心電図の「所見あり」は気にしなくてよいって本当?ベストセラー医学博士と医師が教える「健康診断結果」の正しい読み方【完全図解】
【重要項目1】身体測定
「身体測定」の欄で多くの人が気にするのはメタボリックシンドロームの判定基準となるBMI。
男女ともに25以上で「メタボ」と判定され、保健指導の対象になる。肥満は様々な病気を引き起こすリスク要因であり、数値に敏感になる人は多い。しかし、永田さんはこう語る。
「全国40代以上の健診結果が集計された厚労省のNDBオープンデータから2020年度の東京都の結果を見ると、50代男性の多くが25以上で、メタボと判定されています」
国立がん研究センターの研究結果では、男性は「BMI25〜26.9」の死亡リスクが最も低いことがわかっている。25〜30未満の「ちょいメタボ」のほうが長寿との研究結果は世界中で報告されている。50代以上の男性のうち、実に3割以上がこのちょいメタボだ。
「同じくメタボ判定の基準となる腹囲(男性で85cm未満が基準)は、50代以上の半数以上、65歳以上では6割近くに基準値超えを示す『*』の印が付いている」(同前)
永田さんは「人口の5〜6割が超えてしまう基準値は厳しすぎる。男性なら90cm未満と考えて気にしすぎなくていい」という見解だ。
【重要項目2】血圧
健康のバロメーターとして誰もが気にする血圧。健診結果をきっかけに受診し、降圧剤を飲み始める人も多いはずだ。基準値の「130」(上/収縮期)は「超えたら注意」と喧伝される“メジャー”な数字になっている。
「治療ガイドラインでは高血圧の治療は160を超えてから。140〜159ではまず食事など生活習慣の改善に取り組むこととされています。むしろ、降圧剤を服用中の人は低血圧に要注意です。低血圧状態が続いてめまいやふらつきを起こすと、転倒により骨折などのリスクがあります」(同前)
【重要項目3】血算検査
赤血球や白血球など血液中の細胞成分を調べる「血算検査」。血液検査の一部だが、この項目は読み飛ばしている人が多いのではないだろうか。
だが、上昌広医師(医療ガバナンス研究所理事長)はこの項目のヘモグロビン値を「中高年男性は特にチェックしてほしい」と説く。
「月経などで貧血症状が出やすい女性に比べ、男性は気にしない傾向がありますが、この値が下がったら要注意。健診でヘモグロビン値の低下が見られたことがきっかけで消化器系の出血が判明し、胃がんや大腸がんの発見につながる人もいます」
【重要項目4】糖尿病
血圧同様、糖尿病の診断につながる「血糖」欄も気になるところ。ただ、多くの人が代表的項目である空腹時血糖の数字を気にするが、重要なのは「もうひとつの項目」だ。内科医の谷本哲也医師(ナビタスクリニック川崎院長)が言う。
「少しの糖分摂取で簡単に変動する空腹時血糖は、必ずしも参考にならない場合もある。それよりも、赤血球に糖分がどれくらい含まれるかを示し、一定期間の血糖の平均がわかるHbA1cのほうが診断には重要。ただ、簡易的な健診の場合、そもそもHbA1cが測定されないこともあるので注意が必要です」
空腹時血糖については「前年との差」が重要だ。永田さんが語る。
「基準値をどれだけオーバーしたかより、前回比をチェックするようにしてください。昨年より数値が急激に(15以上)上がっていたら、糖尿病の悪化やすい臓がんのリスクもあります」
薬やサプリメントの影響は肝臓の数値に出やすい
【重要項目5】脂質
心筋梗塞や脳梗塞など血管系の病気を引き起こす動脈硬化のリスクを見る判断材料となるのが「脂質」だ。
「コレステロールが高いと良くない」と大雑把には理解しているものの、具体的にLDL(悪玉)、HDL(善玉)、総コレステロール、中性脂肪など項目がいくつもある。どこを見ればいいのか。
「中性脂肪は前日の食事の影響を受けやすく変動しやすいので、単体で高くても、すぐに治療に入らないこともある。悪玉には注意が必要ですが、健診の120未満という基準は厳しすぎる。140や150の場合は生活習慣の改善が先決です。200前後まで上がる場合は投薬を検討します」(谷本医師)
脂質の総和を示す総コレステロールは「無視していい」と上医師は言う。
「病気のリスクを予測するうえでは、悪玉と善玉の比率(L/H比)を気にしてほしい。悪玉のほうが極端に多い場合は『脳梗塞』などのリスクが高まります」
【重要項目6】肝機能
酒好きであれば、「肝機能」の欄にも気を配りたい。
とはいえ、肝機能の項目は見慣れないアルファベットが多く理解しにくい。そのなかで、まずはγ-GTP(ガンマ-ジーティーピー)をチェックしよう。
「紅麹サプリの問題では腎臓障害が話題ですが、本来、薬やサプリメントの影響が出やすいのは代謝や解毒を司る肝機能です。この値の上昇が見られた場合、薬やサプリの副作用を疑ったほうがいいでしょう」(上医師)
肝機能の欄ではASTとALTという似た字面の項目があるが、ここで注目すべきはASTだ。
「ALTが高い場合は脂肪肝が疑われます。ただ急ぎ確認する必要があるのはASTが高い場合。基準値を大幅に超えている場合、『肝炎』の可能性があるので病院を受診してほしい」(同前)