猫が母になつきません 第356話「おやつ」
猫は「新奇性恐怖症(新しいもの嫌い)」らしい。すべての猫がというわけではないようですが、新しい食べ物や普段とちがう食べ物を嫌がる傾向があるそうです。自然界では新しい食べ物でお腹を壊したりする可能性もあるので、そういう習性が遺伝子に組み込まれているのだろうと言われています。さびも基本のごはんはうちで最初に与えたフードをずっと食べていて、何度か変えてみましたがほとんど食べませんでした。おやつもいつも同じなのですが、そのおやつの「バラエティパック」というのが出ていて、つい「まぐろ味」と「ほたて味」の2種類のフレーバーが入っているものを買ってしまいました。いつも「まぐろ」を食べているさびは「ほたて」を拒否。喜んで食べるはずのおやつを食べないなんて病気かと心配しましたが「ほたて」から「まぐろ」に替えるとすぐにたいらげました。わびは人間と暮らし始めるのが早かったせいか「いろいろ食べたい」派。野性味が足りません。人間も歳をとるといくらか「新しいもの嫌い」になるような気がします。私も毎日同じようなものを食べ、同じお店に行って、同じような洋服を着て、昔と同じ音楽を聴いています。嫌いというわけでもないのですが、欲していないというか必要ないというか。古いクルマもなかなか変える決心がつかず、故障するたび「これが最後」と言って修理して乗りつづけています。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。