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健康

「湯舟につかるのは“最強健康術”」でも正しく入らなければ逆効果「42℃以上のお風呂に入ってはいけない」と専門家

 湯船につかっての入浴は、自律神経を整えてリラックス効果を得られることや、代謝を促したり、血流をよくするなど健康にとってさまざまなメリットがあげられる。しかし、それは“正しい入り方”ができてこそ。あなたのお風呂の入り方、実は体を壊すことにつながっているかもしれません。

教えてくれた人

医学博士 温泉療法専門医 早坂信哉さん

内科医 秋津医院院長 秋津壽男さん

万能効果の浴槽入浴は“最強健康術”「うつや要介護に対策にも期待」

 昨年夏、東京都市大学が3200人を6年間追跡した大規模調査の結果として、「高齢者のうつ発症予防に毎日の浴槽入浴に効果が期待される」と発表した。過去には、大阪大学の研究が浴槽入浴の頻度が高いほど、虚血性心疾患(心筋梗塞など)や脳卒中のリスクが低下すると結論づけた。

 かように、入浴で湯船につかることにはさまざまな健康効果が期待され、ピンピンコロリを叶えるためにも毎日の習慣にすべしという向きが強い。入浴研究歴25年で、これまでに4万人以上を調査してきた医学博士で温泉療法専門医の早坂信哉さんが解説する。

「湯船につかって入浴するいちばんの効果は、体が温まることによる血流促進です。人間の体は血液でできているので、血液の流れが健康を左右すると言っても過言ではない。血流がよくなれば、栄養や酸素が全身に行き渡り、老廃物を排出できるだけでなく、皮膚の再生につながるターンオーバーが活性化したり、関節の痛みがとれるなどの効果に派生していきます。かつて千葉大学との共同研究で約1万4000人の高齢者のかたを追跡調査したところ、毎日浴槽入浴する人は、そうではない人(週に0~2回)に比べて介護状態になるリスクが約30%低いこともわかりました」

 なぜ湯船につかることが、うつや要介護に陥ることを予防するのか。早坂さんが続ける。

「血流促進により疲労がとれることがいちばんに挙げられます。また、入浴によって高い睡眠効果が得られるため、メンタル面でプラスに作用するのでしょう」

◆湯船に毎日つかればうつ予防に!

 週7日以上浴槽入浴する人は、週0~6回の人と比べ、夏も冬もうつ発症割合が少ないことがわかっている。

正しい入浴法と間違った入浴法

 世界でも日常的に湯船につかる習慣があるのは日本だけで、銭湯が普及した江戸時代に定着したとされている。医学が発達した現代では、健康長寿につながるメリットが研究で次々と明らかになっているが、だからこそ、“間違った入浴法”で健康を害するようなことがあっては本末転倒だ。

 埼玉県に住む主婦の小川京子さん(66才・仮名)は、毎日湯船につかることを日課としているが、最近気がかりなことがあるという。

「気温が高くなってきましたが、シャワーですませるのは体によくないと思ってしっかり湯船につかるようにしています。でも最近、あがったときに立ちくらみがすることがあり、足元がふらついてかえって危険を感じることも。定年退職した夫が家にいるようになったストレスなんでしょうか(苦笑)」

 小川さんの話をよく聞くと、夫が家に居ることで、風呂の湯の温度が以前より高くなっているという。

「夫は熱いお風呂が好きなんです。前までは、遅く帰ってきて私の後に入っていたからお湯を足して熱くしていたみたいなんですが、いまは“銭湯のような熱い一番風呂につかりたい”って最初から温度が高くなってしまって」(小川さん)

42℃以上でヒートショックのおそれも

 気象予報サイト「ウェザーニュース」の調査(全国の男女約3万4000人が対象)によると、お風呂の温度の全国平均は約41℃で、最も多いのは42℃(27%)、次いで41℃(25%)だった。小川さんの夫のように熱めを好む人もいるだろう。しかし、ここに危険が潜むと早坂さんが言う。

「交感神経と副交感神経が効果的に作用してリラックス効果を得るための最適な温度は40℃です。41℃、42℃ともなると交感神経が高ぶってしまう。たった1℃や2℃の差で、健康に悪影響を及ぼしかねないのです」

 内科医で秋津医院院長の秋津壽男さんも重ねる。

「42℃を超えると、体がその熱に対して防衛しようと交感神経の過度な緊張が発生します。すると血圧が上がり、いわゆるヒートショックのような状態になってしまう危険がある。一方で、温度が低すぎるのもよくない。人間の体温よりも低い36℃以下だと体が温まらず、浴槽入浴による健康効果は得にくくなります」

理想は40℃のお湯に10分つかること

 最近では、半身浴で長く湯船につかってリラックスする人も増えているが、入浴時間が長ければいいというわけではない。

「理想は40℃のお湯に10分つかること。10分ほどで体温は0.5~1℃くらい上がって血液の流れがよくなります。5分入って、体を洗ってから5分入るというやり方でもいいです。長時間の入浴は保湿効果を持つセラミドという成分がお湯に溶け出してしまい入浴後に肌が乾燥してしまうため、長湯はおすすめしません」(早坂さん)

半身浴自体が浴槽入浴の効果を下げてしまいかねない

 長い時間、入浴することのデメリットについて秋津さんはこう指摘する。

「スマホや本を持ち込んで、1時間以上半身浴をするという人もいるようですが、お風呂に入ること自体が体力を消耗するので、あまり長時間はすすめません。長湯が好きな人でも、10分入ったら一旦浴槽から出て、休憩をはさみましょう」

 そもそも、半身浴自体が浴槽入浴の効果を下げてしまいかねない。

「湯船につかって得られる効果として、浮力と圧力があります。肩までしっかりつかると体重がおよそ10分の1くらいになって浮力をしっかり感じられる。これによってリラックス効果が得られます。また、水圧はむくみをとったり下半身にたまった血液を心臓に戻す役割を果たす。半身浴でお湯の量が半分になればこうした効果も半減してしまう。また、長時間湯船につかって汗をかきすぎると熱中症や脱水症状になる恐れがあります。汗がしたたるほど入るのは危険です」(早坂さん・以下同)

※女性セブン2024年6月6日号
https://josei7.com/

●露天風呂・温泉の危険な入浴法「42℃以上の熱いお湯、20分以上の長湯」【医師解説】

●命を守るお風呂の入り方5つのルール 入浴すると危険な時間帯は”朝”【医師監修】

●温泉ソムリエの資格をもつ西村知美さん自宅のお風呂公開 おすすめの入浴法と大好きな温泉地3選

●シニアにおすすめの「やめ家事」でトイレ・お風呂掃除をぐんとラクにする方法

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