《運は引き寄せられるのか?》90歳の現役美容研究家・小林照子さんが、自ら道を切り開いていくきっかけは30歳のときの自動車事故
<迷ったときには、「自分の芯」に聞いてごらんなさい。信じるものはいつも自分の中にあるのです>
人はいつも迷いの中で生きていると思います。人生の途中で突然にして、大きな決断を迫られることもあります。私自身、いままでいくつもの決断を下して生きてきました。
でも、けっして何の迷いもなく突き進んでこられたわけではありません。いつも自分の判断は正しいのか、その新しい一歩は間違っていないのか、ひとりで悩み、苦しんできました。しかし、いつまでも迷うことが許されるわけではありません。
決断の時がきた。そのとき、私はいつも自分の丹田(おへその少し下あたり)の上のほうで、強くかたいものがシュッと立つのを感じます。私はそれを「自分の芯」と呼んでいます。自分の芯は、言うなればもうひとりの自分です。自分の生き方をじっと見ているもうひとりの自分なのです。
30代前半のとき、私は仕事で人生の岐路に立たされていました。その時代の主流ではない新しいメイクスタイルを提案したのですが、当然社内では猛反発。私は社内の人間を説得して歩きました。結果、その仕事は成功をおさめたのですが、同業他社の方からは「品がない」と評され、私は落ち込みました。しかし、時間というものは待ってくれません。次のアイデアを考え、また実現に向けて動いていかなければなりません。しかし、私に対する逆風があるのも、たしかな話。
このまま自分のやりたいことを推し進めていいのだろうか。
失敗したときに、自分はどうなるのだろうか。
まわりがあと押ししてくれる範囲内で行動したほうがいいのではないだろうか。
そんなこともうっすらと考えました。でも、最終的には、私は人からどういう評価を得るかということよりも、自分が納得して生きることを選びました。そうでなければ、自分の芯に恥ずかしいと思ったからです。
「信じるのは、自分」
そう振りきった瞬間から、私は心がとてもラクになりました。
ふだんの暮らしの中でも、私たちは、心が揺らぐことがたくさんあります。同じ年代の人であっても、みんながみんな、同じ価値観で生きているわけではありません。自分の考えや行動を賞賛してくれる人ばかりではないのです。100人いれば、100の意見があります。意図しない場面で批判されることもあるかもしれません。でも、けっして、そのことに驚いたり、傷ついたりしないことです。
そんなときこそ、まず自分の芯に聞いてみてください。人に相談したり、人に愚痴をこぼしたりする前に、自分の芯にもう一度問いかけてみるのです。「自分はどう思うのか」と。
あるとき私は人にこう尋ねられたことがあります。
「何か信じている宗教があるのですか?」
何もありません、とお答えしましたが、私はどうやらとても強い力を持った神を信じているように見えたようです。
信じているのは、自分の芯だけ。
持っているのは、信念だけ。
我ながら、とてもシンプルだと思っています。