令和の米騒動は日本人の健康にプラス?白米や白いパンが招くリスク
バランスのとれた食事は健康な体の土台となる。しかし、古い常識は「病気のリスクを上げる」可能性も。最近では白米とパンは糖尿病、老化の原因になるという研究結果も出ている。健康寿命をのばす日々の食生活のポイントを医師に聞いた。
教えてくれた人
南雲吉則さん/医師・ナグモクリニック総院長
白米は“でんぷんの塊”。血糖値が上がりやすく糖尿病リスク増
日本人の主食といえば、白米。昨年夏からの価格高騰で「令和の米騒動」が巻き起こり、政府は米の増産などの施策を打ち出しているが、
「むしろ米が不足しているほうが日本人の健康にはプラスになったかもしれない」
と話すのは、ナグモクリニック総院長の南雲吉則医師だ。
「多くの人にとって米とは、精米された白米のこと。もともとのお米である玄米はビタミン、ミネラル、ポリフェノール、食物繊維などが豊富な『スーパーフード』ですが、白米は精米の段階で多くの栄養素が失われている。白米と玄米を比較すると、食物繊維は6分の1、ビタミンB類は4分の1から5分の1、ビタミンEに至っては14分の1に減ってしまうのです」
南雲医師は、多くの栄養素が失われた白米を主食とする食生活は、さまざまな病気のリスクを高めることにつながると指摘する。
「精米した白米は、いわば“でんぷんの塊”なので、食べるとすぐに血糖値を急上昇させます。するとすい臓からインスリンが分泌され、糖質を脂肪に変換するので太りやすくなる」
肥満は生活習慣病の原因になり、とくに高血糖状態が続くとすい臓のインスリン分泌能力が低下したり、インスリンの働きが悪くなったりして糖尿病を引き起こしやすくなるという。
さらに白米の食べすぎは老化の原因にもなると南雲医師。
「糖質の過剰摂取を続けていると、体内で糖がタンパク質と結合し、AGEs(終末糖化産物)という“老化物質”とも呼ばれる有害物質が生まれます。肉を焼いて焦がしても、キッチンペーパーで拭けばすぐに取れますが、米やジャガイモを焦がすとなかなか焦げが取れません。この頑固な焦げがAGEsです。血管の内側がこれに覆われると動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞、認知症のリスクが高まることが分かっています」
白いパンや麺類は肥満のリスクあり。ライ麦パン、十割そばで健康改善
南雲医師はがん専門医の立場から、白米とがんの関係についても言及する。
「がんドックで行なうPET‐CTの検査では、最初に糖質の点滴をして、1時間半後に画像診断をします。そこで真っ赤に染まるのが、がん細胞です。一般の細胞はタンパク質や脂肪を燃焼しているのでほとんど染まりませんが、がんは糖質しか利用することができないので真っ赤になる。
さらにがん患者の栄養バランスを『血液栄養解析』で調べたところ、大半が『低タンパク・高血糖』状態でした」
日本人の健康改善のためには、白米漬けの生活から「玄米中心の食事に変える必要がある」と南雲医師。同様の弊害は、白米だけでなく、パンや麺類によってももたらされるという。
「精製された小麦粉を使ったパンは、白米と同様、ビタミン、ミネラル、食物繊維といった栄養素の多くが失われており、肥満や糖尿病のリスクを高めます。玄米と同じように、パンなら全粒粉を使ったものや、ライ麦を主な原料にした黒いパンを選ぶほうがいい。麺類も真っ白な小麦粉を使ったうどんやパスタではなく、そば粉100%の『十割そば』がおすすめです」(南雲医師)
玄米は硬いイメージが強く敬遠している人も多いが、炊き方を少し工夫すれば食べやすくなる。
「玄米を炊く時は水に半日くらい浸すといい。日本人は昔からこの方法で玄米を美味しく食べてきました。また長時間水に浸けることで発芽玄米になり、リラックス効果のあるアミノ酸『ギャバ』が増加することも分かっています」(同前)
炊きたての白米を『銀シャリ』と呼んでありがたがったのは、もう過去のこと。米もパンも麺類も、「白い」ものには要注意だ。
※週刊ポスト2025年10月3日号
●糖化・酸化を防ぐ!老けない食事の選び方「白米VSパン」「そうめんVSそば」【専門家監修】