「ケアマネと相性が悪い」失敗事例に学ぶ良いケアマネの探し方、求める7つの条件【社会福祉士解説】
介護が始まると、さまざまなシーンで頼りになるのが「ケアマネジャー」と呼ばれる専門職だ。どんな介護をするのかを決める上で、家族と奔走する重要な職種だけに、ケアマネの良し悪しは介護の質を左右するものだという。親の介護経験をもつ社会福祉士の渋澤和世さんが考える「良いケアマネ」とは? ケアマネ選びの基本から注意ポイントまで、解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)がある。
ケアマネは介護の頼れるパートナー
親の介護がはじまると、介護者の生活は大きく変化します。自分の親なのだからと最初は気張っていても、時には”こんなに大変だと思わなかった”と辛くなり、孤独を感じることがあるかもしれません。
そんなとき、親の介護を一緒に考えてくれるパートナーとして、ケアマネジャーは頼れる存在でした。実は、介護保険のサービス利用を開始するときに必要になるのが、このケアマネジャーを探す作業です。
ケアマネジャー(以下、ケアマネ)とは、介護保険法に基づき介護が必要な方の要介護状態が悪化しないようにケアマネジメントを行う専門職のことで、正式名称を「介護支援専門員」といいます。
医療や介護の公的保険サービスや保険外のサービスなどを組み合わせ、望む暮らしを実現するための介護計画書(ケアプラン)を一緒に考えてくれます。
ケアマネは、施設介護でも在宅介護でもお世話になる大切な存在。よりよい介護をするためには、親やご家族の要望に沿うケアマネと出会うことが大切です。
なお、施設内での生活をサポートする施設に特化したケアマネと、自宅での生活をサポートする、在宅介護を中心としたケアマネがいます。
主に在宅介護を想定した、ケアマネの探し方や良いケアマネとはどんな人なのか、実体験をもとに考えてみたいと思います。
ケアマネが所属する事業所とは?
ケアマネは、医療法人、社会福祉法人、株式会社、合同会社やNPOなどの法人格を持つ「居宅介護支援事業所」に所属しています。
事業所の規模は様々で、経験を積んだケアマネがひとりで運営している事業所もあれば、数十人単位のケアマネが所属している大規模なところもあります。
事業所の良し悪しや所属するケアマネが有能かどうかは、規模のみでは判断できません。
個人が運営する小規模な事業所でも、管理者は主任ケアマネジャー(ケアマネの上位職)を取得している必要があるため、それなりの経験を積んでいます。
ケアマネは変更することも可能
一方、大規模な法人の場合は、介護福祉士の資格をもつケアマネのほか、異なる国家資格をもつケアマネが所属しているケースもあります。
ケアマネの受験条件のひとつに、「特定の国家資格を取得し、業務経験を積む」というものがあります。特定の国家資格とは、医師、看護師、保健師、介護福祉士、社会福祉士、理学療法士、作業療法士、栄養士、薬剤師など実にさまざまです。
たとえば、医療的支援も必要なので看護師の資格をもつケアマネがいいなど、希望を伝えることができる場合もあります。
また、ケアマネは、相性が合わなかったら交代することもできます。大規模な事業所なら、事業所に所属するケアマネの中で交代することもでき、事業所自体を変える必要がないのはメリットとも言えます。
併設型・独立型の違い
なお、ケアマネが属する居宅支援事業所には、「併設型」と「独立型」の2種類があります。
「併設型」は、「他の介護サービス事業所に併設して運営されている事業所」のことをいいます。たとえば、訪問介護や通所介護が併設されていて、その事業所にケアマネが所属しているケースです。
「独立型」は、他の介護サービスを持たない事業所のことで、シンプルにケアマネジメント業務のみを行っている事業所ということになります。
併設型のケアマネは、介護サービスの連携が図りやすい反面、その他のサービスを自由に選択できなくなる可能性もあります。
一方、独立型のケアマネの場合は、法人内のサービスを優先することなく中立な立場で利用者にあったケアプランを立てられるというメリットがあります。
ケアマネジャーの探し方
基本的にケアマネを決定するには、介護保険サービスの申請(要介護認定)が必要になります。地域包括センターに問い合わせをして、介護保険の申請手続きの流れの中で、ケアマネを決めていくのが一般的な流れになります。
