息切れに潜む病気とは?「疑われる病気」例を息切れ外来専門医が解説。ハトのフンや羽毛布団が原因のことも
20〜60代女性の8割超が実感しているにもかかわらず、何も対処していない人が多い「息切れ」。放っておくと、ぜんそく、心疾患、間質性肺炎、過敏性肺炎の恐れも……。息切れに潜む恐ろしい病気について専門医に解説してもらった。
教えてくれた人
松野圭さん/呼吸器内科医
順天堂東京江東高齢者医療センターの「息切れ外来」で、息切れ患者の診察にあたっている。順天堂大学医学部呼吸器内科学、同学部スポーツ医学研究室准教授。呼吸筋ストレッチ体操指導士として各地で指導も行う。
息切れに潜む疾病とは
息切れの症状で疑われる疾病は、ぜんそくや喫煙が主な原因であるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、不整脈や狭心症など、呼吸器や心臓にまつわるものが主だが、医療機関では、息切れに潜む疾病をどのように探っていくのだろうか?
「最初に、血液検査やレントゲン検査、心電図などで呼吸器と心臓の疾病の有無を検査します。ここで問題がなければひとまずは安心といえますが、それでも息切れが気になるときは、骨密度と筋肉量を調べ、同年代より筋肉量が低いかたには運動や食事の指導を行います。『鉄欠乏性貧血』も息切れの原因に。鉄が不足すると酸素を全身に運ぶためのヘモグロビンが低下し、心肺への負担が増加するためです。鉄剤を処方して改善する場合もあります」(呼吸器内科医の松野圭さん・以下同)
息切れで疑われる主な疾病例
<1>呼吸器疾患
気管支ぜんそく、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、間質性肺炎など
<2>心血管疾患
狭心症、心筋梗塞、心不全、不整脈、心臓弁膜症など
<3>その他
貧血、身体的フレイル、サルコペニア(※)、ストレスなど
※「サルコペニア」とは、高齢期に、活動不足・栄養不良などにより筋肉量や筋力が低下すること。
ハトのフンや羽毛、ストレスが影響している場合も
免疫系の持病があり、息切れの症状が現れることで疑われる病気もある。
「肺が硬くなり、縮んでしまう『間質性肺炎』は、原因不明なことが多い難病です。たとえば歌手の八代亜紀さん(享年73)は『膠原(こうげん)病』の1つで『皮膚筋炎』という自己免疫疾患に罹患していましたが、その初期症状として急性間質性肺炎を発症し、命を落としてしまいました。関節リウマチなどの自己免疫疾患を抱えるかたは注意が必要です」
また、寝ている間に呼吸が止まり、心臓に負担がかかる「睡眠時無呼吸症候群」の患者も息切れを起こしやすいという。
そして、まれな例だが、鳥が原因の息切れも……!
「ハトのフンや羽毛など鳥の抗原(アレルギーの原因)で起きる間質性肺炎の一種、『過敏性肺炎』です。この肺炎が見つかると、私たちはまず患者の環境調査を行います。羽毛布団やダウンジャケットの着用をやめて息切れが落ち着いたというケースもあります」
さて、検査の結果、内科的疾患(貧血含む)、筋肉量のいずれも異常がなかった場合は、何が原因なのか?
「メンタル面の可能性が考えられますね。ストレスや緊張で呼吸が浅くなり、息切れや息苦しさに悩むかたが昨今非常に多い。そういう患者さんには、まず呼吸を整えることをおすすめしています。呼吸を整えるだけで気分が落ち着き、息切れの解消が期待できます」
取材・文/佐藤有栄 デザイン/功野真亜知 イラスト/うつみちはる 写真/PIXTA
※女性セブン2024年11月14日号
https://josei7.com
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