体温を1℃上げる「ぽかぽかスイッチ」をONにする17の習慣「ビールジョッキ1杯で深部体温は4℃低下、野菜や果物も要注意」
「万病のもと」で「美容の大敵」。昔から、冷えは体に害をなすものとして、さまざまな対策が取られてきた。長かった冬が終わったからといって、決して油断してはいけない。冬の寒さを忘れたときこそ、あなたの体は「内側」からどんどん冷やされているのだ。そこで、無自覚に冷えているかもしれない内臓の冷えを改善する17の習慣を専門家に取材してご紹介する。これから暑くなるからと気を抜かず、いまから内臓冷えを防ぐ習慣を身につけよう。
【目次】
夏が旬の食べ物や南国の食べ物は要注意
深部体温を1℃上げるだけでも、免疫力と代謝が上がり、体が変わる。その“スイッチ”を入れるためにはまず、物理的に体を冷やすものを避ける必要がある。全国冷え症研究所所長で理学博士の山口勝利さんが言う。
「ビールをジョッキ1杯飲むと、深部体温が一時的に4℃下がるといわれます。もちろん、ある程度の時間が経てば元に戻りますが、暑いからといって毎日それを続けていると、次第に深部体温が戻りにくくなる。そうして、体に冷えが蓄積されていくのです」
ビールに限らず、冷たい飲み物や食べ物を摂ったら、その後に温かいものを摂って、内臓が冷えたままにしないことが大切だ。
イシハラクリニック副院長の石原新菜さんは「物理的に冷たくなくても、体を冷やす作用のある食べ物はある」と話す。
「東洋医学的には、夏が旬の食べ物や南国の食べ物は、常温で食べても体を冷やす作用があると考えられています。きゅうりやトマト、なす、すいか、バナナ、パイナップル、マンゴーなどは、食べすぎないようにしてほしい」(石原さん)
野菜や果物は水分が多いこともあり、多く食べれば体を冷やすことにつながる。水分の摂りすぎは、それだけで体を冷えやすくするのだ。
「野菜を食べるならサラダばかりではなく、温野菜と半々くらいにするのが理想です。にんじんやごぼう、じゃがいもなどの根菜類は体を温める作用があると考えられている。みそ汁に根菜を入れるのもおすすめです。
また、あまり汗をかかず、代謝が悪い人は、飲み物も飲みすぎないようにした方がいい。“水分は1日2L摂るべき”とよくいわれますが、代謝が悪い人は1日1Lほどが適量です。冷たい水の一気飲みはせず、常温の水か白湯を少しずつ飲んでください。コーヒーや緑茶などカフェインの多いものはホットでも体を冷やすので、できる限り避けてほしい」(山口さん・以下同)
「時間」「薬味」「スパイス」など食べ方の工夫が大切
とはいえ、これからますます暑くなる中、冷たいものや旬の野菜・果物を一切摂らずに過ごすのは難しい。
山口さんは、食べ方を工夫することで、食べ物や飲み物が持つ体を冷やす作用を和らげることができると語る。まず意識すべきなのは「時間」だ。朝は一日のうち体温がもっとも低いため、冷たいものは昼から夕方にかけて摂るようにすれば問題ない。
「例えば、ヨーグルトはそれ自体は健康にいい食べ物ですが、体を冷やす作用があります。朝食べるなら、朝食に温かいものをしっかり食べて胃腸を温めた後に食べ、その後でさらに温かい飲み物を飲むようにしましょう」
そうめんや冷やし中華を食べるときも、薬味をうまく活用すれば、体が冷えるのを防ぐことができる。
「薬味やスパイスには、体を温める作用があるものが多い。ねぎやしょうが、みょうが、唐辛子などはその代表格です。冷たい飲み物やビールは体を冷やしますが、例えばジンジャーエールやシャンディガフなど、しょうがの入ったものは、何も入っていないものよりは体を冷やしにくい。コーヒーも、しょうがパウダーやシナモンをかけることで、体を冷やす作用が緩和されます。ただし、汗をかくほどたっっぷりとスパイスを使うと、汗の蒸散作用によってかえって体温が下がります。暑い地域に激辛料理が多いのは、汗をかいて体温を下げるためなのです」(石原さん)
山口さんがおすすめする“最強のスパイス”が「ヒハツ」。ヒバーチ、ロングペッパーとも呼ばれ、大きなスーパーや輸入食品店などでも購入することができる。
「ヒハツには体を温めるだけでなく、弱った毛細血管を修復する作用があるのです。どんなに体を温めても、温まった血液が末端まで運ばれなければ意味がありません。ヒハツを摂ることで手先や足先の毛細血管まで元気になって温かい血液が体のすみずみまで運ばれ、根本から冷えの改善に役立ちます」(山口さん・以下同)
量の目安は、1日小さじ3分の1程度。シナモンとこしょうを合わせたような香りと味で、どんな料理にも合わせやすい。
「コーヒーや紅茶のほか、みそ汁や炒めものにかけてもいい。意外にも、プリンやお汁粉といった甘いものにも合う。食べてしばらくすると、体が少しずつぽかぽかしてくるのを感じられます」
一日の冷えをリセットするためには、夜の入浴習慣も見直しておきたい。温かいと感じられる程度のぬるめのお湯に10~20分ほど、ゆっくりつかるのがいい。お湯にひとつかみの粗塩を入れるとより温まりやすくなる。
「じんわり汗が出てきたら、体がしっかり温まっているサインです。暑い時期にお湯につかるのが苦手な人は、ミント系の入浴剤を使えば、清涼感を感じながらも、体を温めることができておすすめです。入浴後はストレッチをすることで、さらに体を温められます。特に女性は股関節まわりが硬くなりやすいので、しっかりとストレッチすることで子宮や卵巣まわりの血流が改善します。床に座ってあぐらをかくようにひざを曲げて、両方の足裏を合わせたら、そのまま両ひざを床につけるような感覚で、体を前に倒してください。これを4~5回繰り返します」(石原さん)
ゆったりと入浴すれば、冷えによって乱れた自律神経を整えることにもつながる。腹式呼吸で自律神経のバランスを整え、リラックスするのもおすすめだ。お腹を膨らませながら鼻から息を吸い、お腹をへこませながら、口からゆっくり吐ききるのを意識するだけでいい。日常的に“温めスイッチ”をONにする習慣を身につければ、次第に不調から解放されるはずだ。