介護職員「待遇改善」への試金石 新たな処遇改善加算に対応できているか、介護事業所への調査がスタート
令和6年度から加算率が引き上げられた介護職員の「処遇改善加算」に対応するため、厚生労働省は全国の介護事業所に対して移行準備状況を把握する調査を開始した。
処遇改善加算とは?
処遇改善加算は、介護職員の待遇を改善し、人材不足を解消するための財政的支援策として設けられている。この加算制度は、介護事業所が職員の賃金を引き上げ、働きやすい環境を整えるために不可欠な役割を果たすものだ。
具体的には、キャリアパスの整備や職場環境の改善など、一定の条件を満たすことで事業所が加算を受け取ることができる仕組みだ。 近年、介護職員の離職率や人材確保の困難さが問題視される中、政府は処遇改善加算(I〜III)を再編・統合することで加算率を引き上げて、新加算(I〜IV)を設け、さらなる賃上げを推進する方向へ舵を切っている。加算率が引き上げられることで、職員のモチベーション向上や定着率の改善が期待され、介護現場全体の質を底上げすることが狙いだ。
事業所の準備状況は? 全国調査が開始
この調査は、事業所が従来の処遇改善加算から、新たな処遇改善加算I~IVへ適切に移行できるかを確認するものであり、賃金改善が計画通り進んでいるかが焦点となる。
厚労省は、事業所に対して調査への協力を呼びかけており、対応が遅れている事業所には早急な準備を求めている。加算適用の遅れは、賃金改善の遅延につながる可能性もあるからだ。
経過措置は今年度まで 新加算への移行が必須
今年度の改正では、新たな処遇改善加算I~IVが創設されているが、事業所には猶予期間として経過措置が設けられている。この経過措置により、事業所は今年度中、従来の加算区分を維持できるが、2025年3月までに新加算へ完全移行する必要がある。新たな加算は、従来よりも厳しい条件が課されており、キャリアパスの明確化や賃金改善の具体的な取り組みが求められる。特に、賃金改善に関する基準を満たさなければ、加算を受けることができないため、事業所には迅速な準備と計画的な対応が必要だ。厚労省も、各事業所に対して早急に対応するよう指導を強化している。
今後の展望
事業所にとっては、加算要件を満たすための負担が増すが、介護職員の待遇改善には不可欠な制度でもある。賃金水準の向上は、介護職員の離職防止や定着促進につながるとされており、介護現場全体の質を向上させるための重要な施策となっている。
構成・文/介護ポストセブン編集部