【初めての介護】ケアマネへの率直な情報提供で介護がうまくいく
介護を受ける人を支えると共に、家族の介護負担が重くならないよう配慮もしてくれるというケアマネジャー。より良いサポートを得るには相談する前にどんな準備が必要だろうか。
→親の介護が気になるとき知っておきたいこと|介護の始まり、慌てず準備をするために
ケアマネジャーとうまくコミュニケーションをとるコツを、株式会社モテギ新宿ケアセンター長、モテギケアプランニング新宿管理者の森岡真也さんに聞いた。
【目次】
→ケアマネの見つけ方「支援事務所」「前歴」がカギ 交代もあり
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ケアマネとの対話で介護の設計図「ケアプラン」が作られる
ケアマネジャーは、介護を受ける人やご家族から情報を集め、分析し、生活上の課題やニーズを見出します。このことを「アセスメント」といいますが、これはとても大切なことで、介護の設計図となる「ケアプラン」を作るベースになります。
ケアマネジャーが介護を受ける人やご家族に初めてお会いするとき、事前に地域包括支援センターや行政の窓口から基本的な情報が提供されている場合もあれば、ほとんど何も知らないまま、お会いすることもあります。
そこで、ご本人を中心になるべく介護に関わるみなさんといろいろなお話をさせていただいてアセスメントし、課題やニーズに優先順位をつけ、具体的に必要な介護サービスはどういったものか考えていきます。
お話を聞くと、介護を受ける人が感じている困りごとが漠然としていることや、ご本人も、ご家族も生活上の課題やニーズに気づいていないこと、ご本人とご家族の考えが異なることなどもよくありますが、その対話全体から課題やニーズを見出すのがケアマネジャーの役割なので、心配せずに、気楽に、思っていることを話していただければ大丈夫です。
ただし、解決したい課題やニーズが比較的明らかだったり、情報量が豊富だったりすると、ご希望にフィットした介護サービスを提案しやすいと思います。
ケアマネには率直な情報提供を
介護保険で提供されるケアマネジメントの公平さを保つため、アセスメントで聞き取りしなければならないことは決まっていて、誰がケアマネジャーであっても同じです。僕自身は世間話なども交え、ご本人とご家族の人生の物語をうかがい、「生活する上で、いちばんの関心事は何だろう、ご興味はどこにあるのだろう?」と考えながら、アセスメントを進めています。
それはまず、ご本人にとっていちばんの希望をかなえることを目標にできると、生活にハリができ、意欲的になる人が多いからです。
介護認定を受ける段階なども含めて、個人的なことを度々他人から質問されるのはいやな気持ちがすることもあるかもしれませんが、話すことで生活上の課題やニーズが整理され、改善につなげることができるので、ぜひ率直にお話ししていただきたいと思います。
介護サービスが始まった後も、1か月に1度は様子をうかがいますので、分からないこと、不安なことも気軽に話していただき、納得いくまで説明を求めていただきたいです。介護サービスを利用しても状態が改善しないような場合は、ケアプランを見直し、改善していきます。
面談での質問は、全国どこでも、すべてのケアマネジャーが同じ項目を聞き取ってアセスメントし、ケアプランに反映させる決まりがあり、ケアマネジャー自身の個人的な考えや手法で行ってはいけないことになっています。
ケアマネから質問されること事前にチェック
ケアマネジャーがご本人とご家族にたずねる基本的な質問は以下のような項目です。
【日常生活について】のチェックリスト
□好きでしていること、楽しみなこと
□これだけは人に委ねず、自分でしたいこと
□生活の中の動作(起き上がり、立ち上がり、移動などの身体の動き)
□外出する頻度
□これからやってみたいこと
□参加している(続けたい)社会活動
□1日の過ごし方(起きてから寝るまでのタイムスケジュールと睡眠時間)
□掃除、洗濯など家事のこと
□食事の支度(調理・配膳、家族、配食など)
□食事の回数・量・摂食嚥下状態(むせるなど)
□入浴の状況
□身だしなみの状態(衣類の整理や着用状況、化粧、整髪状況)
□排泄の状況
□物忘れの頻度
□金銭管理、電話の応対
□困っていること
【心身の健康について】に着いてのチェックリスト
□かかりつけの医者
□かかりつけの歯医者、義歯の利用
□視力
□聴力
□治療中の病気
□飲んでいる薬と薬の管理、服薬状況
□現在、不快に感じている症状や痛みの有無など
□心配なこと、不安なこと
□影響を与える(与えた)可能性がある出来事
【家庭・家族状況について】のチェックリスト
□住まいの問題点
□介護の担い手は誰か
□介護の担い手の健康状態や生活のこと
【お金について】のチェックリスト
□介護保険の介護サービス利用での出費についての考え
□自費での介護サービス利用についての考え
【その他】のチェックリスト
□介護を受ける人の生活歴(出身地や仕事など)
□介護を受ける人の性格や人生観
□介護を受ける人が望む介護(在宅、施設など)
□介護を受ける人が望む医療、終末期医療(在宅医療、延命治療の希望など)
□介護サービス利用について知りたいこと
□家族の要望やケアマネジャーに伝えておきたいこと
こうした質問に対する答えや、ケアマネジャーに必ず伝えたいことなどをあらかじめ整理し、メモしておくと、面談の時間をより有意義に使っていただけるかもしれません。ケアマネジャーと十分なコミュニケーションがとれ、信頼関係ができることが、介護を受ける人の安心、ご家族の負担軽減にはより良いと思います。
教えてくれた人
森岡真也さん:株式会社モテギ新宿ケアセンター長、モテギケアプランニング新宿管理者。主任介護支援専門員(ケアマネジャー)・社会福祉士・介護福祉士。大学では文化人類学を専攻していたが、介護のアルバイトと家族介護をきっかけに現職を志した。介護保険利用者の相談援助の傍ら、区内の介護専門職のネットワークづくり、市民を交えた「食支援」活動に奔走する。「高齢になると十分な食事がとれず、栄養障害を起こす人が多いこと、食支援が必要なことを知ってもらいたい」。
取材・文/下平貴子
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