“歌うこと”がもたらす健康効果とは?シニア世代のおすすめ!心も体も元気する「カラオケ」7つの極意【専門家監修】
前出の西尾さんは、「基本的には、自分が好きな曲で問題ありません」と言うが、より効果が望める曲はあるのか。
「より高い健康効果を期待するなら、幸せな思い出のある曲や、懐かしい気持ちになる曲がおすすめです。デイサービスでは、利用者のかたが若い頃によく聴いていた、石原裕次郎さんや美空ひばりさんの歌が人気で、盛り上がります。若い頃に流行った歌は、自分のいいときの思い出と重なることが多いんです。認知症のかたの場合は、昔の曲の歌詞を覚えているだけで自信につながり、自己肯定感が上がる効果も期待できます」(西尾さん)
また「演歌にはさまざまな健康効果がある」と、周東さんは言う。
「歌の世界にどっぷりと浸(ひた)れると感情が揺さぶられるため、カラオケの健康効果がより発揮されます。その点で、演歌はドラマ性に優れており、ストレートな感情表現が多く、世代を超えて日本人の心になじみやすいことから、高い健康効果があります。なかでも演歌特有のこぶしは、耳周辺の血流をよくし、耳鳴り改善にもつながると考えられています。サビの部分で情感を込めることも大切です。声量を上げる『うなり節』は、呼吸機能を強化し、肺気腫の予防効果もあるとされます」(周東さん・以下同)
ただし、楽しいからといって何時間も歌い続けるのはNG。のどに負担をかけすぎることになる。
「腹筋や横隔膜の鍛錬には、1日5〜10分程度歌うのがいいですね。毎日コツコツ続ける方が効果も出やすく、のどへの負担も減らせます。1曲歌い終わったら水分補給を行いましょう」
5:身振り手振りで全身運動を
曲に合わせて身振り手振りをつけるなど、体を動かしながら歌うと運動効果が得られ、ダイエットにもつながる。
「お腹から声を出すイメージで、腹式呼吸や腹式発声で歌いながら、体を動かすことで有酸素運動の効果も得られます。さらに身振り手振りを入れて体を動かせば骨や筋肉が刺激され、脂肪の減少、脳の活性化にもつながります。歌詞をイメージするような動きをしてみましょう。たとえば歌詞に“2人”という言葉があれば、そこでピースサインをしてみるとより気分が高まり、脳の活性化にもつながります」
また、歌い始めや終わりにおじぎをすると自律神経にもいい作用をもたらすという。
「人前で歌うならプロの歌手のようなスター気分を味わえますし、おじきをすることで気持ちも高ぶり、『これから歌うぞ』という緊張感をもたらすため、自律神経のバランスも整います」
運動効果が得られる「歌い方のポイント」
<1>こぶしをきかせる
<2>歌に合わせて身振り手振りをつける
<3>口を大きく開ける
<4>マイクは床と平行になるように持つ
<5>背筋をまっすぐに伸ばす
<6>立って歌う
<7>足でリズムをとる
6:歌詞を丸暗記し、記憶力を磨く
いつも好きな曲や十八番を歌うのもいいが、たまに新曲や違うジャンルの歌にチャレンジすると、マンネリ化を防げる。
「新しい曲にチャレンジすると、歌の内容を理解し、歌詞を覚えることになるので脳が活性化され、記憶力の向上にもつながります。歌の専門家によると、歌詞を丸暗記して歌う方が感情移入もスムーズで、歌の上達も早くなります」
歌詞は何度も読んで、歌に描かれた世界観をしっかりと理解すること。
「その歌詞が持つ切なさ、悲しさ、やるせなさ、愛しさ、喜びなどをしっかりと読み取ることが重要です。こうして歌詞を噛みしめるようにして覚えていくといいですね。想像力も鍛えられますよ」
健康にいいおすすめ曲は?
<1>夜明けのスキャット/由紀さおりさん
「ルルル〜」とハミングから始まる歌い方が腹筋に響き、内臓まわりを鍛えられる。
<2>つぐない/テレサ・テンさん
息継ぎが多く、ささやくような歌い方をするため腹式呼吸になり、血流も上がる。
<3>好きになった人/都はるみさん
声量がかなり必要な曲なので、最後まで歌い切ることで肺活量が鍛えられる。
<4>赤いスイートピー/松田聖子さん
情景描写に優れているため感情移入しやすく、脳の活性化に効果的。
<5>卒業写真/荒井由実さん
誰もが経験する卒業と初恋の切なさを歌うことで、心が落ち着き穏やかに。
<6>高校三年生/舟木一夫さん
異性の曲を歌うことは表現の幅を広げ、脳が刺激されるため認知症予防になる。
<7>夕焼け小焼け/童謡
メロディーが優しく、声量のない高齢者でも歌える。練習曲として向いている。
【其ノ七】人の歌を聴くときは、“タンバリン”で脳を刺激
自分が歌うだけでなく、人の歌を聴くだけでも健康効果は得られる。
「曲に合わせて体を動かすと運動にもなります。タンバリンやマラカスなどを振って一緒に楽しむと脳も活性化される上、一体感も生まれてコミュニケーション強化にもつながります」(西尾さん)
取材・文/廉屋友美乃 イラスト/岩井勝之 写真提供/デイサービスM’s studio
※女性セブン2025年3月20日号
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