特別養護老人ホームの見学時に確認すべき9つのチェックポイント「後悔しないために準備が大切」【専門家解説】
特別養護老人ホームの入所を考えた時、おすすめしたいのが見学です。実際に見学することでホームページやパンフレットだけではわからない入居者やスタッフの様子、施設全体の雰囲気など多くの情報を得ることができるからです。せっかく行った見学で、質問漏れ、確認ミスが無いよう介護職員、ケアマネの経験を持つ中谷さんに見学する際のポイントを伺ったのでぜひ参考にしてください。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703
人気が高い「特別養護老人ホーム」の選び方のポイント
特養(特別養護老人ホーム)は公的な施設のため、入所は申し込み順ではなく、介護度が高い方や介護する家族がいないかたなど緊急性の高い人を優先する仕組みになっています。また、費用も比較的安価で、終身にわたって利用できる施設のため、どこの地域でも入所待ちの人が多く、入所までに数年かかることも珍しくありません。
待機者数は、やや減少傾向にありますが、厚労省の調査によると2022年4月現在で約25万人と報告されています。
特養には「広域型」と「地域密着型」「地域サポート型」の3種類があります。このうち、施設に入所して介護サービスが受けられるのは「広域型」と「地域密着型」です。
広域型の特養は、定員30名以上で、基本的に全国どこからでも申し込みが可能です。入所する地域にこだわらない方は、申込者の多い都市部にある特養よりも、地方にある施設に申し込みをする方が比較的早く入所できる可能性があります。
一方で、地域密着型の特養とは、定員が29名以下の小規模な特養のことです。介護保険の地域密着型サービスに属するサービスのため、入所できるのは施設のある地域の住民に限られます。
住み慣れた地域での生活を続けたい方は、お住まいの地域にある地域密着型特養を選ぶと良いでしょう。
→特別養護老人ホーム(特養)とは?費用や入居条件、申し込み方法「早く入居するコツ」も解説
部屋のタイプによって費用が異なるので見学時には注意
特別養護老人ホームの部屋の種類には、従来型とユニット型があり、ケア体制や費用に大きな違いがあります。
従来型
特徴…ひとつの部屋を2〜4人で利用する多床室が中心
ケア体制…集団でのケア
費用…月額8~9万
ユニット型
特徴…個室が中心で、1ユニット10名程度の少人数で生活を送る
ケア体制…個別ケア
費用…月額12~14万
ユニット型は少人数でスタッフも専任となるため、一人ひとりの状況に合わせた目の行き届いたケアが受けられるのが特徴です。
一方で、個室であり光熱費などの負担も大きくなるため、従来型よりも費用が高くなります。費用が高くなっても、少人数の環境で介護を受けたい方はユニット型の特養を見学するとよいでしょう。
特別養護老人ホーム見学の流れと準備
見学時は親族1~2人程度で行くのがポイント
特別養護老人ホームの見学には、予約が必須です。
予約は、電話あるいはホームページの問い合わせフォームから行う場合が多く、訪問する日時や見学する人数、来園方法(駐車場の有無)などを伝えます。
施設を見学できる人数は、コロナ禍以降「入所する本人と身元引受人の2人のみ」などと人数制限を設けているところもあるため、確認が必要です。
人数制限がない場合でも、大人数での訪問は避けましょう。入所する本人と身元引受人、親族1〜2人程度が適切です。複数人で見学すると、多彩な視点から施設を見ることができます。
見学時に持っていくべきもの
当日までに、見学に行く施設のパンフレットやホームページを見直し、実際に見ておきたいことや質問したいことをまとめて、メモに書き出しておきましょう。
【当日持参するもの】
・カメラ(スマホでもOK)
・メモ、ペン
・事前に送ってもらったパンフレットや書類など
・質問リスト
複数の施設を見学する方は、記憶が曖昧になるためメモやカメラなどを持参し、しっかりと記録しておきましょう。
カメラは、施設を案内してくれるスタッフの許可を得てから撮影するようにしてください。
特別養護老人ホームの見学ポイント9選
