認知症高齢者と学童保育の共存、幼老複合施設がもたらす効果とは
近年、「幼老複合施設」が注目されている。幼老複合施設とは、保育所(学童保育を含む)や託児所と高齢者介護施設を組み合わせた施設のことだ。幼老複合施設は、2000年の厚労省の調査では、全国に500施設を超えて存在し、現在も増加傾向にあるという。通常の介護施設とは何が違うのか? 全国でも有数の大型幼老複合施設を運営する社会福祉法人「ユーカリ優都会」(千葉県佐倉市)の「ユーカリ優都ぴあ」を取材した。
官民共同で作った「福祉の街」
ユーカリ優都会は、京成本線ユーカリが丘駅から車・バスに乗り継いで約15分の、緑に囲まれた丘の上に、大型福祉施設を有している。介護老人保健施設「ユーカリ優都苑」、介護付有料老人ホーム「ミライアコート宮の社」、グループホームと学童保育所が合わさった「ユーカリ優都ぴあ」の3つの施設から成り立っている。
敷地内には、グラウンドゴルフ場、ヤギなどの動物と触れ合える「ふれあい広場」、子供たちが走り回ることができる「わんぱくグラウンド」、春・秋には花が咲き乱れるフラワーガーデン、ハーブの香りが楽しめるフィーリングガーデン、野菜の栽培体験できるキッチンガーデンといった施設があり、利用者が四季折々の自然に親しむことができる工夫が凝らされている。
「当社会福祉法人の特色は、千葉県佐倉市が提唱する『福祉の街づくり』の一環となって行われている事業であることです。ユーカリが丘地域全体が『福祉の街』となるよう計画されており、この施設はその代表例として全国の地方自治体から、多くの見学者が来訪しています」
そう説明するのは、ユーカリ優都会事務局長の木下今朝人さん。
ユーカリが丘地域は1971年に、不動産会社の「山万」が開発を始めたニュータウンで、長期的な街づくりを前提とした「成長管理型」の開発が行われてきた。同地域のキャッチコピーは「家族の未来が見える街」。今から50年近くも前から、少子高齢化社会対策を街づくりの基本理念においてきた。「エリアマネージメントグループ」という専門チームが設置されており、独居高齢者対策を中心に、ユーカリが丘地域内の約7000世帯を直接訪問しているという。
かつて「ニュータウン」と呼ばれたエリアでは人口が全国的に減少傾向にあるが、ユーカリが丘地域は年々着実に増加している。
「核家族化が進み、独居高齢者が増加しています。独り暮らしの人が認知症になれば、社会から疎外されるだけでなく、財産や生命に危険が及ぶこともあり得ます。それを防ぐには、『多世代交流施設』を作ればよいのではないか? というのが、ユーカリ優都ぴあの原点です」(木下さん)