腸が若返る食事「おすすめは地中海食と和食」抗生物質や胃薬の飲みすぎは要注意
ヨーグルトで善玉菌を直接摂取するのも効果的だ。だが、コンビニなどで売っている200gほどの小さいパックのものでは、まったく足りない。川本さんは「ヨーグルトは1日最低200g」と話す。
「大きなパックのヨーグルトは1つ400gありますが、1日で食べきってかまいません。ただし消化不良を起こさないよう、1日のうち数回に分けてください。無糖タイプに、整腸作用のあるはちみつや果物を入れれば、さらに効果的。特にオリゴ糖の多いバナナ、水溶性食物繊維が豊富なキウイがおすすめです。ビフィズス菌が死んでしまうので、胃酸の分泌が多い朝はできるだけ避けること。ベストは10時か15時、夕食後なら20~22時の間がいいでしょう」
口から摂ったビフィズス菌や乳酸菌はほとんどが胃酸で死んでしまい、生きて腸まで届くのはわずか。だが、死んでしまった菌も腸内で善玉菌のえさになるため、腸の若返りにしっかりと役に立つ。
「ただし、ヨーグルトを食べるとお腹の調子が悪くなる場合は、体質に合っていないので、無理して食べないようにしてください」(江田さん・以下同)
ビフィズス菌や乳酸菌を増やすには、近年注目の「酪酸菌」を増やすのがいい。酪酸菌がつくる酪酸には、腸内を弱酸性にして悪玉菌の活動を抑制し、腸内を乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が棲みやすい環境にする作用があるといわれる。
「加えて酪酸菌には、短鎖脂肪酸の酪酸、酢酸、プロピオン酸を産生し、それらは代謝や免疫、メンタルなどの働きをサポートする力もある。実際に、抗がん剤治療を受けている肺がん、腎がんの患者が酪酸菌の入った錠剤を服用したところ、生存率が上がったというデータがあります。腸内の酪酸菌が多い人は、健康であると感じる“主体的健康観”や幸福感が高く、長寿だということもわかっています」
酪酸は、筋肉の老化を防ぐ作用があるほか、腸細胞の老化も防いでくれる。酪酸菌そのものを含む食品は少ないため、酪酸菌が好んでえさにするものを食べるのが近道だ。江田さんのおすすめは「地中海食」と「和食」。これらを食べる習慣のある人の腸には酪酸菌が多いことがわかっている。
「具体的には海藻類、豆類、ごぼう、しいたけ、しめじ、りんご、にんじん、アボカドなどが、酪酸菌を増やすのに役立ちます」
納豆、漬けもの、麴といった発酵食品に含まれる納豆菌や麴菌も、腸内環境を整えるのに役立つ。
また、東大発バイオベンチャーとして一躍脚光を浴びたユーグレナ(ミドリムシ)も、サプリメントやドリンクなどで摂取すると腸内で酪酸菌を増やす作用があることが新たに明らかになった。
「腸粘膜のバリア機能を高めるには、ビタミンDも重要です。納豆などの大豆製品のほか、さばや鮭などの白身魚、きのこ類、牛乳などに豊富に含まれています」(川本さん)
薬と環境汚染物質が腸の動きを妨げる!
江田さんは、過剰なダイエットは腸を老けさせると語る。
「食事量が減ることで食物繊維不足に陥りやすくなるだけでなく、ダイエット向き食品によく使われる人工甘味料には腸内環境を悪化させる働きがあるためです。抗生物質や胃酸を抑える薬も、乱用すると腸内環境を悪化させることがわかっています。また、PM2.5などの環境汚染物質は呼吸とともに口から入って腸にまで到達し、腸炎を起こすというデータがあります」(江田さん・以下同)
ストレスは自律神経の乱れを招き、その結果、腸のぜん動運動が阻害される。そうして便秘がちになると腸の中では悪玉菌が増え、腸が老ける大きな原因になる。
「睡眠と自律神経、そして腸の動きは、密接にかかわっています。自律神経のうち、腸の働きを司っているのは、リラックスしているときに働く『副交感神経』。そのため、なるべくリラックスして副交感神経を優位にするように心がけてください。20時以降はできるだけスマホやパソコンは遠ざけ、カフェインは摂らないようにしましょう。熱い湯船につかると体が興奮して交感神経が優位になり、寝つきが悪くなる。そのため、お風呂は40℃前後のぬるめのお湯に10~15分程度つかるのがベストです」
→自律神経とは?|乱れの原因、自律神経バランスのチェック、整える方法【まとめ】
体をひねるストレッチで腸を動かすのもひとつの手だ。背筋を伸ばし、腰幅よりやや広く両足を広げて立ち「T」の形になるように両腕を肩の高さに伸ばす。その姿勢のまま肩に力が入らないように気をつけながら、上体を左右にひねるだけでいい。
「上体と一緒に骨盤が動いてしまうと意味がないので、下半身はできるだけ動かさないように意識してください。1セットにつき3回、1日3セット行ってください。体をひねる動作が多いテニスやゴルフなどのスポーツも、腸を若返らせる作用が期待できますよ」
毎日30分程度の早歩きや軽いジョギングを取り入れるのも効果的。川本さんは、朝起きてすぐの「うつぶせ寝」を推奨する。
「布団で10分程度うつぶせになっていると、腸が圧迫されて一時的にぜん動運動がストップします。ところが、その後あおむけになると、反動でぜん動運動が活発化するのです。余裕があれば、あおむけになってから、『の』の字のマッサージを。おへそを中心に時計回りに、手のひらで大きな『の』の字を描くように軽めの力で押しながらなでるだけです」(川本さん)
腸を若返らせて、健康寿命を延ばそう。
■腸が若返る「鉄則」リスト
●1日3食きっちり食べる。食べる量を極端に減らさない。
●たんぱく質:炭水化物(糖質):脂質:野菜=4:3:1:2
●脂質、糖質の多いものは控える。
●ヨーグルトは1日最低200g。バナナやキウイ、はちみつを加えるとベター。10時か15時、または20~22時に食べる。
●酪酸菌を増やす海藻類、豆類、ごぼう、しいたけ、しめじ、りんご、にんじん、アボカドなどを積極的に摂る。
●不溶性食物繊維:水溶性食物繊維を2:1の割合で摂る。キウイ、ごぼう、切り干し大根、アボカド、さつまいも、じゃがいもなどが理想的な割合。
●牛乳、納豆、白身魚、きのこ類などでビタミンDを補う。
●20時以降はカフェインを摂らないようにし、パソコン・スマホもできるだけ見ない。
●40℃前後のお湯に10~15分程度つかってリラックス。
●30分程度の早歩きや軽いジョギング、上半身をひねる運動をこまめに行う。
●起床前に「うつぶせ→あおむけ」を交互に行ったり、お腹を「の」の字にマッサージする。
教えてくれた人
江田証さん/江田クリニック院長、消化器専門医
川本徹さん/犀星の杜クリニック六本木院長、消化器病専門医
※女性セブン2023年6月15日号
https://josei7.com/