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高次脳機能障害の親のいる子どもの交流会に参加したヤングケアラーが感じた「同じ立場同士が話せる場」の重要性

 高次脳機能障害のある母親と暮らすヤングケアラーのたろべえさんこと、高橋唯さん。ヤングケアラーが繋がれる場所は徐々に増えてきているが、「『高次脳機能障害の親のいる子ども』となると交流の場はなかなか見つけられない」という。そんな中、新たに始まったオンライン交流会に参加して感じたこととは。

執筆/たろべえ(高橋唯)さん

「たろべえ」の名で、ケアラーとしての体験をもとにブログやSNSなどで情報を発信。本名は高橋唯(高ははしごだか)。1997年、障害のある両親のもとに生まれ、家族3人暮らし。ヤングケアラーに関する講演や活動も積極的に行うほか、著書『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『ヤングケアラー わたしの語り――子どもや若者が経験した家族のケア・介護』(生活書院)などで執筆。 https://ameblo.jp/tarobee1515/

高次脳機能障害とは?

 筆者の母は高次脳機能障害だが、なかなか同じ境遇の人と出会える機会はなかった。初めて出会ったのは大学生のときで、他の人には理解してもらえないようなことでもスラスラと話が通じたことが衝撃的だった。それと同時に、「似たような経験をしてきたのは自分だけではないのだ」と知ってとても心強く思ったことを覚えている。

 過日、高次脳機能障害のある親のいる子どもたちによるオンライン交流会が行われた。筆者も当事者として参加したので、その様子をレポートする。

***

 高次脳機能障害とは、脳卒中や、事故による脳外傷などで脳がダメージを受けたことにより、注意力・記憶力・言語・感情のコントロール等がうまく働かなくなる認知機能障害の総称。これまでにできていたことがうまくいかなくなり、生活に支障をきたすものの、外見からは分かりづらいため、別名「見えない障害」とも呼ばれている。

 人によってできること、できないことはさまざまだが、筆者の母のように生活全般でサポートが必要な人もいれば、一般企業に就労している人もいる。

 今回オンライン交流会を企画した北島麻衣子さんは、高次脳機能障害の当事者であり、2人の子どもの母親でもある。第二子妊娠中に脳出血を起こし、高次脳機能障害を発症。現在は、ご自身の経験の発信や、高次脳機能障害のある母親同士の居場所を提供する「かけはしプロジェクト」を運営している。

 北島さんはオンライン交流会を企画した理由について、次のように語った。

「高次脳機能障害のある親たちは人知れず困難を抱えながら子育てをしていると思います。それと同時に、周りに気がつかれずに苦労をしている子どもたちも多いはず。

 同じ立場の子どもたち同士じゃないと話せないことを安心して話せる居場所を求めているんじゃないかと思い、交流会を企画しました」

「高次脳機能障害のある親のいる子ども」の交流会に参加

 今回は、主催者の北島さん、岐阜県立看護大学・講師で高次脳機能障害者の子育てを研究している原田めぐみさん、筆者を含む高次脳機能障害のある親のいる子ども(Aさん、20代)が参加し、交流会を行った。

 簡単な自己紹介の後、これまでの生活の話題となった。

Aさん「うちの親は感情のコントロールが苦手で、外出先でも怒り出してしまうこともあって、私はそれをなんとかなだめたり緩衝材になったりすることも多くて…」

高橋「外だと人の目も気になりますよね」

Aさん「そうそう」

高橋「そういうことを、誰かに相談したことはありますか?」

Aさん「うーん、相談はないかも。相談するほどのことと思ってなかったです」

高橋「私もです。この環境があたりまえだったし、結局自分で対応するほうが早いし」

 ここまで子どもの立場の会話を聞いていた北島さんが質問を投げかけた。

北島さん「今日はどうして、参加してみようと思ってくれたんですか?」

Aさん「“高次脳機能障害のある親のいる子どもの交流会”ってはじめて見かけて、まさに自分のことだなと思ったんです。“ヤングケアラー”に関する交流会はよく見かけるのですが、自分はそこまでのケアをしているかな?と思ってしまうところもあったんです」

