熱帯夜にぐっすり眠るメソッド 自分に合った理想の睡眠時間を診断!【専門家監修】
毎年夏になると猛暑が続く日本。夜になっても気温が高く、暑くて寝苦しい毎日を過ごしている人も多いはず。寝つけず睡眠不足になったり、逆に冷房の効きすぎで体を冷やしてしまうと体調を崩してしまうため「睡眠の質」をいかに高めるかがポイントになる。暑い夏でも快適な睡眠を確保するために、上手な「生活リズムの整え方」を専門家に聞いた。
「適切な睡眠時間」は人それぞれ
睡眠不足は、肥満をはじめとするさまざまな病気を招く。米コロンビア大学の研究によれば、充分な睡眠を確保できている人と比べると、睡眠時間が5時間未満の人は50%、4時間未満の人は73%も肥満率が高かった。次いで代表的なのが、アルツハイマー型認知症リスクの上昇だ。
「アルツハイマー型認知症の原因の1つは、脳の中に『アミロイドβ』という“ゴミ”のような物質がたまることだと考えられています。これは眠っているときに脳から排出されるため、睡眠不足や浅い睡眠を繰り返していると脳に“ゴミ”がたまり、脳神経が衰弱していくのです」(中部大学生命健康科学研究所特任教授の宮崎総一郎さん・以下同)
事実、睡眠時間が5時間未満だと、認知症リスクが2.64倍、死亡リスクは2.29倍にもなることがわかっている。だが、睡眠時間は長すぎてもいけない。
「毎日10時間以上眠っている人の認知症リスクは2.23倍、死亡リスクは1.67倍にもなります」
では、理想の睡眠時間とは―― その基準は人によって異なり、それは生まれつき決まっているというのが、現在の考え方だ。
国立精神・神経医療研究センターの「ミュンヘンクロノタイプ診断」を使えば、自分に必要な睡眠時間を診断することができる。
簡単な質問に答えるだけで理想的な睡眠時間がわかる「ミュンヘンクロノタイプ診断」
ウェブサイト:ミュンヘンクロノタイプ質問紙(MCTQ)日本語版
「いつでもどこでも眠れる」は危険サイン
もしあなたが「昼夜問わず、いつでもどこでも、すぐに眠れる」というなら、それは“特技”などではなく「睡眠負債」がある証拠だ。睡眠負債とはその名の通り、毎日の睡眠不足が借金のようにたまっている状態のこと。すると認知症や肥満リスクの上昇だけでなく、日中に本人も気づかないほどの短時間(15秒未満)眠りに落ちてしまう「マイクロ・スリープ」という現象も起きやすくなる。広島大学の研究では、トラックによる運転事故はほとんどがマイクロ・スリープの前後に起きていることがわかった。睡眠不足は自分の健康だけでなく、他人の命までおびやかす危険性がある。
「睡眠負債の返済方法は早く寝る以外にありません。休日だけをずっと眠って過ごしたところで、睡眠の前借りはできない。それどころか、平日と休日の起床時間のズレが大きいと、時差ボケが起きて体内時計が乱れ、結果的にその日の夜の睡眠の質が落ちる。ベストは“いつもより1時間早寝して、1時間遅く起きる”ことですが、難しければ30分でもいいので、早く布団に入る習慣を続けてください」(昭和西川の代表取締役副社長で睡眠研究家の西川ユカコさん・以下同)
→深い眠りを促す7つの生活習慣「死亡率が最も低いのは7時間睡眠の人」【睡眠専門医監修】
睡眠の「シン・ゴールデンタイム」は入眠から3時間
以前は「夜10時~深夜2時は成長ホルモンが分泌される“睡眠のゴールデンタイム”」などともいわれたが、これもいわば“都市伝説”。最新研究で明らかになった真のゴールデンタイムは「寝ついてから3時間」だ。
「成長ホルモンは体の各部位に働きかけて、内臓や肌、筋肉、骨など全身の疲労を回復させ、修復するほか、脂肪の燃焼や免疫力の向上など全身の健康をサポートします。最新の研究では、時間に関係なく、入眠から3時間の間にもっとも多く分泌されることがわかっています」
入眠時間にとらわれてストレスを抱えるのではなく、睡眠時間を確保するための時間管理を意識してほしい。
「眠るための時間管理」で1日のスケジュールを見直そう!
【OK例】
睡眠時間のほか、仕事、食事、入浴など「絶対に動かせないこと」を軸に一日のスケジュールを決める。
・6:20 起床
・7:50 出発
・9:00 仕事
・18:00 仕事終了+出発
・19:00 帰宅
・20:00 夕食
・21:00 後片付け
・21:30 入浴
・22:00 自由時間
・23:00 就寝
【NG例】
起きる時間以外の過ごし方を決めていないと、ムダな時間が増える!
・6:20 起床
・7:50 出発
・9:00 仕事
・18:00 仕事終了+出発
・19:00 帰宅
・19:30 夕食+スマホチェック+テレビ鑑賞
・23:00 YouTube鑑賞
・25:00 就寝
出典:西川ユカコ『最強の睡眠』
50代以降の夫婦は寝室を分けたほうが良い!
熱帯夜が続いているいまの時期は、寝室の温度は26℃前後にするのがベスト。
「室温以上に大切なのが湿度。睡眠中はコップ1杯分ほどの汗をかくといわれますが、寝室がジメジメして汗が乾きにくいと深部体温が下がり切らず、眠りが浅くなってしまう。湿度が60%以下になるよう、ぜひ除湿機を活用してほしい。ただし、室温や湿度の感じ方は年齢や性別で違いがあります。できれば、50代以降は夫婦で寝室を分けましょう」(宮崎さん・以下同)
音楽やアロマも効果的だが、眠るときに音や香りがあるのが気になるようなら、無理に試す必要はない。
眠る前の読書も、眠りに少なからず影響する。読書にはその日のストレスを解消させる効果があるが「ドキドキ、ハラハラするような物語」と「電子書籍」は逆効果だ。
「同じ本を紙と電子版で読んで脳波を測定する実験をしたところ、電子版を読んだ人は、メラトニンの分泌が2時間も遅れました。寝ついてからも、眠りが深くなるのが10分遅くなったのです。内容も、寝る前はミステリや冒険小説は避けて、落ち着いた内容のものを選ぶのがいいでしょう」
昼寝は「30分未満」で「15時まで」がマスト
夜の寝つきをよくするのに「昼寝」が功を奏することもある。短い昼寝でリフレッシュすると、午後を活動的に過ごせるようになり、適度に体が疲れることで、夜の寝つきがよくなるのだ。
「実際、午後に30分ほどの昼寝をする人は、昼寝をしない人よりも夜の睡眠効率がよくなることがわかっています。ただし、昼寝はあくまでも“仮眠”にとどめること。長時間眠ったり深い睡眠に入るとかえって疲れてしまったり、夜の睡眠を先取りしてしまうことになる。50代女性なら、20分以上30分未満の昼寝を、午後3時までに終わらせること。横にならず、座ったまま机に伏せるなど、熟睡しにくい体勢がおすすめです。昼寝から起きたら外に出て、日光を浴びるとスッキリ目が覚めますよ」
教えてくれた人
宮崎総一郎さん/中部大学・生命健康科学研究所特任教授、西川ユカコさん/昭和西川・代表取締役副社長。睡眠研究家
写真/PIXTA
※女性セブン2023年8月3日号
https://josei7.com/
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