健康

女性も要注意「いびき」の原因と対策「睡眠時無呼吸症候群かも?」いびき解消枕の作り方をプロが解説

 事件は就寝中に起きている。ゆえに自分では気づきにくい“いびき”。「女性はそんなにかかないでしょ」と思ったら大間違い。いびきをかくかどうかは、性別も体形も年齢も関係ないんです。知らずに放置していると恐ろしい病気の原因になるので、この機会に勇気をもって向き合ってみませんか?

教えてくれた人

大場俊彦さん/慶友銀座クリニック院長

慶應義塾大学大学院博士課程外科系修了。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定専門医。いびき外来を設置。主な著書に『いびき女子、卒業!』(主婦の友社)などがある。

三橋美穂さん/快眠セラピスト

睡眠環境プランナー。1万人以上の眠りの悩みを解決。講演活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュースも手がける。著書に『眠りのさじ加減 65歳からのやさしい睡眠法』(青志社)ほか多数。

注意したい女性の「いびき」気づいてないのは自分だけかも!?

 コロナ禍の自粛が緩和され、家族や友達と旅行に行く機会も増えたのでは? そこで聞こえてくるのが、

「一緒に行った人のいびきがうるさくて眠れなかった。旅行は楽しかったけど疲れた」

 なんて、苦笑いの声。

「いびきなんて、太っている人の専売特許でしょ? 私には無縁」などと思っている人こそ要注意。

 そもそもいびきとは、睡眠時に生じる呼吸の雑音。何らかの原因でのどが狭くなり、息を吸うときに、その狭いのどが振動することで生じる音なので、どんな人にでも起こりうるのだ。

いびきのタイプ「SAS(睡眠時無呼吸症候群)は要注意」

「単なる雑音と軽視してはいけません」

  と警鐘を鳴らすのは、いびき専用の外来を設ける慶友銀座クリニック院長・大場俊彦さんだ。

「いびきには、鼻づまりや疲労、飲酒、風邪などが原因の一時的な“単純性いびき”と“睡眠時無呼吸症候群に伴ういびき”があります」(大場さん・以下同)

  気をつけたいのは、後者の睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)に伴ういびきだという。

 SASとは、寝ている間に呼吸が止まった状態(無呼吸)になったり、止まりかける状態(低呼吸)が、何度も繰り返される病気のことだ。

「睡眠中に呼吸が止まることで、動脈の中の酸素量が不足し、血管や心臓、脳に大きな負荷がかかります。放置すると、心不全や心筋梗塞、不整脈といった合併症の引き金となり、最悪の場合は突然死の危険性もあります。

また、無意識のうちに何度も目が覚めるので、眠りが浅くなり、睡眠時間を長くとったつもりでも、慢性的な寝不足の状態に。居眠り運転など、重大な事故を引き起こす原因にもなります」

★ひとつでも当てはまれば 「SAS(睡眠時無呼吸症候群)」予備軍

□ 習慣性のいびきがある。

□ 昼間に眠気を感じる。

□ 眠ったはずなのに熟睡感がない。

□ 常に疲労感が抜けない。

□ 夜、なかなか寝付けない。

□ 夜中に苦しくて目が覚める。

□ 高血圧、糖尿病(2型)、心臓病のいずれかにかかっている。

※アメリカ睡眠学会の診断基準に準拠した閉塞性睡眠時無呼吸症候群の診断基準より。

いびきが発生するメカニズム

 では、自分や家族のいびきが単純性いびきなのかSASに伴うものなのか、どう判断すればいいのだろうか。

「いびきの音には2種類あります。単純性いびきは、軟口蓋(なんこうがい)(図参照)が振動して起こる振動型で、規則的で低音なのが特徴的です。

一方、SASは舌根(ぜっこん)部が閉塞することで起こる閉塞型。狭い気道に素早く空気が流れるため、高音になります。閉塞型と振動型が同時に起こる場合もあるため、いびきの音は不規則になることもありますが、いずれにせよ、大きな音のいびきほど重症だと考えていいでしょう」

