高齢者こそ《ごま油》を活用しておいしく減塩、低栄養の予防に!戻り鰹のごま油漬け・アレンジレシピ付き【料理研究家&管理栄養士・沼津りえさん】
「ごま油」は、ごまの種子から得られる健康的な植物油。「高齢者こそ、良質な油として、普段の料理にごま油を積極的に取り入れてほしい」と、料理研究家で管理栄養士の沼津りえさんは話す。ごま油の活用方法や夏の終わりにおすすめの手軽なレシピも合わせて教えてもらった。
教えてくれた人
ごま油は減塩作用や食材の臭み取りにも
沼津さんの父は82才、母は79才。朝ごはんには塩分しっかりの漬け物がズラッと並ぶ毎日だったが、ごま油で漬けた野菜に変えてからおいしく減塩できているという。最近はますますごま油レシピにハマっているそうだ。
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「母は最近、ゆでたレバーをごま油で和えて、食べるようになりました。自分で作った料理の写真を私に送ってくれて、料理するのも楽しい様子なんですよ。
レバーは鉄分をはじめ、ビタミンや葉酸なども豊富で、高齢者には積極的に摂ってもらいたい食材です。しかしながら、臭みを消そうと甘じょっぱい濃い味付けで調理しがちですよね。ごま油を使えば、味付けしながら減塩できます」(以下「」内、沼津さん)
茶色く色づいたごま油は、ごまを焙煎してから作るため、特有の香りやコクが特徴だ。この風味を生かして、料理の味付けとして調味料のように使うことで、香りや旨味がプラスされ、塩分を減らしてもおいしく食べることができるという。
これからの季節、レバーが食べにくい人には、同様に鉄分たっぷりの鰹がおすすめとのこと。特にレバーや鰹など、臭みの気になる食材にごま油はもってこいだ。
「実は、私は鰹の臭みが気になり、生で食べるのが苦手でした。でもごま油で漬けると、鰹特有の臭みが和らぎ、ニオイを気にせず食べられるようになったんです。鰹だけでなく、まぐろなど他の魚でもおいしく作れるので、ぜひ試してみてください」
高齢者ほど良質な油を積極的に摂ろう!
高齢になると食が細くなり、食べる量が減って十分なカロリーを摂れなくなってくる場合もあるという。管理栄養士の視点から、食事からカロリーをしっかり摂り、効率よくエネルギーに変えるためにも、ごま油は有効だと沼津さんは話す。
「ごま油の主成分は“リノール酸”と“オレイン酸”。この2つがバランスよく含まれた植物性の油です。リノール酸は食べ物からしか摂取できない必須脂肪酸。オレイン酸は不飽和脂肪酸の一種で、コレステロールを抑える働きがあると言われています」
さらに、ごま油に含まれる成分“ゴマリグナン”は、強い抗酸化性を持っているため、老化防止やエイジングケアに役立つと考えられている。近年の研究では、動脈硬化など生活習慣病の予防や改善効果も期待されているそうだ。
「特に高齢者は食事にオイルを使うことで、食材のパサつきが緩和され、飲み込みやすくなります。また、年齢を重ねると料理が面倒になり、惣菜や冷凍食品などで済ませてしまうかたも多いと思いますので、ぜひごま油を使って、食べやすい食事を作ってみて欲しいと思います」
沼津さんの近著『ごま油さえあれば さっぱりもコク旨も、いつもの家ごはん98』(小学館)のレシピは、「少ない調味料でパパッと作りやすく、続けやすい」と好評だ。
「私の父は、特にごま油で漬ける“たたきごぼう”がお気に入りで、続けるうちに、お腹もスッキリしてきたとの嬉しい報告もありました」
体によく、いいこと尽くしのごま油。とはいえ油なので、摂り過ぎには注意しながら、普段の料理にぜひ気軽に使ってみよう。
鉄分たっぷり!「戻り鰹のごま油漬け」
秋に旬を迎える脂がのった濃厚な戻り鰹を使ったごま油漬けを紹介。生の鰹をごま油で香ばしく焼きあげてから、さらにごま油を利かせた甘酢だれにじんわり漬け込む。お好みで薬味をどっさりのせたら、夏の疲れを回復する栄養満点な一皿のできあがり!
【材料】(作りやすい分量)
戻り鰹(刺身用)…1柵(250〜300g)
ごま油…小さじ1/2
白いりごま…適量
大葉…適量
白髪ねぎ…適量
[漬けだれ]
しょうが(千切り)…2片分
ごま油…大さじ1
しょうゆ…大さじ1
酢…大さじ1
きび砂糖…小さじ1
【作り方】
【1】鰹はペーパーに包んで、余分な水気や脂をしっかりと拭く。フライパンにごま油を熱し、鰹の表面全体に焼き色がつくまで強火で1〜2分焼く。粗熱が取れたら1cm幅に切る。
【2】保存容器に[漬けだれ]の材料を入れて混ぜ合わせ、【1】を入れて全体をなじませる。
【3】冷蔵庫で30分以上置く。食べる時に、白いりごま、大葉、白髪ねぎをトッピングする。
「ごま油で漬けるので、鰹の塩締めは不要です。鰹の水気をしっかり拭き取ってから、香ばしく焼きあげることで、魚特有の臭みを抑え、旨味をギュッと閉じ込めることができます。初鰹はもちろん、まぐろやサーモン、鯛など、他の魚でもおいしく作れますよ」
「鰹のとろろ丼」にアレンジして栄養価もUP
ごま油でじっくり漬けた鰹に、たっぷりのとろろをのせれば、食欲が落ちた時でも食べやすいお手軽どんぶりに。疲労回復、滋養強壮に効果的なネバネバとろろと、うずらの卵黄を絡めれば、夏バテ気味の時でもツルツルッと味わうことができる。
【材料】(2人分)
戻り鰹のごま油漬け…1/2量
長芋…100g
うずらの卵黄…2個分
ごはん…2膳分
【作り方】
【1】長芋は皮をむき、すりおろす。
【2】器にごはん1膳分を盛り、戻り鰹のごま油漬けと【1】の半量、うずらの卵黄1個をのせ、漬け汁適量(分量外)を回しかける。同様にもう1人分作る。
ごま油に加え、酢と砂糖も入っているため、甘酢風味で疲れた時でもさっぱり食べられるうれしい一品だ。
今夏は過去最高の暑さを記録し、酷暑続きで例年以上に夏の疲れが溜まっている人も多いはず。疲労回復のためにもぜひ味わってみてほしい。
沼津さんの近著には、四季折々の旬の食材を使った、手軽に作れるごま油レシピが季節ごとに掲載されている。シニア世代も続けやすく、とっておきの一品に出合えるはずだ。
取材・文/岸綾香(写真は書籍より抜粋)