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暮らし

離れて暮らす80代の父親が「弁当は口に合わない」と拒否…。実例に学ぶ5つの食事支援方法とサービスの組み合わせ方を専門家が解説

 高齢の親がひとり暮らしをしていると「きちんと食事をとれているのだろうか」と心配になる家族は少なくありません。配食サービスや冷凍弁当、訪問介護による調理支援など、ひとり暮らしの高齢者の食事を支えるサービスの種類や賢く活用するためのポイントを、介護職員・ケアマネジャーの経験をもつ中谷ミホさんに解説していただいた。

この記事を執筆した専門家

中谷ミホさん

福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703

親の食事支援を家族だけで抱え込んでいませんか

 離れて暮らす親の食生活が心配で、週末のたびに実家へ通い、作り置きや買い物をしているというご家族は多いのではないでしょうか。しかし、仕事の繁忙期や体調不良などが重なると、そうした「通い介護」を続けることが難しくなるケースもあります。

80才の父親がひとり暮らしをしている佐藤さんのケース

 実家から車で30分ほどの場所に暮らす佐藤啓子さん(仮名・54才・会社員)。ひとり暮らしをしている父親(82才・要支援1)の食事が心配で、2~3日に1回は実家に立ち寄り、食事を届けたり冷蔵庫の中身を確認したりしていました。

 しかし、佐藤さん自身が体調を崩したことをきっかけに、頻繁に通うことが困難に。急いで配食サービスと冷凍弁当を手配しましたが、父は配食弁当を「口に合わない」と残すようになり、冷凍弁当は「電子レンジの操作がよくわからない」と、手つかずのまま冷凍庫に残されていました。

 佐藤さんは「せっかく手配しても食べてもらえない。父の食事をどうサポートしたらいいのか…」と頭を抱えています。

ひとり暮らしの高齢者に起こりやすい食事の問題

 年齢を重ねると、食事に関するさまざまな問題が起こりやすくなります。特にひとり暮らしの高齢者の場合、次のような変化に注意が必要です。

調理が負担になり、簡単なものばかりになる

 以前は料理が得意だったひとでも、体力や気力の低下から、調理がおっくうになることがあります。同じメニューが続いたり、手軽なもので済ませる日が増えたりすると、栄養が偏り、体力の低下につながるおそれがあります。

食欲が減り、食事量が少なくなる

 ひとりで食べる食事は味気なく、食欲がわかないというかたもいます。「作るのが面倒」「食べなくてもいいか」と、1日1~2食になってしまうケースも珍しくありません。また、噛む力や飲み込む力の衰えから食事量が徐々に減り、十分な栄養がとれなくなってしまうこともあります。

電子レンジなどの家電操作が難しくなる

 認知機能の低下により、電子レンジや炊飯器などの使い方がわからなくなることがあります。冷凍弁当やレトルト食品を用意しても、温められずに放置されてしまうケースも見られます。

ガスコンロの火の不始末など安全面の不安

 鍋を火にかけたまま忘れてしまうなど、火の取り扱いに不安が出てくることもあります。家族が心配してガスコンロの使用を控えるよう伝えた結果、ますます調理をしなくなるという悪循環も起こりがちです。

 こうした問題が重なると、家族だけでひとり暮らしの親をサポートすることが難しくなります。「何とかしたいけれど、頻繁に通うのは難しい」と悩む家族も少なくありません。

 そんなときに知っておきたいのが、地域の生活支援サービスや介護保険サービスを活用した食事支援の方法です。それぞれメリット・デメリットを含め、解説します。

【1】安否確認にもなる配食サービスや冷凍弁当の活用

 高齢者の食事支援としてよく利用されているのが、配食サービスや冷凍弁当です。栄養バランスが整った弁当を自宅まで届けてもらえるため、調理の手間がかかりません。決まった時間に届くので、生活リズムも整えやすくなります。