ケアマネの探し方は、いくつかの方法があります。
□市区町村の介護窓口、地域包括支援センターに相談し、事業所のリストをもらって問い合わせをする
□入院中であれば病院のソーシャルワーカーに相談する
□介護サービス情報サービスシステムで検索する(厚生労働省)
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/
□情報サイトWAM NET(ワムネット)で検索する(独立行政法人 福祉医療機構)
https://www.wam.go.jp/sfkohyoout/COP000100E0000.do
□介護経験者に紹介してもらう
信頼できるケアマネを紹介してもらい、連絡をしてみるという方法もあるでしょう。
こうした情報を集めたら、まずは自宅から近い事業所をピックアップし、問い合わせをしてみるといいでしょう。
問い合わせの流れとチェックすべきこと
事業所に確認すべきことと、流れは以下のようになります。
・介護保険サービスの相談がしたいが、新規利用者の受け入れが可能かを確認する (受け入れられる人数が決まっているため) 。
・受け入れ可能であれば、介護で不明なことや不安な点を質問する。どのような介護サービスを利用したいのか希望があれば伝える。
話しやすさ、相談しやすさ、不在時には折り返し電話がくるかなど全体をチェックしておくことをおすすめします。
・事業所は1か所で決めず、なるべく複数の事業所に説明に来てもらうといいでしょう。その際、子もかならず同席して親と一緒に話を聞きましょう 。
・気に入ったところ、対応が良かったところと契約する。
失敗事例「知人の紹介で選んだケアマネが合わない」
親の介護をしていた友人のA子さんは、親の知人がすでに利用してた事業所のケアマネを「良い事業所だから」と紹介されたそうです。
契約してみると、そのケアマネはA子さんの家族を見下すような言葉遣いをされ、また、ショートステイではトラブルがあった際、電話がつながらないこともあったそうで、子の立場からすると不満が募っていたようです。
そこで、親にケアマネを変えようと提案しましたが、「紹介してくれた人に悪いから」「クレーマーだと思われて意地悪されたら困るから」と、変更するのを嫌がるとのこと。
しかし、A子さん自身はそのケアマネとどうも合わないと感じ、ケアマネとのやりとりに関する窓口を息子さんに担当してもらうことで対処したそうです。
ケアマネと要介護者、家族が、良好な関係を築けるかはある程度お互いが歩み寄る努力が必要です。そのうえで、どうしても無理な場合は、事業所に相談して変更を伝えることをおすすめします。
良いケアマネジャーとは?
私は職業柄、「良いケアマネジャーがいる事業所を紹介して」とか「良いケアマネジャーはどうやって選べばよいの」といった質問を受けることがあります。
「良い」という基準は、人それぞれ異なるので、すべての人に受けが良いという人は存在しないかもしれません。何をもって「良いケアマネ」とするかは、人それぞれや相性もあると思いますが、私自身の介護経験をふまえ、良いケアマネに求める7つのことをお伝えします。
【1】親と子の利用者側の暮らしを大切にしてくれる
【2】話をよく聞き、こちらの意見も大切にしてくれる
【3】説明がシンプルでわかりやすい
【4】介護サービスを押し付けない
【5】仕事が早い
【6】適切なアドバイスができる
【7】地域の社会資源(人脈や施設、設備、情報やサービスなど)に詳しい
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ケアマネを選ぶといっても、所属する事業所は選べますが、そこに属するケアマネの中から空きのある人を担当として割り振られることがほとんどなので、個人を指名することは難しいのが現状です。
とはいえ、女性(男性)を希望する、基礎資格の希望はあるのか、年配で経験豊富が良いのか、若くて体力がある人が良いのか、基本的な希望は聞いてもらえることはあると思います。理想のケアマネを探すためにも、遠慮なく希望を伝えることをおすすめします。
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