”幸せを招く”家の間取り・環境とは?実例に学ぶ「心によい影響を与える家」5つの要素
事故物件・訳あり物件と呼ばれる家は相場より家賃が安くなるが嫌がる人は多い。しかし、「建築医学」という手法を取り入れれば、どんな物件でも“幸せを招く”価値ある不動産に再生することが可能だという。建築医学が提唱する「心によい影響を与える家」とはどんな家なのか?現在の環境でもできる工夫を紹介する。
教えてくれた人
昆佑賢(こんゆうけん)さん/「アウトレット不動産」代表。一般社団法人日本建築医学協会幹事長。建築医学の考えに基づき、病気や不幸を招いた事故物件・訳あり物件などを価値ある不動産に再生している。著書に『幸せになる家 不幸になる家』(アルソス新書)がある。https://outlet-estate.biz
色と形を変えることで脳は落ち着きを感じる!
具体的にどんな家作りや、部屋作りをすれば健康的に過ごせるようになるのだろう。
「建築医学を提唱した松永修岳さんは、オフィスビルや住宅等のコンサルタントを行うなかで、人間にとって無意識に受ける『環境ストレス』(気温や湿気、有害物質などの外部ストレス)の危険性に着目しました。そこで、環境を取り入れた代替療法の第一人者である帯津良一さん(帯津三敬病院名誉院長)の知見を得ながら色や光が脳に与える影響、犯罪者が生まれる環境など、国内外の調査文献をつぶさに研究し、健康に導く家作りの要因を確立しました」(昆佑賢さん・以下同)
要因は無数にあるが、なかでも重要視しているのが視覚情報だ。それに基づき、“心地よい家”を目指すために必要なのが、下の5項目となる。
“心地よい家”の5要素
【1】色彩
白い壁紙(クロス)一色ではなく、部分的に違う色を取り入れる。
【2】形
部屋のどこかに曲線、または丸いものを取り入れる。
【3】照明
蛍光灯をやめ、温かみのある電球色に変える。
【4】素材
壁材は、空気を通す自然素材が理想。家具も木製を選びたい。
【5】間取り
玄関と階段を離すなど、動線を工夫する。洗濯機を目隠しする。
生活感を減らすことで“心地よい家”に様変わり!
「たとえば、リゾートホテルと自分の家、どちらが心地よいと感じますか? “非日常”を提供するリゾートホテルは、疲れを癒すために行く場所。当然ですが、生活感がなく、ストレスを感じる要素が少ないのです。 もちろん、こんな家を建てるのは非現実的ですが、先述したとおり、生活感が増えるほど視覚情報が増え、ストレスが高まる。せめてリビングや寝室など、くつろぐための場所は生活感を減らし、心地よく整えることをおすすめします」
【1】の色彩とは、壁や家具の色のこと。なかでも白い壁は落ち着かないというが、白い壁の家も多いと思うが…。
「おっしゃるとおり建売や集合住宅は、ほとんどが白壁です。白が悪いのではなく、白が適さない部屋もあるのです。たとえば、リビングや寝室は、薄いイエローやオレンジ、ベージュ、薄いピンクなどが、交感神経を鎮めて落ち着きを与えます。一方で、青は集中力を高める色。書斎や子供部屋の壁に取り入れると、仕事や勉強がはかどります。ただし、濃い色では圧迫感があって逆に集中力をそいでしまうので、淡いパステルブルーがおすすめです。一面だけ違う色に変えるだけでも効果があるのですが、壁紙を変えられなければ、同じ色合いの風景画を飾ったり、椅子などの色を変えるといいですね」
【2】は、曲線のこと。
「建築医学では、自然界にあるものは『曲線』であり、これに即した形を取り入れることが安らげる環境であると考えます。私の自宅は13年前に建てたものですが、玄関のたたきや部屋の入り口など、随所に曲線を使いました。ただ、一般的な間取りに比べ、曲線を用いるのは正直無駄が多く、コストもかかります。それを補うのが、家具や装飾品に丸いものを取り入れる方法です。たとえば、床に丸いラグを置くとか、丸みのあるオブジェを飾るのもいいですね。また、丸いダイニングテーブルは、食卓を囲む団らんを想起させるおすすめのアイテムです。
→“不幸を呼ぶ家”の特徴【チェックリスト】実例ビフォア・アフターで見る“病は家から”…「建築医学」手法で幸せの家にする方法