以下に、見学の際に確認しておきたいポイントをまとめました。
1:施設の様子
・施設の種類(広域型か地域密着型か)
・部屋の種類(従来型かユニット型か)
・建物の老朽化が進んでいないか
・掃除が行き届いているか
特養の歴史は古く、開設から30〜40年以上経過している施設も少なくありません。リフォーム済みの施設もありますが、一方で、老朽化が進む施設も存在します。見学時には、建物や設備の状態を確認しましょう。
2:スタッフの対応
・挨拶ができるか
・入所者に「〜ちゃん」と呼びかけていないか
・利用者への態度や言葉使いはどうか(命令口調、敬語)
・スタッフの身だしなみは清潔か
入所者に対する態度や言葉使い、身だしなみも確認するポイントです。
3:入所者の様子
・男女比
・介護度
・車椅子で1日を過ごしていないか
4:入所者の身なり
・衣類が汚れていないか
・爪や髭が手入れされているか
入所者の身なりに清潔感を感じない場合は、ケアが行き届いていない証拠と言えます。
5:居室
・日当たり、空調
・窓からの眺め
・テレビの有無
・トイレの場所
6:入浴(浴室)
・浴室の数と種類
・浴室の衛生が保たれているか
7:食事
・食堂の広さ、雰囲気
・メニューの内容、量
・食事時間
・特別食(ミキサー食など)の種類
・食事介助が早過ぎないか(食事の様子が見れる場合に確認)
8:壁の掲示物
・行事の写真などを掲示しているか(レクリエーションを活発にしている証拠)
9:交通の便
・交通の便はどうか(家族が通いやすいか)
特別養護老人ホームの見学で聞いておくべき質問6選
特養見学の際には、以下の点について施設側に確認しましょう。
1:日常生活のこと
・日常生活のスケジュール
・レクリエーション・行事の頻度・内容
・入浴時間
・週の入浴回数
・入浴できない場合の対応
・体調不良など緊急時の対応
2:費用について
・基本的な費用(食費や介護サービス費、居住費)
・基本料金以外にかかる費用の内訳
・支払い方法(振り込みや口座振替が可能か)
費用を試算してもらうことも可能なため、入所する方の負担限度額認定証や高額介護サービス費の認定証を持っている場合は、持参するとよいでしょう。
3:家族の訪問について
・面会方法
・訪問の曜日、時間帯に制約があるか
・おやつなどの差し入れができるか
4:施設の医療体制
・施設内で受けられる医療的ケアの範囲
・夜間に看護職員が配置されているか
・看護職員が不在の時間帯の対応
・医師の往診回数
・医療機関へ受診するときの付き添い(スタッフか家族か)
・看取りケアに対応しているか
特養では、看護師や研修を受けた介護スタッフが、喀痰吸引や胃ろう(腸ろう)の管理などの医療行為を行います。
しかし、提供される医療行為の範囲は施設ごとに異なるため、日常的に医療的ケアが必要な方は、見学先の特養で受けられる医療行為とその範囲を確認する必要があります。
合わせて、けがや病気により健康状態が変化した場合の対応や、看取り対応をしているかどうかも施設ごとに異なるため、忘れずに聞いておきましょう。
5:退去解約時の事
・退去要件や契約解除の内容
6:災害時の事
・地震など災害時の対応
見学に行ったら入所の順番が早くなるのはホント?
見学に行ったからといって、入所の順番が早まることはありません。特養は公的な施設のため、社会福祉の観点から緊急度の高い人を優先的に受け入れる決まりとなってます。
もし、早く入所したいのであれば、併設のショートステイやデイサービスを利用するのがおすすめです。
これらの併設サービスを利用すると、施設側が本人や家族の状況を把握できるので、入所の順番を考慮してもらえる可能性があります。(※必ずしも早くなるとは限りません)
また、特養は複数の施設に同時に申し込むことができるので、いくつかの施設に申し込んでおくのもよいでしょう。
特養入所を検討するほとんどの方は「終の棲家」として入所を決めることが多い印象です。見学時に、気になることや疑問に思うところは、遠慮せずに質問しましょう。今回ご紹介したチェックポイントを活用して、後悔のない選択をしてください。
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