兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし「第237回 ある朝、炊飯器に…」
ライターのツガエマナミコさんは、兄が若年性認知症を発症してから、8年以上にわたり生活の一切のサポートを続けています。症状が進行する中、在宅での介護に限界を感じ施設への入所を申し込んだものの、不可となってしまいました。理由は、兄が排泄コントロールをできないこと。しかしそれこそが、マナミコさんを悩ませ、日々の暮らしを脅かしていることに他ならないのです。

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どうやら兄はトイレでの排泄が嫌いらしい
先日、電車で座席に座っていると、高級住宅街で知られる駅から年配のご婦人が乗車され、わたくしの隣にお座りになりました。たまたま和装だったわたくしに好感を持っていただいたようで、にっこり微笑まれ世間話が始まりました。「私、足腰だけは丈夫なの」「79歳になりますのよ」「お直しに出したお洋服を取りに行くの」と少女のようにあれこれお話しして、銀座駅で降りて行かれました。後ろ姿を目で追いながら”お上品”という言葉はこのご婦人のような人のことを言うのだわと思い、少々浮世離れした素敵な時間をいただいた気がいたしました。見ず知らずの人間に話しかける人なつこさ、人への好奇心をわたくしは失くしてしまったな…とわが身を振り返ったツガエでございます。
そんなある日、朝起きて掃除機を掛ける際、キッチンの炊飯器の棚の下に水たまりを発見いたしました。「またこんなところでオシッコしたんか!」と