エリザベス女王、アガサクリスティ等の長寿の秘密を探る 共通するのは「規則正しい生活と仕事への情熱」
世の中に大きな影響を与えた偉人の中には年を重ねても若々しく、精力的に活動している人も多い。成功をおさめた先人の生活習慣には、きっとあなたが真似できるエッセンスがあるはずだ。「あの人のように生きて死にたい」と思えるような健康長寿を作る秘訣を偉人が生きた“最後の5年間”から探ってみた。
教えてくれた人
永山久夫さん/食文化史研究家、佐々木欧さん/医師・秋葉原駅クリニック、多賀幹子さん/ジャーナリスト、渡邊宏行さん/精神科医
平安時代の宮仕えは足腰が鍛えられる健康的な現場だった
どんなに情熱があっても、体が思うように動かなければ充実した「最後の5年間」を過ごすことはままならない。
だからこそ彼女たちは体力作りに余念がなく、それは平安時代に『枕草子』を記し宮仕えが長かった清少納言も例外ではなかった。
「平安時代における女官や女房といった宮仕えの女性たちは重量のある十二単(ひとえ)を着て、宮廷内の長い廊下を着物を引きずって歩いていたので、無意識のうちに体力作りができていた。机に向かって仕事をしていても、喉が渇いたときやお手洗いに行きたいときは長い板の間を歩かなければならない。普段の勤務をこなしているだけで自然と足に筋肉がつくんです。そうした動作は、年を取ってからの骨折予防にもつながったはずです」(日本の食文化史研究家・永山久夫さん)
エリザベス女王が楽しんだ「乗馬」の効果を専門医が解説
現代で活躍した偉人たちは積極的にスポーツを生活に取り入れており、日本人として初めて国連難民高等弁務官に就任した緒方貞子さん(享年92)は学生時代から長くテニスを趣味とし、全日本選手権のシングルスでベスト16、ダブルスでは全国準優勝を果たした腕前だった。
2022年に96才で旅立つ直前まで辣腕を振るったイギリスのエリザベス女王も、心配する医師をよそに死の直前まで乗馬を楽しんだ。
秋葉原駅クリニックの佐々木欧医師は運動そのものに加え、それに伴う「触れ合い」の効果に注目する。
「体を動かすこと自体が健康に寄与することは当然ですが、特にテニスなど集団で行うスポーツは地域社会への参加など世代や境遇を超えた社会との接点を増やし、認知機能の維持に役立ちます。馬と心を通じ合わせる必要のある乗馬は、普段使わない感性を刺激し、脳の動きを活発化させる効果も期待できる。運動が苦手であれば、動物や植物と触れ合おうとするだけでも脳は活性化します」
「規則正しいルーティン」が健康長寿を作る
運動習慣に加え、晩年まで活躍した女性偉人が共通して持っていたのは、いくつかのルールを設けながら規則正しく生活すること。
<朝遅く起きてはダメ。夜にはなんの面白いことも起こらない>
こう語ったのは20世紀におけるファッション界で最も影響力が大きいとされるココ・シャネルさん(享年87)で、晩年は夜の9時に就寝し、朝の7時に起床して午後になると自分の店に顔を出して仕事をするのが日課だったという。
エリザベス女王もまた、厳密なルーティンを守りながら生活していた。英王室に詳しいジャーナリストの多賀幹子さんが解説する。
「生前のエリザベス女王は起床する時間から夜眠るまで、一日の流れはすべて決められており、それに則った生活を送りながらも常に新しい情報をアップデートする柔軟さを持ち合わせていました」
英メディアの報道によれば女王は毎朝7時半に起床し、カーテンを開けて日光を浴びるのが日課。その後ラジオを聴きながらアールグレイティーを飲み、朝風呂に入るのがお決まりだったという。
精神科医の渡邊宏行さんが解説する。
「毎朝同じ時間に起き、朝日を浴びることは健康長寿を体現するにあたって重要なポイントです。起床時間がまちまちであれば、体内時計にズレが生じ、時差ぼけのような状態になってしまう。加えてエリザベス女王が習慣にしていた朝風呂も、血流が促され、体温上昇とともに交感神経が優位になることで目が覚めて頭もさえるというメリットに富んだ習慣だったといえるでしょう」(渡邊さん)