 家族ががまんできないほど大きな音のいびきは、単純性だろうがSASだろうが楽観視は禁物だという。

単純性いびきでも放置するとSASに進行する恐れがあります。ですから、なるべく早い段階で医療機関を受診するのが望ましいといえます」

いびきの原因は主に肥満、鼻づまり、あごが小さい、加齢

 では、なぜいびきは起こるのだろうか。

「いびきの原因にはさまざまな要素がありますが、大きく分けると、肥満、鼻づまり、あごや口腔内の異常、加齢などがあげられます」

 肥満によってのどがふさがれるといびきが出るのはわかる。しかし、鼻がつまるとなぜ、のどから音が出るのか。

「人間の呼吸は本来、鼻でするもの。口呼吸はあくまで鼻呼吸の補助です。しかし、鼻づまりの場合は、口呼吸になりやすい。鼻づまりのせいで睡眠中に口が開くと、下あごと舌骨(ぜっこつ)が下がります。すると舌根が下に落ち込み、のどが狭くなっていびきの原因になるのです。朝起きたときに口臭がしたり、口の中がネバネバしたり、乾燥してのどに痛みを感じる場合、口呼吸をしている可能性があります」

 つまり、鼻づまりはもちろん、就寝中に口呼吸をしている人も、いびきをかいている可能性が高いというわけだ。

「加齢で筋力が低下してもいびきが発生します。口まわりの筋力が衰え、舌を支えられなくなると、だらんと下がった舌根が気道を圧迫。窒息状態になるからです」

歯並びやかみ合わせが悪いのもいびきの原因になる

 さらにあごや口腔内の状態も見逃せない。あごが小さかったり後退している場合は、仰向けになったときに舌がのどの奥に落ち込みやすくなるからだ。また、歯並びやかみ合わせが悪いと、舌の収まりが悪くなってのどをふさぎ、いびきの原因となる。

 生まれつき扁桃腺が大きかったり、左右差がある場合、口蓋垂(こうがいすい)(のどちんこ)の形状によって気道が狭くなるケースもある。

「最近は頭蓋骨が小さい“小顔”の人が増えましたが、そういう人はもともと気道が狭いので、いびきをかきやすくなります」

 これこそ、いびきに年齢や体形は関係ないといわれるゆえんだ。

→2分以内に寝つける!米軍が採用した究極の睡眠法「漸進的筋弛緩法」とは?やり方をイラストでわかりやすく解説【睡眠専門医監修】

タイプ別・いびきの原因

50代×ぽっちゃりぎみの女性

更年期&肥満気味の50代。SAS予備軍なので要注意!!

 閉経後の女性はプロゲステロンの分泌量が少なくなり、気道を広げる力が弱まる。加えて、肥満で首まわりや舌に脂肪がついて気道が狭まり、加齢による筋力の低下で狭い気道がいっそう狭くなる。50代以降の女性にありがちでかつ危険な状態。SASの予備軍だ。すぐに病院へ!!

30代×鼻炎気味の女性

アレルギー性鼻炎による鼻づまりで口呼吸になり、いびきを誘発。

 アレルギー性鼻炎など、鼻の粘膜の慢性的な炎症が原因で鼻の粘膜が厚くなると、鼻がつまって気道が狭くなる。すると口呼吸になりいびきの原因に。鼻づまりの原因はほかにも、鼻の真ん中の仕切りが曲がる鼻中隔湾曲症や副鼻腔炎、鼻茸(はなたけ)、習慣性扁桃炎、アデノイド肥大などもある。

20代×細身の女性

 美人の代名詞“小顔”だが、気道がふさがりやすい骨格だった。

 欧米人に比べて、もともとあごが小さい日本人。そのなかでもさらに“小顔”の場合、頭蓋骨の骨格が小さいせいで、のどの作りも狭くなっており、空気の通り道が確保しにくく、いびきをかきやすい構造になっている。元来SASになりやすいので肥満にならないよう注意が必要。

女性ホルモンの減少でいびきをかきやすくなる

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