腸の専門医がすすめる「しっかり排出」に役立つ食べ物「最強は納豆にオリーブオイルをかけて」
「極端な食事制限は長続きしません。それよりも“しっかり食べて、たくさん出す”方が、効果的なダイエットを期待できます」と、辨野(べんの)腸内フローラ研究所理事長の辨野義己さんが語る。自身もこの方法で7kgのダイエットに成功したという。どんなものを食べていたのか、便秘の改善にもおすすめの食べ物や食生活のポイント専門医に聞いた。
たくさん便を出すには「食物繊維」がカギ
しっかり食べてたくさん便を出せば、やせて、健康になる。そのためには食物繊維の摂取がカギになる。
日本人の平均食物繊維摂取量は1日あたり14g前後と推定される。厚労省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」は、1日あたりの目標量を18~64才で女性18g以上、男性21g以上としている。水溶性食物繊維は熟した果物や海藻類、オクラや納豆などのねばねば食品に多く含まれる。
一方、不溶性食物繊維はいもなどの穀類やごぼうなどに多く含まれる。松生クリニック院長の松生恒夫さんが言う。
「水溶性食物繊維が多く含まれる食品は、不溶性食物繊維を含む食品より数が少ないので、意識して摂取する必要があります」(松生さん)
具体的に何を食べれば効果的なのだろうか。実際にしっかり食べて7kgやせた辨野さんが振り返る。
「私はオクラやめかぶなど粘り気のある水溶性食物繊維を中心に食べて、不溶性食物繊維が豊富なブロッコリーやごぼう、切り干し大根などの野菜やきくらげ、しいたけなどのきのこ類、豆類、アボカドやアーモンドなどを組み合わせました。また、食べるときはよく噛んでゆっくり食べることを意識しました」
納豆にオリーブオイルをかけるのが効果的
松生クリニック院長の松生恒夫さんがすすめるのは「雑穀」と「キウイフルーツ」だ。
「もち麦や雑穀などは水分を引っ張って、大便のかさを増す効果があります。以前は味が悪かったのですが、いまはおいしい雑穀が市販されているので、白米にもち米やスーパー大麦を加えたり、食パンの代わりに全粒粉パンやライ麦パンを食べたりすると効果的。また、果物ならキウイフルーツが水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のバランスがすぐれていて、ビタミンやミネラルも豊富です」(松生さん)
便秘に最も効果的なのはオリーブオイルで、1日大さじ2を摂ることもおすすめだという。特に納豆にオリーブオイル大さじ1をかけて食べると効果抜群だ。
「意外なところでは米麹と酒粕でつくった甘酒も便秘解消に役立ちます。実際に当院の患者さんに毎日190gの甘酒を30日間飲んでもらったら、整腸作用のある腸内ビフィズス菌の占有率が有意に向上しました」(松生さん)
福島県相馬中央病院消化器内科医の齋藤宏章さんのおすすめは「りんご」だ。
「りんごで便秘がよくなったという患者さんが多いです。水分があって食物繊維を含むからでしょう」
減量に一石二鳥の「食後の散歩」
スムーズな便通のためには運動も欠かせない。「運動不足も便秘の主な原因」と語るのは辨野さん。
「便通をスムーズにするためには腸の周りにある腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)といったインナーマッスルを鍛えて、筋力で腸を圧迫して大便を出させることが必要です。“出したのに残っているような気がする”という便秘を弛緩性便秘といいますが、インナーマッスルが鍛えられていない運動不足が要因です」
松生さんが続ける。
「2020年に岡山大学大学院の森田英利さんが発表した論文では、運動が腸内細菌の構成を変化させ、有益な代謝系を持つ『腸内細菌叢(そう)』に変化させることが報告されました。その論文でもわかるように、運動は適切な腸の活動にとって非常に有効なのです」
デスクワークや、新型コロナの影響で導入されたリモートワークなどで運動不足という人は、まずは毎日歩くことを心がけたい。
「エレベーターを使わず自分の足で上り下りしたり、普段より少し早歩きするなどの日常生活の習慣をつくることが大切です。その上で朝は早めに起きてトイレの時間を設けるなど、運動とトイレの時間を普段の生活のなかに組み込むことを心がけてほしい」(辨野さん)
松生さんは「食後の散歩」をすすめる。
「和食と同じく健康食の地中海食を摂るイタリアでは食後に家族や知人と散歩する習慣があり、食事で上がる血糖値の上昇を運動によって抑え、腸の動きを活性化しています。日本でも食事の直後に30分程度の散歩をすることがおすすめです」
運動にはダイエット効果もあるので一石二鳥となる。食物繊維の摂取と運動にプラスして、「水分補給」も忘れてはならない。
「特に高齢になるとトイレに行く回数が増えることを恐れて、水を飲まなくなりがちです。すると水分が足りず便が硬くなって便秘になります。ダイエットで食事制限をするなかで水分摂取の機会が減ることも多いので、こまめな水分補給を心がけてほしい」(齋藤さん)
やせたいときこそしっかり食べて、運動と水分補給を加えてよい排泄を導きたい。人間の体は、当たり前のことをすれば健康になるようにできているのだ。
教えてくれた人
■辨野義己さん/辨野腸内フローラ研究所理事長
■齋藤宏章さん/福島県相馬中央病院消化器内科医
■松生恒夫さん/松生クリニック院長
※女性セブン2022年7月21日号
https://josei7.com/
●”大腸がん”を防ぐ6つの習慣「毎日スプーン1杯のオリーブオイルを」【医師監修】