安否確認につながる場合も

 配食サービスの中には、弁当の受け渡し時に利用者の様子を確認し、異変があれば家族やケアマネジャーに連絡する「安否確認」を兼ねたサービスもあります。離れて暮らす家族にとっては「誰かが様子を見てくれている」という安心感にもつながります。

利用しにくいケースもある

 佐藤さんのケースのように「味が口に合わない」「量が多すぎる(少なすぎる)」といった理由で、食べてもらえない場合もあります。また、冷凍弁当は電子レンジの操作が難しい高齢者には向かないこともあります。

 こうした場合には、ほかの食事支援サービスや栄養補助食品との組み合わせを考えましょう。

【2】訪問介護による調理支援で「自宅で調理してもらう」

 介護保険サービスのひとつである「訪問介護」の調理支援を利用し、ヘルパーに自宅で調理や後片付けをしてもらう方法があります。

好みに合わせた料理を作ってくれる

 訪問介護の調理支援では、利用者本人の好みや体調に合わせた食事を用意してもらえます。「薄味が好き」「やわらかいものしか食べられない」といった要望にも対応しやすく、配食サービスの味が合わなかった人にも向いています。

 必要に応じて「買い物代」も頼むこともできます。ただし、訪問介護は介護保険制度に基づくサービスであるため、利用できる時間や回数には上限がある点には注意が必要です。

 また、介護保険外(自費)のサービスを利用して食事作りを依頼する方法もあります。介護保険サービスでは時間が足りない場合などには、保険内・外サービスを両方請け負っている事業者の場合、組み合わせて活用することもできます。サービス利用については、ケアマネジャーに相談してみるといいでしょう。

【3】デイサービスで食事を摂る

 デイサービス(通所介護)を利用すれば、施設で栄養バランスの整った昼食を摂ることができます。

栄養バランスのよい食事がとれる

 管理栄養士が監修した献立が提供されるため、刻み食やソフト食など、噛む力・飲み込む力に合わせた食事形態にも柔軟に対応してもらえます。

人と食べることで食欲がわくことも

「食事のためだけにデイサービスに通うのは大げさでは?」と感じる人もいるかもしれません。しかし、ほかの利用者と一緒に食卓を囲むことで食欲が刺激され、自宅では食が進まない人でも「みんなと一緒だと美味しく食べられる」というケースは少なくありません。

 さらに、外出によって生活リズムが整い、施設での入浴や機能訓練は心身の健康維持にも役立ちます。ただし、デイサービスも介護保険サービスであるため、利用できる日数には限りがあります。

【4】地域の有償ボランティアなどを頼る方法も

 地域によっては、買い物代行や簡単な調理の手伝いなどを行ってくれる有償ボランティアや生活支援サービスを利用できる場合があります。お住まいの地域の「地域包括支援センター」に相談すると、地域の配食サービスや生活支援団体などを紹介してもらえます。

【5】食事の量が減ってきたら「栄養補助食品」を活用

 さまざまなサービスを利用しても、加齢や体調の変化によってどうしても食事の量が少なくなってしまうこともあります。そのような場合は、以下の方法も知っておくと安心です。

 ゼリー飲料や高カロリー飲料などの栄養補助食品は、火や電子レンジを使わずに手軽に摂取することができます。食欲がないときでも取り入れやすく、少量でも効率よく栄養補給できます。介護の現場でも、食事量が減った高齢者の栄養補給として活用しています。常温で保存でき、賞味期限も長いものが多いのでストックしておくとよいでしょう。

食事についてのまとめ

 冒頭でご紹介した佐藤さんは、ケアマネジャーに相談して配食サービスに加え、訪問介護とデイサービスを組み合わせました。「父がきちんと食べてくれるようになり、安心できました」と話します。

 親の食生活が心配なときは、家族だけで抱え込まず、まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみてください。親の状況や好みに合ったサービスを組み合わせて、安心できる環境を整えましょう。

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