兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第241回 オニの居ぬ間の息抜きツガエ】
若年性認知症の兄と2人暮らし、その生活の一切をサポートしているライターのツガエマナミコさん。兄の症状が進行し、施設入居を申し込んだものの、入居を断れられ、気持ちも体も休まることがない日々です。そんな中、ショートステイに兄が出かけ、つかの間の休息日がマナミコさんにやってきました。
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兄、ショートステイ。わたくし、幼なじみと居酒屋
兄が4泊5日のショートステイに行っている間に、6時間半というロング一人カラオケを全力で楽しんだツガエでございます。いや~、歌いまくりました。演歌からボーカロイドまで自己満足重視でわがままに歌い散らかしてまいりました。やはりカラオケは一人で行くに限ります。
お店を出る頃には月夜の街。ほぼ1日をカラオケ店でつぶす背徳感が妙に心地よく感じられました。しかも、その足で小学4年生からの幼なじみと待ち合わせて5ヶ月ぶりにいつもの居酒屋へ直行です。なんでもない世間話を焼き鳥が焼ける炭火の匂いと煙で白んだ空気の中でするのが、これまた極上の背徳感でして・・・。
わたくしはほぼお酒を飲まないのですが、幼なじみがだんだん酔っぱらっていくのを観察しながらネギマやツクネを頬張る時間が好きなのでございます。ご両親(90歳前後)と同居する彼女もいろいろ溜まっているようで、互いに愚痴っぽくなるのもいつものこと。正解を求めるでもなく、ああだこうだと言っていることが、箱をトントンと揺らしてデコボコに荒れた表面を平らにするような効果があるように思います。
でも贅沢をしたのは、その1日だけで、兄のいない食事は残り物ばかり。「賞味期限切れのものや残り野菜をとりあえずお腹に入れてしまえ」とせっせと摂取いたしました。
この1週間で一番のビッグニュースは、1月2日の羽田空港での飛行機衝突事故に、知っているカメラマンが乗っていたということでございます。最近取材で会った別のカメラマンから「あの飛行機に〇〇さんが乗っていたって聞きました? 北海道の実家に行って帰ってきたところで、家族全員で乗っていたそうですよ」と聞いてあのニュースが急に我が事のように感じられました。あの事故では、奇跡的に旅客機の乗客は全員無事だったのですが、人はいつどうなるか分からないということを、また改めて思わされました。
その話を、飛行機をよく利用する先の幼なじみにしたところ、「でも飛行機事故の確率は車の事故より圧倒的に低いんだよ。もし当たっちゃったらしょうがないよ」とあっけらかんと言い放ち、近々また飛行機に乗る話をしておりました。確かに、歩道を歩いていても車に突っ込まれるのですから、飛行機を避けてもあまり意味がございません。還暦を過ぎると(還暦以下の方々も?)、みんな肝が座ってくるのかもしれません。
さて、ショートステイからのご報告では、兄は特別問題なく過ごしたようで、次回も利用させていただけそうでございます。「ショートステイは何カ所か使っていたほうがいい」というケアマネさまからのご提案で、今回のショートステイはお初の施設。事前のお打ち合わせで排泄の心配を何度も申し上げたので、頻繁にトイレ誘導していただいたようでございます。夜の寝つきはやはり浅めなようで、深夜の巡回ではベッドで寝ていたり、椅子で休んでいたりしていた旨が記されていました。報告書には毎日の体温、血圧、脈拍、毎食の食事量と水分量の記録もあり、施設によって微妙に違うものだなぁと思いました。
両足にすこし浮腫みがあるという記載もありました。わたくしも兄の足の色が悪い日があるなと思っていたので、自分の気のせいだけではないと確信いたしました。今は普通に戻っているので浮腫みが頻繁になってきたらデイケアでの診察をお願いしようと思います。
昨日の朝は兄の特大お便さまがお出ましになりました。ショートステイ中はなかったと聞いたので、かれこれ10日振りぐらいのお便さまと思われます。形のしっかりしたタイプで紙パンツの中から出ることはなく、後始末も簡単でございました。ただ、巨大な上に粘土のような質感だったのでトイレで流れなかったのには爆笑。2~3つに割ってやっと流した次第でございます。やはりお便さまはほどよい固形が一番! これからもこうしたお便さまでありますように願うばかりでございます。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性60才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現65才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ
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