健康

血液検査でわかること<無料検診の項目と基準値>「異常値でも神経質になる必要はない」【医師解説】

 体重の約8%を占める血液には、体のすみずみまで酸素や栄養素を運んで老廃物を回収したり、菌やウイルスから体を守るなどの役割がある。そんな血液には、健康状態をはじめ、さまざまな“情報”が満載。では具体的にどんなことがわかるのか、一緒に探ってみませんか?

教えてくれた人

かなまち慈優クリニック理事長 髙山哲朗さん

慶應義塾大学病院、東京歯科大学市川総合病院、北里研究所病院などで内科医、消化器内科医として勤務後、2017年に同医院を開院。

異常値が出ても神経質にならない

 自治体が年に1回無料で行う「特定健康診査」の血液検査から、体のさまざまな状態が調べられる。

 基準値を外れた異常値が出ると、病気の可能性を考えてしまうが、「異常値に対して神経質になる必要はありません」とは総合内科専門医の髙山哲朗さん(「」内、以下同)。

「血液検査からすぐに診断がつく病気もあれば、ほかの検査と組み合わせなければわからない病気もあります。数値の判断は体質などを考慮する必要もあるため、結果を見て素人判断をせず、必ず医師に詳しく診断結果を聞いてください」

 基準値は健康な人の95%に当てはまる数字なので、5%の人には当てはまらないとされる。そのため、基準値を外れていても治療するほどではないケースもあるのだという。

 血液検査の結果を正確に診断してもらうためには、過去のデータと比較できるよう、毎年同じ医療機関で検査を受けることが大切。年に1回の習慣にするのがおすすめだ。

基準値に惑わされないで!一般的な血液検査でわかること

 一般的な血液検査で検査項目と基準値(※)、何がわかるかを紹介します。

※基準値は検査機関によっても多少異なる。

●肝機能検査

・AST(以前のGOT)|基準値:8~40

・ALT|基準値:5~40

 肝臓や心臓などに多く含まれるアミノ酸代謝酵素を調べる検査。高値の場合は肝臓疾患だけでなく、心筋梗塞などの心臓疾患の疑いも。

・γ-GTP|基準値:男性10~68、女性 6~48

 肝臓や胆道などの細胞に多く含まれるアミノ酸代謝酵素を調べる検査。高値の場合、アルコール性肝障害や胆道閉塞などが疑われる。

●脂質検査

・HDL-C(HDLコレステロール)|基準値:男性 32~87、女性40~103

 善玉コレステロールの値を表す。LDL-C(以下)を取り除くことで動脈硬化の発症を防げる。

・LDL-C(LDLコレステロール)|基準値:70~139

 悪玉コレステロールの値を表す。高値の場合、動脈硬化の危険性が。

・TG(中性脂肪)|基準値:30~150

 高値は動脈硬化のリスクを示す。

●血糖検査

・血糖|基準値:69~110

 血液中のブドウ糖の濃度を表し、高値だと糖尿病や副腎皮質・甲状腺などの内分泌異常が疑われる。

・HbA1c|基準値:4.7~6.2
 糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で存在しているかを表したもの。過去1~2か月の血糖値の平均を見て糖尿病などの診断をする。

●胆膵肝検査

・TP(総蛋白)|基準値:6.5~8.3

 栄養状態や全身状態を判断する指標のひとつ。栄養状態が悪いと低値に。

・ALB(アルブミン)|基準値:3.8~5.3

 肝臓で合成されるたんぱく質を調べる検査。栄養状態や肝機能が悪いと低値に。

・ALP(アルカリフォスターゼ)|基準値:109~321

 肝臓、腸、腎臓、腸など多くの臓器に含まれる酵素を調べる検査。肝細胞がんや胆道系の病気で数値が上がる。

・AMY(アミラーゼ)|基準値:37~125

 唾液腺とすい臓で作られる酵素を調べる検査。すい臓がんやすい臓の病気で高値に。

・TB(総ビリルビン)|基準値:0.2~1.0

 肝臓や胆道系に障害がある場合に高値になる。

●筋肉関連酵素検査

CK(クレアチンキナーゼ)|基準値:男性59~248、女性41~153

 心筋や骨格筋に存在する酵素。急性心筋梗塞、筋疾患などで上昇する。

●電解質検査

・Na(ナトリウム)|基準値:136~145

 体内の水分調節に関係する数値。脱水症などになると上昇し、腎不全や甲状腺機能低下症などで低下する。

・K(カリウム)|基準値:3.5~5.04

 カリウムは神経や筋肉の働きを調整している物質。低いと神経まひが起こることも。高すぎると不整脈を発症する可能性が。

・Cl(クロール)|基準値:100~110

 水分調節に関与。脱水症などで高くなり、嘔吐や下痢症状があると低下する。

・Ca(カルシウム)|基準値:8.0~10.0

 高値では悪性腫瘍や多発性骨髄腫など骨代謝の異常が疑われ、低値の場合は悪性腫瘍のほか、甲状腺機能亢進症、内分泌異常などが疑われる。

●腎機能検査

・BUN(尿素窒素)|基準値:7.5~20.0

 体内で生成された尿素の量を示す数値で、腎臓の働きが弱まると高値に。

・CRE(クレアチニン)|基準値:男性0.6~1.1、女性0.4~0.9

 筋肉で生成される物質で、腎臓の働きが悪くなると高値になる。

・UA(尿酸)|基準値:男性3.5~7.5、女性2.5~6.5

 細胞内のプリン体が分解してできた老廃物の量がわかる。持続的な高値は痛風のリスクを示す。

●血液学検査

・WBC(白血球)|基準値:男性3.5~9.8、女性3.3~9.5

 菌やウイルスなどから体を守る働きがあるため、炎症や感染症で高値になる。

・RBC(赤血球)|基準値:男性395~563、女性389~501

・Hb(ヘモグロビン)|基準値:男性13.5~17.6、女性11.3~15.2

・Ht(ヘマトクリット)|基準値:男性39.8~51.8、女性33.4~46.4

 RBCやHbは、体のすみずみまで酸素を運んだり、炭酸ガスを排出する役目を担う。Htは血液中の赤血球の割合を示す。低値の場合、貧血が疑われるだけでなく、再生不良性貧血、悪性腫瘍などの疑いも。

・Plt(血小板)|基準値:男性13.0~38.0、女性14.0~36.0

 血小板には血栓を作って出血を止める働きがあり、血小板の数が異常値を示すと、再生不良性貧血、白血病、肝硬変などの危険性が。

取材・文/上村久留美

※女性セブン2024年3月14日号
https://josei7.com/

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