「やさしいおかゆ」NO老いるLIFE ~母と娘のほんわか口福日誌~第37話
漫画家で栄養士のうえだのぶさんの母は、慢性膵炎を抱えている。症状が悪化しないように、膵臓を労わる“脂質控え目”の食生活を送っているのだが、ある時母の様子がおかしいことに気がついて――。
時には揚げ物もよし!
「脂質控えめ(1食10g)」が目安の我が家ですが、時には(2か月に1度くらい)ご褒美として、こってりしたものや、揚げ物も食べていい日を設けています。
先日、久しぶりにメンチカツとヒレカツを夕食のおかずにしました。揚げ物が大好きな母は、大喜びでペロリ。ところが、翌日の晩ごはん時――。
母「うーん、今日はちょっと食事は抜いておこうかな…」
私「ん?」
母「ちょっとねえ、胃のあたりが…」
私「え?昨日の揚げ物がこたえたんやろか?」
母「あ、うん、いや、その前からちょっと」(ごにょごにょ…)
――むむ? なんか怪しい。
私「ねえ、いつから? 胃がもたれてるの?」
母「……3日前くらいから」
――はああああああ~!?
私「なんですぐ言わんかったんよ?」
母「いや、あんたに迷惑かけるかなと思って…」
――プチッ(キレる音)。
私「あのねー!胃の調子が悪いのを隠して無理して食べていたんだったら、そっちの方が迷惑なんよー!」
母「無理してないよ~。揚げ物、おいしかったけえ~」
そ・う・い・う・ことじゃなーい!!!!(ドッカーン)
急性膵炎の不安がよぎる
私がここまで怒るのには理由があります。
「3日くらい胃がもたれる」。これは過去に数回、膵炎が悪化して搬送された時の共通の「前兆」なのです。今、母の膵臓(厳密には、膵管)には小さい石が2つあり、いつまたそうなってもおかしくないのです。
→母の慢性膵炎、膵臓の管に”石”が詰まってしまう」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第18話
昨日は久しぶりの揚げ物だったけど、基本ずっと脂質控えめの食事なのに、なぜ???
主治医の先生からは「様子がおかしいと思ったらいつでもすぐ病院に連絡してください」と言われているけど、今は土曜日の18時過ぎ。
いきなり病棟に電話して話が通じるのかな。 「胃がもたれる」ってだけで対応してもらえるのかな。いや、でも夜中に悪化したら怖いし…。
えーい、ダメ元で連絡してみよう。
病院に連絡して患者IDを伝えると、電話口で看護師さんがとても親身に対応してくれました。
看護師さん「熱はありますか?吐き気は?」
私「吐き気はないみたいです。熱は、どうだろう…」
看護師さん「電話はこのままでいいので熱を測ってみてください」
はいっ!
私「お母さん、熱測って!」
母「ああ、なんでじゃろーエラーが出るうぅ」
私「お母さん、肌着の上から測ってるじゃん!」
――すったもんだがあったのち、改めて夜勤の先生が連絡をくれることになりました。
「熱も吐き気もないので、急性膵炎とは判断できないので、しばらく様子を見て症状が悪化したら真夜中でも構わないので、すぐ連絡してください。胃の不快感だけが続くようなら、月曜日に外来で受診してくださいね。それから、脱水症状には注意して、水分は必ず摂ってください」とのこと。
ビクビクの一夜が明け、翌日は3食「おかゆ」にすることにしました。
胃の不調を黙っていた母に腹を立てつつ、これでまた入院になったら絶食になってしまうのかと思うと、ちょっとでもおいしいおかゆを作ってあげたい(←やさしいな、私)。
結局、症状の悪化はなく、胃はスッキリした(と本人が言う)ので、外来の診察は見送りました。
ああよかった……いやいや、ちょっと待って。そもそも、なんで急に胃の調子が悪くなった? 母よ、白状せい!
母「実は、2日続けてお友達の家で“ちょっと”ご馳走になりました…」
(『ちょっと』の中身は口を割りませんが、おそらく脂質たっぷりのケーキかなにかでしょう)
「慢性膵炎と戦う母の密かな抵抗」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第6回
私「次からは胃が悪くなった時点で言ってよ!」
母「はーーい」
やれやれ…。今回は取り越し苦労でしたが、不安に思った時には、病院でちゃんと対応してもらえることがわかってとても心強かったです。
同時に、健康そうに見えてもやっぱり母は爆弾を抱えているんだなあと思い知らされました。今月の中旬にはまた検査を受けます。次回の連載で皆さんにいい報告できることを願っています。
NOオイルMemo「おかゆが体にやさしい理由」
胃の調子がすぐれない時や風邪で体調が悪い時などは、「おかゆ」が定番ですね。
一番の理由は「消化がいい」からで、消化がいいと何がいいのかというと、胃や腸(膵臓も)がせっせと働かなくていいので、その分身体の負担が減るからです。
お米の糖はすぐにエネルギーになるし、水分の補給もできます。もちろんNOオイル。ご飯を水で煮ただけのものなのに、色々理にかなっているんですよね。
栄養の知識がなかった頃の私は、風邪をひくと食事をとらずに生姜入りの紅茶だけがぶ飲みしたり、野菜やキノコにオリーブオイルをたっぷり入れたスープを作って食べたりしていました。
どちらも胃の負担が大きいんです。案の定、逆に悪化させて寝込んでいましたね。
調子が悪いなと思ったときは、白がゆを食べて、引きはじめ用の風邪薬を飲んで早々に寝ます。このパターンにしてからは、風邪をこじらせたことはありません(あくまで私の場合ですが)。食と健康ってつながってるんだな~と、おかゆのやさしさを実感します。
絵と文
漫画家・うえだのぶ
イラストレーター・漫画家。58才。山口県で82才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
ホームページ:uenobu.com アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja