ケアマネの見つけ方「支援事務所」「前歴」がカギ 交代もあり
要介護度が確定し、親の介護を行なっていく上で重要なのがケアマネジャーの選定だ。
※要介護認定を受けるまでは、以下の記事を参照
より良いQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を実現させるために「ケアプラン」を作成するのがケアマネジャーの役目だ。最低でも月に一度は本人やその家族と面談し、要望、悩みを聞き取り、必要によってはケアプランの見直しなどを行なう。
ケアマネジャーがいなくても、親の介護計画を立て、実際にサービスを利用していくことは可能だが、多岐にわたる介護サービスは複雑で広範に及ぶため、介護の予算と要介護度による支給限度額などを考慮しながら適切なサービスを選択していくことは門外漢には難しい。
ケアマネジャーの給与は介護保険からまかなわれ、利用者側の費用負担はゼロとなるので、基本的にはプロフェッショナルであるケアマネジャーの力を借りることに伴う金銭的デメリットはない。
→ケアマネジャーってどのような存在?【プロが教える在宅介護のヒント】
「前歴」を要チェック
ケアマネジャーは、「介護支援専門員」とも呼ばれる。各都道府県が実施する試験に合格し、2週間程度の実務研修を受講したあと、レポートを提出することで介護支援専門員証が交付される。
ケアマネジャーを受験するためには、看護師や介護福祉士、社会福祉士、歯科衛生士、栄養士などの国家資格保持者であるか、介護施設で相談業務などに従事した経験をもつことが求められる。
「ケアマネジャーによって、持っている資格や経験は様々です。看護師など医療系の資格を持っていれば、病気や医療の知識が豊富で、医療機関とのコネクションもある。親に持病があったり、過去に大病をしたことがある場合には、アドバイスをもらえますし、体調に異変が起きたときは迅速な対応が期待できる。
介護福祉士などの資格保持者は、実務的な介護の方法などを熟知している。日常生活で必要な支援が適切に計画に反映されやすい。
親の病気や障害、介護の必要度によって適したケアマネジャーが作成することで、よりベターなケアプランが立てられる」(前出・高室氏)
生活習慣病などへの不安がある場合、栄養士の資格を持つケアマネジャーがいれば、食生活へのアドバイスも期待できる。また、うつ病などの精神障害があるケースでは、精神保健福祉士の経験があれば、親のメンタル面へのケアも頼れる。
下の図は、親の病気や障害に応じて、どのような資格を所持するケアマネジャーが適しているかをまとめたものだ。判断の参考にしていただきたい。
ケアマネ選びは大きな病院のMSWに相談するのも手
ケアマネジャー選びについて前出の高室氏はこうアドバイスする。
「まずは、市区町村の介護保健課の窓口や地域包括支援センターで、各地域にある『居宅介護支援事務所』の一覧表を手に入れましょう。ケアマネジャーはほとんどが支援事務所に所属しています。一覧表には、連絡先や、所属するケアマネジャーの人数などの情報が載っています。
目安の1つは、主任介護支援専門員の在籍やケアマネジャーの定期的な研修実施といったいくつかの要件をクリアすれば行政から指定を受けられる『特定事業所』かどうか。相対的にベテランが多く、能力の高いケアマネジャーが所属しています」
ただ、資料にはケアマネジャーの個人名や、保持資格までは載っていない。自治体の担当者や支援センターの職員も、立場上、特定の事業所やケアマネジャーを推薦するわけにはいかない現実がある。
「比較的規模の大きい病院にいる、MSW(医療ソーシャルワーカー)に相談してみるのが手です。介護サービスにも精通しており、ケアマネジャーとの個人的な関係を持つ人も多いので参考になります。あとは、介護サービスを実際に利用している人や、介護職員の口コミの評判を聞いてみるのもいいでしょう」(前出・横井氏)
ケアマネをチェンジするときは、自治体の窓口に相談を
ただし、実際に介護を行なっていく上で、親や家族とケアマネジャーの相性が合わない事態も考えられる。
そうした場合、ケアマネジャーの変更も可能だ。
「本人に直接言うというのはなかなか難しいでしょうから、所属する支援事業所に変更を申し出る。それも難しい場合は、自治体の窓口や支援センターに相談しましょう」(前出・結城氏)
ケアマネジャーを変更したことで利用者側に不利益が生じることはない。病気や障害の進行によってケアマネジャーを変更することは珍しいことではないし、相性などの問題でケアマネジャーを変更しても、ケアプランはそのまま引き継ぐこともできるという。
一方、ケアマネジャーは同時に35人までしか担当できないという決まりがあるため、変更を申し出たはいいものの、希望するケアマネジャーの枠がなかなか空かないといったことは考えられる。
介護はいったん始まると多くの場合、長期戦になる。ケアマネは介護サービスの司令塔であり、伴走者だけに、選択には慎重に慎重を期したい。
→「ケアマネを変更したい!」3つの対応方法やデメリットを社会福祉士・ライトさんが解説
※週刊ポスト2019年3月15日号