧専門医で日本歯科大学客員教授の渡辺尚彦医師が解説する。
「高血圧と脂肪肝の両方またはいずれかを発症した人がどれくらいの卵を食べていたかを比較した研究です。60才以上の908人を抽出して解析した結果、卵を食べる頻度が『週2個以下の人』を1とした場合、『週3個以上食べていた人』の高血圧の発症リスクは0.21、脂肪肝の発症リスクは0.73、両方の発症リスクは0.34と非常に低かった。
つまり卵を週3個以上食べていた人は『血圧が下がった』もしくは『血圧の上昇を抑えることができた』ことを示したものだと読めます。調査の対象は60才以上に絞られていますが、一日の摂取カロリーに関係なく有意に確認できた点も注目に値します」
卵には1個当たり約200mgのコレステロールが含まれていることから、食べすぎると血中コレステロール濃度が上昇し、動脈硬化のリスクになるというのが長年の医学界の常識だった。
過去には米国心臓病学会が「卵の摂取は週3個まで」と個数の制限を推奨したこともあり、いまも摂取量を控えている人は少なくない。
しかし、近年の研究で「コレステロールが多い食べ物を摂取しても、血液中のコレステロール値はほとんど変わらないことが明らかになった」と渡辺医師。
卵黄には血圧を下げる作用、白身には血管の健康維持に効果的
さらに今回のイタリアの研究で明らかになった卵が血圧を下げる理由について渡辺医師はこう解説する。
「卵黄に含まれるレシチンは体内に吸収されると、血圧を下げる作用のあるアセチルコリンの成分になります。また、同じく卵黄に含まれるペプチドには、アンジオテンシンIIの作用や産生を抑制し、血管を拡張する働きがあるとされています」
アンジオテンシンIIは血圧上昇や心臓の肥大化に関わる物質で、降圧剤のARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)はその作用を阻害し、ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)はその生成を抑える薬。
つまり卵には、これらの降圧剤と同じメカニズムを持つ成分が含まれているのだ。
「卵の白身には良質なタンパク質が豊富に含まれているので、この点も血管の健康維持につながります」(渡辺医師)
※週刊ポスト2025年10月3日号
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