健康

新体操コーチ・山さき浩子さんに学ぶ「疲れない体づくりには大切なのは筋トレより軸トレ」

「最近スタスタ歩けない」「筋トレを始めたけど、ひざが痛くて…」など、思うように体が動かず悩んでいませんか?「その原因は加齢だからではなく、体の使い方が間違っているのかも」と言うのは、新体操コーチの山さき浩子さん(63才)の体形維持の秘訣を教えてもらった。

山崎浩子さんがたどり着いた「4スタンス理論」

「実は運動も、汗をかくことも嫌いで、ほとんど運動はしてないの」という、意外な面を持つ山さきさん。それなのにしなやかな体を維持しているのは「4スタンス理論」に出会ったからだ。

「日本代表の指導を始めた2004年当時、私は自分の選手時代にしていた練習方法を選手に教えていました。その方法で成果が出せる選手もいましたが、出せない選手もいたんです。そんなとき、あるテレビ番組で整体施療家の廣戸聡一さんが、数人の芸能人のかたにゴルフのスイングを教えていたのですが、一人ひとりにまったく違う指示をしていて驚きました。そのアドバイス通りにスイングすると、みなさん飛距離がグンと伸びたんですよ。それで、どういうものか知りたくて、教えてもらったのが『4スタンス理論』でした」(山さきさん・以下同)

 さっそく練習に取り入れたところ、選手の動きがみるみるよくなったという。

「どうしても年を重ねると体が動きにくくなりますよね。それに伴い血流が悪くなり、肩凝りや腰痛も生じます。でも、私は4スタンス理論で体が動くようになりました」

 そんなに劇的に変わる「4スタンス理論」って何なの?

「人間には体の使い方が4タイプあり、そのタイプの特性に合った体の動かし方をすることで、身体能力を最大限に発揮できるのが4スタンス理論です」
 
 性別、年齢、身体能力を問わず、誰もが4タイプのどれかに属しているという。記者のように、ふだん軸を意識したことがなくても大丈夫?

「大丈夫です。ポイントとなる軸の使い方がわかれば自然と軸が整います。その軸に重心を乗せることで立ったり、歩いたり、体を動かすこともスムーズにできるんです。軸の乗り方は4タイプあり、それぞれ動き方も違うため、軸を無視して体を動かすとけがや不具合が出てきます」

 記者がやたら肩が凝るのは、軸がうまく使えていないせいかも…。山さきさん、姿勢いいですもんね!

「自分のタイプに合った軸の使い方をすることで、自然と姿勢や身のこなしもよくなり、疲れづらくなりますよ」

 軸が整うと疲れないなんて!早速やってみよう。

日常動作がスムーズになる“軸”の位置を体感!

 活動や運動の中心となる軸の重要性を知るために、左の2つの実験をやってみよう。まず、両足を肩幅に開いて立って右手を上げ、【1】のように右足に体重を乗せた状態で右腕を前後にぐるぐると回す。次に、【2】のように両足に体重を均等に乗せた状態で右腕を前後にぐるぐる回す。すると、【2】より【1】の方が回しやすいことがわかる。【1】が回しやすいのは上半身から下半身まで軸が通っているから。このように、軸を意識することで体をスムーズに動かせるのだ。

【4タイプ共通】軸トレでさらに動くカラダに

「体が硬い」「動きがにぶい」「なんとなく不調」などと感じたら、体がリセットできるトレーニングを行おう。どのタイプでも共通してできるので、朝、昼、晩、気がついたときに1日1回でもいいから実践しよう。

●トップ・オン・ドームで立ち方を正しくする

 自分の軸を正しく体感するために、トップ・オン・ドームという正しい立ち方をしてみよう。「この姿勢をすると呼吸が大きく楽にでき、立ち姿勢が安定します。歩く、走る、座るなど、どんな動作の前にも、この『トップ・オン・ドーム』をしてから行うようにするといいですよ」。

【やり方】【1】両足の間は指1本分くらい開けて立つ。【2】土踏まずのドーム状の空間に、骨盤と頭が乗っているイメージで立ち、上半身を軽く動かしてリラックスする。

★Point

「土踏まずから頭まで円柱が通っているイメージを持ち、安定しているか、可動域がより広くなっているか、呼吸が楽にできているか、を確認します。あくまでイメージするだけでOK。鏡を見て真っ直ぐに立っているかの確認はしないでください」

軸トレ1 リポーズ(いす)

「『体が疲れたな』『無理な体勢をとったな』と思ったときはこのトレーニングを行いましょう。一見、ストレッチのように見えますが、似て非なるもの。リポーズは筋肉を引き伸ばすというより、軸に乗りながら行うことで関節や筋肉を緩めていくものです」

【1】いすに浅めに座り、骨盤を立てて頭がその延長線上にあるようにし、手は両太ももに乗せる。そのまま軽く肩を動かして上半身をリラックスさせる。足裏で床を踏み、地面に対して視線は水平に、左右に骨盤を10秒ほど揺らす。

【2】その体勢のまま、両太ももから足首まで両手を沿わせながら前屈する。

【3】骨盤をゆっくり立て、背骨を1本ずつ立てていくイメージで体を起こし、【1】の体勢に戻る。

【4】足裏は床につけたまま、左右の股関節やひざを前後に動かす動作を10秒ほどする。

【5】【4】の体勢から、左脚の股関節の軸ポイントに頭を乗せるようにする。

【6】【5】の体勢から上半身を左方向に向ける。体が90度横に向くことを目標にする。

【7】【1】のポジションに戻り、【5】と【6】の動きを逆側の軸でも行い、再び、【1】のポジションに戻る。

★Point

・頭の位置は動かさないようにして、常に足裏は床につけておく。
・骨盤は後傾も前傾もせず、真っ直ぐ立っていることを意識する。

軸トレ2 お尻歩き

「体幹をしなやかに使い、体全体を楽に動かすための軸トレで、新体操日本代表チームも準備運動のために行っていました。日頃運動していない人は、無理のない範囲で実践してください」

【1】床にお尻をつけ、足を伸ばして座る。両足の間は指2本分程度開ける。

【2】【1】の状態から前に10歩、後ろに10歩ずつお尻歩きをする。

★Point

【1】上半身は固めずに、肋骨や肩甲骨、骨盤をしなやかに使って、1歩ごと軸に乗りながら進む。【2】Aタイプは伸び上がりながら、Bタイプは床を押すイメージで進むと効果的だ。

教えてくれた人

新体操コーチ 山さき浩子さん

1960年生まれ、鹿児島県出身。1984年にロサンゼルス五輪に出場して8位入賞。2004年に日本体操協会の新体操強化本部長に就任。2015年以降は世界選手権で5大会連続メダル(団体競技)に導いた。軸トレについて著書の『筋トレより軸トレ!運動のトリセツ』(監修・廣戸聡一/日経BP)で詳しく解説している。YouTubeチャンネル「【ジクスタ】Hiroko’s JIKU studio」でも体の動かし方などを配信中。

取材・文/廉屋友美乃 イラスト/鈴木みゆき 出典/『筋トレより軸トレ!運動のトリセツ』著者・山さき浩子 監修・廣戸聡一(日経BP)

※女性セブン2023年6月8日号
https://josei7.com/

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