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複合施設に入っているサ高住と介護付有料老人ホーム【まとめ】

「高齢者向け施設」と聞くと、高齢者だけで集まって暮らすイメージを持つ人も多いと思うが、必ずしもそうではない。新しく作られる複合型の施設に高齢者向けの住まいが入ることも増えてきた。

 オープン間近の話題の施設や評判の高いホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ、今回は複合型をコンセプトにした建物に入っている「子育て支援住宅を併設」「多世代型のコミュニティハウス」「タワーマンションの中にある都市型」といった特徴を持つサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)と介護付有料老人ホームをピックアップしてご紹介していく。

* * *

子育て支援住宅を併設した多世代交流型のサ高住「マストライフ古河庭園」

 サ高住を首都圏、名古屋、関西で展開している「積水ハウスグループ」。住宅メーカーとしての知見を活かしてサ高住の実績を積み重ねていく中、2012年に一棟の建物内にサ高住と子育て支援住宅を併設した多世代交流型賃貸マンション「マストライフ古河庭園」を東京都北区に建築し、運営している。

 取材に訪れた日の午後にも、学校帰りの子どもが入居者と自然な形で生活を共にしている様子を目にした。子育て世代とその子どもたち、そして高齢者がほどよい距離感で生活を共にしている。やはり子どもの声が聞こえると賑やかで活気があり、高齢者だけの住まいとは異なる雰囲気を感じた。

 マストライフ古河庭園に入居する高齢者の平均年齢が80代ということもあり、1つの建物内で子育て中の家族が同居する事例はまだ少ないようだが、徒歩1分のところにある系列のサ高住「グランドマスト西ヶ原」に住んでいる入居者の子どもと孫が、マストライフ古河庭園の子育て家族向けの賃貸マンションに住むといった事例は出ているという。今後、このようにして家族が同じ建物内に住む事例も増えていくのかもしれない。

 運営会社「積和グランドマスト」で企画開発課課長を務める高橋宏史さんによると、高齢者だけしかいないサ高住に引っ越すよりも、子どももいるところのほうがいいということで入居を決める人もいるのだという。子どもと日常的に接することで、生活に活力が出ることも多いそうだ。

 世代間のコミュニケーションを促す役目を果たしているものの1つが屋上菜園。サツマイモの苗を植えたり、収穫祭を行うことで話すきっかけが生まれ、収穫物を分け合うといった交流が生まれているという。他にも1階の食堂スペースを使って開かれるプロの音楽家が演奏をするクリスマスパーティーや納涼祭、ハロウィンパーティーといった定期的なイベントもあり、多世代の入居者同士で盛り上がるのだそう。

 高橋さんによると、通常の高齢者しかいないサ高住ではもの足りず、日常的に多世代での交流を求めるニーズが増えているとのこと。同社ではこれらを踏まえ、同様の多世代交流型サ高住として2018年5月に「グランドマスト勝どき」(中央区)、10月に「グランドマスト江古田の杜」(中野区)をオープンさせている。

→子育て支援住宅を併設した多世代交流型のサ高住

→住宅メーカーが手がけた広くゆったりと住めるサ高住

多世代型コミュニティハウスに入る介護付有料老人ホーム「ライフ&シニアハウス日暮里」

「ライフ&シニアハウス日暮里」は、多世代型の「日暮里コミュニティハウス」に入っている。日暮里コミュニティハウスは12階建てで、4~6階が介護型の「シニアハウス」、7~11階が自立型の「ライフハウス」だ。1階にはフロント、食堂、多目的室、テナントとして保育園とクリニックがあり、12階に展望風呂という構成になっている。そして、2~3階に自主運営型の賃貸住宅である「コレクティブハウスかんかん森」がある。

 日暮里コミュニティは荒川区が中学校の跡地を地域貢献のために活用すべく、事業者選定をし、生まれたという経緯がある。ライフ&シニアハウス日暮里を運営する「株式会社生活科学運営」は、1983年に任意団体として設立され、地域コミュニティを創造することを企業理念として住まいづくりを行ってきた。ライフ&シニアハウス日暮里には、自立型の「ライフハウス」と介護型の「シニアハウス」が併設されている。自立の状態でライフハウスに入居し、その後24時間の介護が必要になった場合は、シニアハウスに住みかえることができるという。