 筆者も同感だ。筆者は高校生くらいから、「自分以外に似たような経験をしてきた人はいないのだろうか?」と探してきたが、なかなか見つからなかった。

 高次脳機能障害者の家族会はあるものの、たいがいは配偶者や親の立場の人が参加していて、子どもの立場の人はいなかった。”ヤングケアラー”という言葉に出会ってからは、似た経験をした人に繋がることができるようになったが、”高次脳機能障害のある親のいる子ども”はさらにピンポイントなので「自分のことだ」と思いやすく、参加しやすいと感じた。

子どもたちから寄せられた声に思うこと

 交流会の後半では、北島さんが今回参加できなかった人たちから寄せられた声を紹介してくれた。

「小学校高学年に上がったころから(親の障害に)気づきはじめた」「自宅で(子どもの自分が)ケアマネさんのような役割をしていた」

「一度、役所に相談に行ったが、『あなたより大変な思いをしている人はたくさんいるから」と言われ、『そうなんだ、このくらい我慢しないといけないんだ』と思って帰ってきた」

「学校や仕事を選ぶときにも親のケアを優先してしまいがち」など、子どもたちが置かれた境遇を知ることができた。これらの声を聞き、筆者とAさんは同じ思いを抱いた。

Aさん「紹介してくださったなかで、特に”選択肢が少ない”、”自己決定権がない”っていうのはわかる気がします。進学とか就職とか、どこで暮らすのかとか、子どもの人生に制約があるっていうのは、実情ですよね」と語った。

高橋「私はそもそも“自分には少ない選択肢しか見えていなくて、その中から選んでいる”という自覚もありませんでした。自分は周りの子と変わらないんだって思ってたけど、結局、今でも実家でケアを続けています」

Aさん「子どものキャリア形成にも影響がある現状っていうのは、課題のひとつですよね。子どもたちだけではどうにもならないことですけど、なんとか変えていけたらと思います」

高橋「そうですね。高次脳機能障害の親のいる子どもたちの交流の輪が広がって、今後は似たような経験をしてきたロールモデルを見つけられるような場にもなっていくと、子どもたちの選択肢も広がるかもしれませんね。今回はありがとうございました」

「大変なわけじゃない」という人も気軽に参加を

 障害のある親と暮らしている子どもたちは、「障害のある当事者が一番大変なんだから、あなたはもっと頑張って」「大変なんて言ったら、頑張っているお母さん(お父さん)がかわいそう」などと言われることもあり、なかなか話を聞いてもらいにくいこともある。

 しかしながら、頑張っている当事者を間近で見ている家族もいろいろな思いを抱えて過ごしている。特に子どもは、障害についてわからないことも多いなかで、なんとか日々をこなしている。

 ご自身も当事者である北島さんが、子どもの立場にも寄り添って交流会を企画してくださり、ありがたいと感じた。

「当事者の子どもの会」では決して当事者を責めたいわけではない。当事者も、当事者の子どもも、それぞれが日頃の思いを安心して共有できる場をもつことによって、普段の生活がより過ごしやすくなるのだと思う。

 この交流会は毎月第3金曜日、20時〜開催予定だ(次回は4月18日)。「自分はケアしてるわけじゃない」「別に悩んでることはないけど…」という人にもぜひ気軽に参加してほしい。

問い合わせ/かけはしプロジェクト
https://kakehashi-project.com/

ヤングケアラーに関する基本情報

言葉の意味や相談窓口はこちら!

■ヤングケアラーとは

 日本ケアラー連盟https://youngcarerpj.jimdofree.com/による定義によると、ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18才未満の子どものことを指す。

■ヤングケアラーの定義

『ヤングケアラープロジェクト』(日本ケアラー連盟)では、以下のような人をヤングケアラーとしている。

・障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
・家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
・障がいや病気のきょうだいの世話や見守りをしている
・目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている
・日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている
・家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている
・アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している
・がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている
・障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている
・障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている

■相談窓口

・こども家庭庁「ヤングケアラー相談窓口検索」
https://kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/consultation/

・児童相談所の無料電話:0120-189-783
https://www.mhlw.go.jp/young-carer/

・文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」:0120-0-78310
https://www.mext.go.jp/ijime/detail/dial.htm

・法務省「子供の人権110番」:0120-007-110
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html

・東京都ヤングアラー相談支援等補助事業 LINEで相談ができる「けあバナ」
運営:一般社団法人ケアラーワークス
https://lin.ee/C5zlydz

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