「ビジネスケアラーの増加」中小企業の課題支援へ経産省が新たな実証事業
日本社会の高齢化が進む中、仕事と介護の両立を迫られる「ビジネスケアラー」が急増している。国の推計では、2030年にはその数が318万人に達し、介護を理由に離職する人も11万人に増加する見込みだ。こうした状況は企業の生産性低下を招き、経済全体において約9兆2000億円の損失が見込まれており、企業にとっても、介護をサポートするための環境整備は喫緊の課題と言える。
今春には経産省が該当領域のガイドラインを公開
経済産業省では、2024年3月に「仕事と介護の両立支援に関するガイドライン」を公開。仕事と介護を両立するためには「全ての企業の協力が必要」とし、企業がどのような協力を行うべきか、その方法や事項が具体的に示されている。早い段階から企業が、仕事と介護を両立する環境を整えられれば、従業員への負担やマイナスの影響を回避できるという提言をしている。
中小企業は、柔軟な働き方への対応が課題
しかしながら中小企業では、大企業と異なり柔軟な働き方を実現するための制度を導入することが難しい。また、介護に関する知識を持つ専門人材が不足しているため、適切なサポートができないという問題も存在する。経済産業省はこうした中小企業の課題に対応するため、8月から新たな実証事業を立ち上げ、中小企業の相談対応や社内体制の整備を支援する計画だ。
実証事業の今後の展望
この実証事業は、全国の指定地域で行われ、年内に実施される予定。成功すれば、事業は来年度以降も継続され、中小企業における仕事と介護の両立支援がさらに進展することが期待されている。介護に追われる人たちが仕事を続けやすい環境が整うことが、介護の負担を軽減させるだけではなく、企業の生産性向上にもつながる。ビジネスケアラーの課題を他人事と思わず、介護の実態に触れ、仕事と介護を両立した働き方が実現しやすくなるように各企業が考えていくことが課題と言える。
構成・文/介護ポストセブン編集部
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