「こんなはずじゃなかった」を防ぐには 失敗しない高齢者施設の選び方・見分け方を現役介護福祉士が指南

　報道や広告だけではわからない、高齢者施設の内部事情に切り込みます！間違った思い込みを払拭してください。

【座談会に参加した介護のプロ】

■外岡潤さん／弁護士・ホームヘルパー

介護、福祉にまつわるトラブル解決に特化した法律事務所「おかげさま」代表。日本初の介護・福祉専門弁護士としてメディアでも活動中。著書に『親の介護で困った時の介護トラブル解決法』（本の泉社）など。

■砂川彰子さん／介護福祉士・絵画教室主宰

漫画家、美術教師を経て介護福祉士に。シニアの絵画教室「Mare!」主宰。特別養護老人ホーム等勤務後、よみうりカルチャー脳トレぬり絵講師に。ぬり方指導に『脳がいきいき若返る ぬりやすさいちばん！きいちのぬりえ』（小学館）。

■たっつんさん／介護福祉士

介護士歴20年。有料老人ホーム、介護老人保健施設を経て、特別養護老人ホームの介護部責任者に。介護にまつわるエピソードをSNSで発信して好評を得る。著書に『認知症の人、その本当の気持ち』（KADOKAWA）。

【後悔しない施設の選び方1】「特養」の順番待ちってすごいんでしょ？

砂川さん：特別養護老人ホーム（以下、特養）の待機人数は、特養以外の介護施設が増えたこともあり、だいぶ緩和されています。順番待ちが多いのは、一部の地域のようですね。

たっつんさん：1人で複数の施設に申し込めるうえ、どこかに入居が決まっても、キャンセルの連絡をしないかたが多いので、データ上では数百人待ちになっているケースも。ですから待機人数が多いからとあきらめないでほしい。

外岡さん：そうですね。緊急事態の場合は、入居順を優先してもらえることもあり、臨機応変に対応してもらえます。まずは施設に相談してほしいですね。

砂川さん：ただ、あまりにも空きが多い特養は、職員数が少ないなど、それなりの理由が。施設内の雰囲気がよくなければ、すぐに入れるといわれても、よく検討した方がいいかも。

たっつんさん：そうですね。だから、見学は必須。それと、誤解や思い込みが多いので正しい情報を集めてほしい。たとえば、特養は公的施設なので安い、と思われていますが、医療費がかさむ場合も。特養は病院ではないので何かあれば通院が必要なのに、それを知らないかたも少なくない。

砂川さん：「特養に入れたから安心」ではなく、入ってからが始まりなんです。

【後悔しない施設の選び方2】有料老人ホームは高額でしょ？

砂川さん：「特養は費用が安いから待機人数が多く、有料老人ホームは高額な分、入りやすい」と思っているかたが多いですよね。

たっつんさん：確かに、入居金だけで数百万～数千万円かかる豪華な有料老人ホームはありますが、そういう施設ばかりではありません。最近は、入居金が低額な代わりに、月々の費用を支払う施設が増えてきました。

砂川さん：入居金が下がったことで、特養と費用が変わらない有料老人ホームも増えましたよね。これまでは「高い入居金を払ったから一生ここで暮らすしかない」と、不満があってもがまんする人も多かったのですが、月額制なら退去しやすいですから、そのあたりのメリットも大きいと思います。

外岡さん：有料老人ホームは施設によって金額がさまざま。でも、「高いほどいい施設」という思い込みは危険です。

たっつんさん：そうですね。大切なのはサービスの質と費用が見合っているかどうか。たとえば、要支援者10人に対し1人の介護職員が人員配置の最低基準ですが、ケアが手厚い施設では、それ以上の職員を確保していて、夜間に看護師を配置している施設も。となると、それだけ人件費がかかり、費用が高くなります。金額だけで決めるのではなく、ケアやサービスの質もしっかり見極めた方がいいと思います。

イラスト／藤井昌子 写真／Getty Images

※女性セブン2025年2月6日号
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