100均で最近買った介護グッズ。自分でできる喜びを奪わず、日々を過ごせるように【実家は 老々介護中 Vol.21】
80才になる父は、がん・認知症・統合失調症と診断され、母が在宅介護をしています。美容ライターの私は、たまに実家を手伝っています。緩やかに見えた父の衰えも、ガクン! と悪くなるときが来る気配。介護費用が気になり財布の紐が硬い母は、100均で拭き取りシャンプーシートなどの身だしなみグッズを購入。父が心地よく過ごせるよう気を配っています。
筋力が弱ってきても、残された機能を奪わない
「お父さん、手足に力が入らなくなってきてるよね」と母。
歩幅が10センチくらいのツツツツツツ…という歩き方ですが、調子のいい日には支えられながら少し歩けたのに。もう補助しても立ち上がれないことが多くなりました。車椅子に座っても不安定で長く座っていられず、日中はかなりずっこけたポーズでソファに座って過ごしています。
「できることは自分でやってもらわないとね。リハビリになるでしょ」と、母はのんきな様子を装って、ヘルパーさんやケアマネさん と100円ショップで買った介護グッズの話をしています。100均の戦利品のひとつ、テーブルやチェストの角に貼った衝撃ガードは、もし転んでぶつかったとしても怪我しないようにするもの。貼ってあると父母ともに安心するようです。
「それから、今日は暑いからこれね」と母が繰り出したのはシートシャンプー。髪と頭皮の皮脂や汚れを拭き取り、シャンプーできないときにサッパリするウェットティッシュです。似た物をドラッグストアで買っていたのですが、100均の手軽さに負けたよう。週に1回のお風呂までの間、スッキリした気分が味わえればそれでいいのかも。腕が上がらなくなってきた父が自分の頭を頑張って拭いているのを見ると、確かにリハビリになりそうです。
もうひとつ父のお気に入りのひんやりスプレーは、缶に入ったガス入りのもの。服の上からシュッと吹き付けると冷たくて気持ちいいんですね。換気をして室内が暑くなるとシュッシュッとして、出掛けられないながらも、夏を感じて楽しんでいる様子。スプレーが出るまで指に力を込めて押すのが、今の父には大仕事のようで、かなり頑張っていました。
意外だったのが、チーン! と音が響く卓上の呼び鈴まで置いてあったこと。家中によく響き、母がトイレに入っていても聞こえて、父が呼んでいるとわかり重宝なのだそうです。父がテーブルのリモコンを取りたいときや、ちょっと体の向きを変えたいときなど、すべてやってあげるのではなく手を貸すのみにしているそう。できることを奪わないよう気をつけているということです。
「家で過ごせるだけで100点満点よ。施設に入ったら、今も面会が1回10分だってよ。言われてたよりも長生きしてくれて、痛みもなくて、本当にありがたいじゃないの」と母。
介護サービスを受けることにしたとき、ケアマネさんが父母と話して作ってくれた「居宅サービス計画書」(ケアプラン)にも、父の要望として「自宅で妻との生活を続けていきたい」と書いてありました。父母ともにギリギリまで家で過ごしたいのです。
歩けないし、長く座れないとすると、いよいよ、次のフェーズが来てしまうのかな。来るんなら来ればいい、いつかは来るんだから、と自分に言い聞かせているところです。
文/タレイカ
都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライター。がん、認知症、統合失調症を患う父(80才)を母が老々在宅介護中のため、実家にたびたび手伝いに帰っている。
イラスト/富圭愛