心電図の「所見あり」は気にしなくてよいって本当?ベストセラー医学博士と医師が教える「健康診断結果」の正しい読み方【完全図解】
【重要項目7】腎機能・尿検査
腎不全による人工透析から痛風まで幅広い疾患に影響するのが「腎機能」と「尿検査」の欄。痛風の原因となる尿酸値に目が行きがちだが、これは個人差が大きいという。
永田さんが言う。
「痛風は尿酸値が基準値の7を少し超えただけで発作が起きる人もいれば、10でも大丈夫な人がおり、個人の体質などが影響すると言われています。8くらいまでは気にしなくてもいいでしょう」
尿検査の欄は陰性(-)や陽性(+)で結果が示されるが、陽性判定でも病とは結びつきにくい。
谷本医師は尿たんぱく、尿潜血がどちらも陽性なら慢性腎臓病など重病のリスクを指摘する。
「尿たんぱくや尿潜血の陽性はいずれも腎臓の濾過機能低下を示すサインです。考えられる病気は高齢者の慢性腎臓病や腎炎、まれに腎臓がんが見つかるケースもあり得ます。
一方で両項目とも健康な人でも陽性になることがあり、その点も含めて注意が必要です」
【重要項目8】心肺機能・その他
不整脈など心疾患の発見につながる心電図検査。服を脱ぎ、身体のあちこちに電極を取り付けられる大がかりな検査のため異常があると不安になる。
だが、前述の「厚労省NDBオープンデータ」の東京都の結果では、40〜70代前半の男性のうち、3人に2人かそれ以上が「所見あり」と判定されていたという。
「心電図で『所見あり』でも、医師が聴診器を当てて問題がなければ、『経過観察』と記されるので心配しすぎる必要はありません。動悸などの自覚症状がある場合に受診を検討すればよいでしょう」(永田さん)
一方、肺や気管支などの呼吸器のほか、心臓周辺の病変を調べるために行なう胸部X線は「肺がんを見落とすことがあり、健診で『異常所見なし』と記されていても、安心はできない」(同前)という。
肺がんリスクが気になる人は、胸部X線と喀痰細胞診を組み合わせて行なう「肺がん検診」などを検討する必要がある。
便潜血の有無で大腸の病変を調べる便検査の結果も「良好」と診断されても注意が必要だ。
「大腸がんの約3割を見逃すとの研究結果もあります。健診で陰性だからといって、異常なしとは言えない」(谷本医師)
手元にある健診結果の意味を正しく知り、身体のリスクを正確に把握することが、健康長寿の第一歩になる。
※週刊ポスト2024年5月3・10日号
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