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今年90歳!快進撃を続ける高木ブーの生き方「のし上がろうという野心がなかった」|連載 第86回

 3月で90歳を迎える高木ブーさん。2023年は1日に放送された「ドリフに大挑戦スペシャル」の第3弾でスタートした。節目となる今年は、楽しい企画が目白押しである。「去年は悲しいことがあったけど、今年はいい年にしたいね」と、高木さんは前を向く。「世界最高齢現役コメディアン」の快進撃は、さらに勢いを増すばかりである。(聞き手・石原壮一郎)

流れに身を任せて、気がついたら今も雷様やれています

 もう松の内は過ぎちゃったけど、明けましておめでとうございます。今年はいよいよ90歳を迎える。節目の年をドリフターズの特番でスタートできたのは嬉しかったね。

 1日に4時間にわたって放送された『ドリフに大挑戦!あけましていい正月だなSP』では、若いコメディアンのみんながドリフのコントや少年少女合唱隊のコーナーを再現してくれた。今の人がやるとまた別の味付けになって、新しい面白さが出るよね。ドリフの真似じゃなくて、それぞれが自分の個性を発揮してくれてたのがすごくよかった。

 僕も加藤といっしょに、新しいコントをいくつかできて楽しかったな。ブー子になって新春ファッションショーも出られたしね。自分で言うのもなんだけど、昔のブー子より今のブー子のほうがインパクトがある。これも一種の「年の功」かな。なんてね。

 いちばん嬉しかったのは、やっぱり雷様ができたこと。仲本(工事)がいなくなって、雷様は僕ひとりになっちゃった。いよいよおしまいかなと思ったけど、加藤が「俺も手伝うから」って青い雷様になってくれた。前回に続いてダチョウ倶楽部の肥後克広君が長さん(いかりや長介)の役をやってくれたし、ドリフとは長い付き合いのすわ親治君も出てくれた。『飛べ!孫悟空』の馬の鳴き声、懐かしかったな。

 雷様のコーナーで肥後君が「メンバーを増やしてドリフ48みたいにしよう」とギャグで言ってたけど、雷様もどんどん増えて「雷様48」みたいになるといいな。ギャグじゃなくてけっこう本気でそう願ってる。

 僕は長さんが考えたあの設定とキャラクターが大好きだから、いろんな人にやってもらって、長く残っていってほしい。雷様の格好をすれば本音を口にしても許されるから、評論家の人が雷様になって並んで語りながら、世相を斬ったり何かの批評をしたりしても面白いかもね。ただ悪口を言い合うのは、ちょっと違うけど。

 ネットには番組の感想がたくさん書き込まれてるみたいだね。ある人が「ドリフターズのコントは笑いの文化遺産だっていうコメントがありましたよ」と教えてくれた。そう言ってもらえて、長さんや志村や仲本もきっと喜んでる。「ドリフに大挑戦」のような番組を通して、やる側にも見る側にも、コントの面白さが伝わっていってほしいな。

 それにしても、こんな僕がこの歳までコメディアンをやれてるなんて、自分自身がいちばんビックリしてる。加藤や志村みたいに、人を笑わせる特別な才能があるわけじゃない。だいいち、できるだけ長く芸能界で生き残ってやろうなんて思っていたわけじゃない。のし上がってやろうという野心もなかった。子どもの頃からずっとそうなんだけど、流れに身をまかせていただけなんだよね。気がついたら、今も雷様をやってた。

 よく言えば「自然体」ってことなのかな。昔は「欲がなさすぎる」とたまに言われた。芸能界ってやっぱり野心がある人が多いし、生き馬の目を抜くみたいなところはある。ただ、どうなんだろう、長い芸能生活でいろんな人を見てきたけど、常に「自分が自分が」と前に出ようする人は、意外にうまくいかないケースが多かったかもしれない。

 たしかに競争の世界ではあるけど、自分が一歩引いて人を立てることができる人のほうが、結果的に長く活躍できてる気がするな。そういう人は、まわりが「この人を助けてあげたい」と思ってくれるし、「この人なら大丈夫」という信頼関係を築くこともできる。どんな人だって、まわりの助けがないとひとりじゃなにもできないからね。

 僕がのんびりやれていたのは、基本が芸能人じゃなくてバンドマンだったからじゃないかな。バンドマンは“手に職”があるから、目先の人気をそこまで気にしなくてもいい。好きな音楽でそれなりに食えればいいし、それこそ周囲との調和が取れなかったらいい演奏はできない。そういうスタンスは、ドリフのほかのメンバーにもきっとあった。

 野心を持たずにのんびりやってこられたのは、やっぱりドリフという大きな船に乗っていたからっていうのが大きいよね。「第5の男」は「第5の男」なりに、その中で安心して自分のペースでやることができた。ふたりになっちゃった今も、僕はドリフという大船に乗ってのんびり揺られている。

 そうそう、このあいだからイザワオフィスの公式YouTubeチャンネルで、『ドリフ大爆笑』の名作コントのデジタルリマスター版が期間限定で配信されてます。技術的なことはよくわからないけど、きれいな映像の状態で長く残るってことだよね。今の子どもたちや20年後30年後の子どもたちが、ドリフのコントを見て笑ってくれるといいな。

→イザワオフィスの公式YouTubeチャンネル『ドリフ大爆笑』の名作コントのデジタルリマスター版

ブーさんからのひと言

「今年は90歳になる節目の年です。周囲に感謝しながら加藤と一緒に、ドリフのコントをやっていきます。みなさん、いい年にしましょうね」

高木ブー(たかぎ・ぶー)

1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)、『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。同チャンネルでは期間限定で「ドリフ大爆笑」の名作コントのデジタルリマスター版を続々と配信している。毎月1回ニコニコ生放送で、ドリフとももクロらが共演する「もリフのじかんチャンネル ~ももいろクローバーZ×ザ・ドリフターズ~」が放送中。

取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)

1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」が好評発売中。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。

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