「えっ、老人ホームの請求額が想定より5万円も高い!」83才要介護3の男性の事例に学ぶ「契約前に確認すべき3つのポイント」を専門家が解説
熟考して入居した有料老人ホームでも「こんなはずじゃなかった」と後悔する人も少なくないと話すのは、相談員、ケアマネージャーと介護現場の経験がある中谷ミホさん。特に、費用に関しては契約前にしっかり確認しておかなければ、予想外の請求額に驚くことも…。そこで中谷さんに、月額利用料が想定より5万円も高くなった事例をもとに、契約前に注意したいポイントを解説てもらった。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703
パンフレットよりも5万円高かった月額利用料
野村大輔さん(仮名・57歳・自営業)は、父親(83才・要介護3)が一人暮らしを続けることが難しくなり、住宅型有料老人ホームへの入居を決めました
野村さんが施設選びで重視したのは費用です。施設のパンフレットには「月額利用費15万円(家賃・食費・管理費)」と記載されており「この金額なら、年金と預貯金で十分にやりくりできそうだ」と安心して入居を決めました。
ところが、実際に入居して初めて請求書を受け取ると、月額利用料が20万円と記載されていました。内訳を見ると、介護サービス費が3万円、おむつ代及び処分費、クリーニング代、日用品費用として2万円が請求されていたのです。パンフレットよりも5万円高い請求額に、野村さんは驚き、今後の支払いに不安を抱えています。
パンフレットやホームページに記載されていない費用がある
有料老人ホームの月額利用料金は、「基本料金」と「個別料金」を合算した金額です。
しかし、施設のパンフレットやホームページでは、毎月の最低限の費用である「基本料金」のみが大きく表示され、個別料金の記載がなかったり、あっても欄外に小さく示されていたりする場合が少なくありません。このため、個別料金を見落とし、結果として想定以上の請求額に驚く事例もあります。野村さんも、この個別料金を見落としていたため、予想外の金額に困惑しました。
有料老人ホームの月額利用料の内訳
内訳 | 特徴 | |
基本料金 | 家賃、食費、管理費(※水道光熱費が含まれる場合あり) | 毎月の最低限の費用 |
個別料金 | 水道光熱費(基本料金に含まれない場合)、介護サービス費、医療費、おむつ代および処分費、テレビレンタル費、日曜消耗品費、クリーニング代、イベント参加費、理美容費など | 利用者ごとの生活・サービス利用状況に応じて変動する追加費用 |
野村さんの場合、介護サービス費3万円、おむつ代と日用品費用の2万円がこの個別料金にあたります。
パンフレットやホームページに掲載されている月額表示は、あくまでも一例として捉えることが重要です。とくに、個別料金についての記載が曖昧な場合は、見学時に担当者に質問したり、契約前に具体的な説明を受けるようにしましょう。
有料老人ホーム契約前に確認すべきポイント
有料老人ホームに入居した後、「こんなはずではなかった」と後悔しないためには、契約前の段階で費用面をしっかりと確認しておくことが大切です。
そこで、以下の3つの確認ポイントをしっかり押さえておきましょう。
確認ポイント1:基本料金に含まれない費用を明確にする
有料老人ホームの費用は、基本料金以外に、個々の利用状況によって加算される費用があることを認識しておきましょう。具体的にどのような費用が基本料金に含まれていないのか、重要事項説明書や担当者への質問を通して明確にしておきましょう。
確認ポイント2:個別料金の内訳と金額を確認する
個別料金の中でも、特に実費負担となるおむつ代や、タオル、石鹸、ティッシュペーパーといった「日用品費」は、月々の支出として継続的にかかるため、長期的に見ると相当な金額になることがあります。施設の料金設定を確認し、月額でどの程度の負担になるのか、事前に把握しておきましょう。
また、おむつや日用品については、家族が購入して持ち込む方が費用を抑えられる場合もあります。ただし、施設によっては衛生管理等の理由で持ち込みが認められていない場合もあるため、入居先のルールを必ず確認してください。持ち込みが可能な場合、持ち込み料が発生するかどうかも確認が必要です。
確認ポイント3:消費税の扱いを確認する
有料老人ホームの支払いで見落としがちなポイントが消費税の扱いです。家賃相当額は非課税ですが、食費やオプションサービス料金は課税対象になる場合があります。
また、施設によって消費税の徴収ルールが異なり、表示金額が税込みか税抜きかでも支払い額が変わります。施設の重要事項説明書には、家賃相当額は非課税、食費は課税といった情報が記載されているので、契約前によく確認しておきましょう。
そして、実際の請求書を受け取ったら、そこに書かれている金額が契約内容と一致しているかをチェックすることも大切です。
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有料老人ホームとの契約前には「重要事項説明書」にしっかり目を通し、基本料金に含まれない費用や消費税の扱いを確認することが大切です。事前に疑問点を解決しておけば、後から「こんなはずではなかった」と後悔することなく、安心して有料老人ホームを利用できるでしょう。