《肩こりは“うつ病”が原因かも?》肩専門の整形外科医が解説する“じゃないほうの肩こり”のメカニズム 実際にあったケースや治療法を紹介
F子さんもそうでしたが、「肩こりで病院は大げさ」と考える人は少なくないようです。そのため「じゃないほうの肩こり」は見つかりにくいわけですね。
さらに、「うつ病」も精神症状ではなく、身体症状だけを訴えて病院にかかる人が多いことなどから、見つかりにくい病気のようです。
うつ病の受診の目安として、精神科医以外の医師がうつ病を疑ったとき、専門医に紹介するかを判断する方法の1つをご紹介します。
「じゃないほうの肩こり」も、一般的な肩こりも、肩こり自体の症状は同様なので、うつ病のスクリーニング検査を利用します。
何らかの病気の治療中(服薬中)ではない人が、食欲の変化・体重の急な増減・睡眠障害・めまい・動悸・頭痛・腹痛・背部痛(首こり、肩こり、腰痛)・呼吸困難感・下痢・便秘・しびれ・月経不順といった身体症状が2週間以上続いているなら、次の2つの質問に答えてもらう、という方法です。
・この1か月、気分が沈んだり、憂うつになったりすることが「よくあった」か
・この1か月、物事に対して興味がわかない、あるいは心から楽しめない感じが「よくあった」か
「よくあった」というのは、ほとんど1日中、ほぼ毎日あるということです。
2つの質問のどちらかでもYESならば「うつ病」の可能性があると考えて、精神科や心療内科の診察につなぎます。みなさんも、うつ病の可能性のジャッジとして利用し、どちらかでもYESならば医療にアクセスしましょう。
なお、日本で患者数の多い精神疾患は「気分障害」でうつ病も含まれます。さらに、次に多い「神経症性障害(ストレス関連障害など)」の要素もうつ病にはあるので、本当に身近な病態だと感じています。
厚生労働省が2020年にまとめた「患者調査」では「気分障害」と「神経症性障害(ストレス関連障害など)」はともに2017年頃から右肩上がりで患者数が増えていることがわかっています。
患者数の推移を見ると、こうした病気は、現代では誰にとっても「身近な病気」であると考えられ、脳と精神疲労をコントロールすることの大切さを思います。