石橋貴明さんが公表した《食道がん》鈴木宗男さんは2度罹患「収監前の人間ドックで判明」なる人・ならない人の違いを専門医が解説
過去、2度にわたって食道がんを罹患した参院議員の鈴木宗男さん(77)もこう振り返る。
「最初の発覚は10年。収賄などの罪に問われていた私は、最高裁の上告棄却で収監される前に人間ドックを受けたんです。そうしたら食道がんが見つかり、手術を受けてから収監に応じた。もし検査せずに収監されていたら、今頃は帰らぬ人になっていたでしょうね。たしかに私は酒好きですが、何が恐ろしいって、自覚できる初期症状が何もなかったことです。私は2003年に胃がんを患って胃を切除していたので、食道に負担がかかっていたのではないか、と医師から説明されました」
鈴木さんは2019年に再び食道がんに罹患。このときも定期検査で見つかった。
「入院してすぐに安倍晋三さんから激励の電話を貰いましてね。幸い2度とも早期発見だったので内視鏡手術で済みましたが、困ったのが術後です。アルコールと炭酸は食道に悪影響だから厳禁だと医師に釘を刺され、大好きなビールが飲めなくなった。そこで考えたのが、新聞紙の上にコップを置いて1mほど上空から缶ビールを少しずつ注ぐこと。炭酸が飛んで口当たりも良くなるんですよ」(鈴木さん)
食事面では消化に良いものをゆっくり食べることを心がけているが、制限も多いと嘆息する。
「医師から“生のイカとタコは特に消化に悪いから”と食べないよう厳命されました。煮たり焼いたりすれば問題ないそうですけどね。私は野菜もなるべく生を避け、茹でたブロッコリーやアスパラガスなんかをよく食べています」(鈴木さん)
AIを活用した内視鏡で食道がんの早期発見も
鈴木さんと同じように、石橋さんもステージ初期の食道がんであることを明かした。食道がんで助かるためには、「早期発見がすべての鍵」だと豊島さんは強調する。
「内視鏡手術で取りきれる段階で見つけることが第一。外科手術も近年は『ダヴィンチ』などのロボット手術で小さな穴だけで手術が可能になってきたが、できれば内視鏡で治療を受けたい。リスクのある人は1年に1度は検査を受け、早期発見に努めてほしい」
検査はバリウムではなく、胃カメラを優先するのが肝要だ。
「バリウムで早期の食道がんを見つけるのは難しく、進行がんでも見逃す可能性がある。その点、胃カメラなら進行がんが見逃されるケースはまずありません」(豊島さん)
ただし「胃がん検診で胃カメラを飲めば食道がんも見つかるだろう」と考えるのは早計。特に市区町村が実施している胃がん検診は万能ではないと豊島さんは言う。
「そもそも胃がん死を減らすために自治体が費用を出しているので、胃がんの発見が大前提。食道をじっくり見ず、胃までスーっとカメラを入れてしまうケースがある」
食道がんの早期発見には、新たな武器も活躍し始めている。過去の膨大な画像データを読み込んだAIが、病変と思しき場所を見つける「AI内視鏡」(AI内視鏡診断支援システム)だ。
「AIを活用することで見落としを防ぐことが期待できます。内視鏡検査には技術と経験が必要ですが、AIが経験の浅い医師のサポート役をしてくれるのです」(豊島さん)
本誌50代記者HさんもAI内視鏡で命拾いしたひとり。2018年の年末、体験取材のためにAI内視鏡の検査を受けたところ、ステージ0で食道がんが見つかったのだ。
「大病の経験もなく、毎年の健康診断でも問題がなかったので、特に異常はないだろうと思っていました」(H記者)
ところが内視鏡検査でAIが病変を異常箇所としてマーキング。組織検査の結果、食道がんであることが判明したのだ。
「大きさ1cmほどのごく初期のがんで、入院翌日に内視鏡手術を受けて10日ほどで退院できました。取材のためにAI内視鏡の検査を受けていなかったら、と思うと恐ろしくなります」(H記者)
長く食道がん患者に接してきた経験から、豊島さんはこう語る。
「長年嗜んできたお酒やタバコをやめろ、と言っても難しいと思います。無理してやめなくてもいいので、せめて早く見つけましょう、と伝えたいです」
幸運にも早期発見となった石橋は、復帰を目指して闘病のさなかにいる。
がんを克服して表舞台に戻り、説明責任を果たしてもらいたい。
※週刊ポスト2025年5月2日号
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