 ハウス長を務める廣神健二さんは、多世代型の住まいには様々な利点があると語る。高齢者にとってだけでなく、核家族化が進んでいる中、高齢者と接する機会は保育園の子どもにとっても貴重な経験になるそうだ。

「コレクティブハウスかんかん森のイベントに顔を出される入居者もいらっしゃいます。保育園の子どもたちと、朝は当たり前のこととして挨拶をしますし、日常的な交流がありますね。一日中、保育園の子どもを眺めている方もいらっしゃいますよ。ちょっと危ないなと思ったら子どもに声をかけたり、一緒に遊んだりと常日頃から保育園のお子さんたちと関わりを持っています」(廣神さん)

 コレクティブハウスかんかん森の居住者の坂元良江さんによると、コレクティブハウスとは、共用空間を持ち、時々は一緒に食事をするなどして人と人とがゆるやかにつながるコミュニティをつくりながら、より心豊かな暮らしをする住まいのことだという。

「家族で住んでいるのは6組で、そのうち5組は小さなお子さんがいらっしゃいます。単身者の中には学生さんもいらっしゃいます。ライフハウスの方々とは一緒にお食事をしたり、イベントに参加してくださったりと交流がありますよ」(坂元さん)

 訪れてみて感じたのは、多世代が暮らすコレクティブハウス、そして保育園があることによって、施設全体がオープンな雰囲気になっていることだ。このことは、入居者の家族にも安心感を与えているという。

「高齢者施設に対して閉鎖的なイメージを持っている方も多いですが、多世代で交流をしている様子を見ると、ご家族も安心されるようです。近隣の方々にも日暮里コミュニティとして親しんでいただけています」(廣神さん)

→多世代が共に暮らしを営む介護付有料老人ホーム<前編>

→多世代が共に暮らしを営む介護付有料老人ホーム<後編>

タワーマンションで都心の利便性を享受できる「ココファン勝どき」

 勝どき駅から徒歩6分の「ココファン勝どき」。東京・中央区の公募事業で選定された「学研ココファン」が手がける都心型のサ高住だ。コンビニや飲食店などの商業施設が併設されており、交通の便もいいので都心の利便性を十二分に享受できる。

 ここには通所(デイサービス)と宿泊(ショートステイ)、訪問介護の3つの機能を持つ小規模多機能型居宅介護事業所(小規模多機能)が併設されている。小規模多機能は主に近隣の在宅高齢者世帯を対象としており、ココファン勝どき全体で、地域の高齢者に住まいと介護サービスを提供している。

 学研ココファンの代表取締役社長・五郎丸徹さんは「多世代交流による豊かな暮らしを実現したい」と語る。学研ココファンは高齢者施設における多世代交流に以前から取り組んでおり、早稲田大学と共同研究を行った実績もある。ココファン勝どきでもその取り組みを行っていくという。また、ココファン勝どきの所長・井上和彦さんは「スタッフの質を個人差なく高いレベルで保ち、理念に基づいたケアを提供すること」を重視していると語ってくれた。

 2010年から2025年でみると、東京都の75歳以上の人口増加数は76.2万人と推計され全国1位。増加率でみても62.6%と全国8位。都心ではなかなか実現しなかったココファン勝どきのようなサ高住は今後ますますニーズが高まることが予想される。本人や家族が都心に住んでいる場合は、こういった複合型の建物も老後の住まいの選択肢に入れてみてもいいかもしれない。

→タワーマンションの中にある都市型サービス付き高齢者向け住宅

 いかがだっただろうか。複合施設に入っているという共通点はあるが、多世代で交流できるように設計されていたり、都心の利便性を享受できるなど特徴はそれぞれ。今後はますます、高齢者だという一面だけではなく、個々人の今までの生活や社会環境の変化に合わせた住まいが求められていきそうだ。

撮影/津野貴生

※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
※過去の記事を元に再構成しています。サービス内容等が変わっていることもありますので、詳細については各施設にお問合せください。

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