「命を守る耐震対策」能登半島地震の被災地を目の当たりにした専門家が提唱する家具の固定法
1月1日に発生し、甚大な被害をもたらした令和6年能登半島地震。石川県警の調べによると、222人の死因は家屋の倒壊や家具の転倒などによる「圧死」が最も多く、全体の約4割を占めるという。つまり、家具の転倒落下、ガラスの飛散を防げば、命を守り、けがからも身を守れる可能性が高いということだ。そこでまずは専門家に家具の転倒対策について話を伺ったのでご紹介する。
教えてくれた人
国崎信江さん/危機管理アドバイザー・危機管理教育研究所代表
女性や生活者の視点から防災、防犯、生活上の事故防止など身近にある危険から身を守る方法を提唱。
鈴木ひろ子さん/防災士・防災アドバイザー
DIYアドバイザーの資格も持ち、「防災DIY」代表として日常生活の中でできる防災対策の普及活動を行う。
命を守る環境作りが重要
令和6年能登半島地震の被災地に支援に向かった危機管理アドバイザーの国崎信江さんは、古い建物の多くが倒壊しているのを目の当たりにして言葉を失った。
「地震対策の最重要事項は、家そのものが震度6~7の地震にも耐えられるかどうかを調べ、必要に応じて耐震強化を行うことです。そのうえで、家具の転倒などで被害を受けないよう、家の中においても充分な対策をし、命を守る環境に整える必要があるのです」(国崎さん・以下同)
まず知っておくべきは家具の配置
まずはものを減らして扉のついた棚にしまい、転倒も落下もしない状況を作ることが先決だが、それだけでは不充分。
「寝ている場所に家具が倒れてこないよう配置したり、廊下や部屋の出入り口、玄関付近などの避難経路の妨げになる場所に家具を置かないことも大切です」
家の形により家具が倒れやすい方向があることも知っておきたい。
「家の形を背の高いたんすに置き換えて考えてみてください。たんすは前後に倒れても、横に倒れることは考えにくい。つまり、横に長い家の場合、長い方の壁に沿って家具を配置すると倒れやすく、短い方の壁に沿って置くと倒れにくいのです。集合住宅の場合は建物全体の形で考えること。
自分の居住スペースが縦長でも、建物全体が横長なら、建物の縦方向の壁に沿って家具を置いた方が倒れにくくなるのです」
重いものは下に置き家具の固定は必須
家具は背の高いものほど倒れやすいが、重いものを下に、軽いものを上に収納すると重心が下がって安定感が増す。これをL字金具等で壁に固定できれば安心だが、取りつけ位置の判断が難しい。自身も阪神・淡路大震災で被災経験のある防災士で防災アドバイザーの鈴木ひろ子さんが解説する。
「賃貸だと、壁に穴をあけることができません。持ち家の場合でも、壁紙の貼ってある石膏ボードの内側にある柱を見つけてその位置に固定する必要がありますが、それがどこなのか、専門家でないと位置を見定めるのは困難です」
地震における家具類の転倒・落下・移動が原因のけが人の割合
■熊本地震(高層マンション)/ 2016年・最大震度7…40.0%
■熊本地震(一般住宅)/同上…29.2%
■岩手・宮城内陸地震 / 2008年・最大震度6強…44.6%
■新潟県中越沖地震 / 2007年・最大震度6強…40.7%
■福岡県西方沖地震 / 2005年・最大震度6弱…36.0%
出典:東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック―室内の地震対策―」をもとに、編集部が2005年以降の地震を抜粋して作成。
家具の固定方法「段ボールや発泡スチロールを隙間に挟む」
鈴木さんのおすすめは、身近にある軽くて丈夫な箱を使って天井と家具のすき間を埋めて固定する方法だ。
「段ボールや発泡スチロールをすき間にはさむ方法なら、難易度が低い。とはいえ地震対策は、どれだけ厳重に行っていても100%安全とは言い切れません。
それでも家具が倒れてくるまでの時間が稼げれば、その間に避難することができます。二重三重の対策を施せば、より強度が高まります」(鈴木さん)
撮影/菅井淳子 イラスト/勝山英幸 取材・文/山下和恵
※女性セブン2024年3月14日号
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