90歳の高木ブー、画集と自叙伝を発売!「この歳じゃなければできないことがあるはず」|連載 第91回
「90歳になっちゃったね。まあ、こればっかりはしょうがない」――。少しテレながら喜びを語る高木ブーさん。「80代の10年間もたくさん新しいことを経験した。90代は何が待っていのか楽しみ」と、ますます張り切っている。音楽活動、画集と自叙伝の出版、イベントへの出演など、90歳のブーさんはさっそく勢いよく走り始めた。(聞き手・石原壮一郎)
90歳を迎えて「今までとは違う自分」になった気がした
おかげさまで3月8日に90歳になりました。インスタグラムのコメントやメッセージでも、たくさんの祝福の言葉をいただいて、ありがとうございます。
実際になるまでは「89歳も90歳も、たいして変わらないよ」と思ってたけど、なってみると違うもんだね。大きな区切りを意識したっていうか、昨日までの「89歳の高木ブー」じゃなくて新しく生まれ変わった気持になった。成人の日じゃないけど、しっかりやっていかないとっていう責任感が芽生えてきたんだよね。
だから、自分としては「とうとう90歳になった」という感じは、まったくない。「90歳か。よし、またここからスタートだ」といった気持ちなんだよね。初心に帰るみたいな新鮮な感覚があった。なってみるまで、こんなふうに思うなんてぜんぜん想像してなかったけど。
誕生日の夜は、家族がケーキを囲んでお祝いをしてくれた。今回はいつもと大きく違ったことがある。これまでの誕生日は僕がウクレレを弾いて歌ったんだけど、孫のコタロウがギターを弾いて「Happy Birthday to You」を歌ってくれた。感無量だったな。春から大学生になる孫にこんなこと言うのもヘンだけど、大きくなったなあとあらためて思った。
フライングでお祝いしてもらったハワイのパーティも感激したけど、それとはまた別の嬉しさがあったな。たくさんの仲間やスタッフに祝ってもらって、ファンのみなさんに祝ってもらって、家族にも祝ってもらえる。僕は本当に幸せものだと思う。15歳の誕生日のときに兄貴からウクレレをもらったのが人生の転機になったんだけど、もしかしたら僕は「誕生日運」に恵まれているのかもしれない。
さっき「責任感」って言ったけど、90歳にしかできないことがある気がするんだよね。日本は今「高齢化社会」だって言われてる。そういう時代だからこそ、90歳の自分がそれなりにやっているところを見てもらうのは大事なんじゃないかな。僕を見て同年代や少し下の年代の人が元気になってくれたら、長生きしている甲斐があるよね。
先月の「ウクレレピクニック・イン・ハワイ」では、やっぱりハワイでやるんだからと思って、ステージでハワイアンを演奏してきた。日本で長くウクレレをやってきた僕が、ハワイでハワイアンをやってハワイの人に聞いてもらう。これまでもたくさんやってるんだけど、ウクレレで日本とハワイをつなげるのは僕の役割かなと思ってる。
3月16日は「志村けんの大爆笑展」の応援で、静岡県浜松市の「遠鉄百貨店」に行ってきた。たくさんの人と写真を撮ったりお話したりして、楽しかったな。僕より大きいちびまる子ちゃんとも会えたしね。
今回もまた、小学生の子どもたちから手紙をもらった。ドリフが好きと言ってくれる子どもたちと会えるのは、ほんとに嬉しい。3月29日(水)まで開催だから、近くの人はぜひ遊びに行ってみてください。
「大爆笑展」の物販コーナーには、先行販売ってことで、3月20日発売の『高木ブー画集RETURNS ドリフターズよ永遠に』も置いてもらった。画集を2冊も出してもらえるなんてなんだか恥ずかしかったんだけど、読んだ人から「今回も面白かったです」「やっぱりドリフは最高です」と言ってもらえて、ホッとしたな。
今度の「RETURNS」には、1冊目の画集では伝えきれなかったことや、ドリフが二人になったことへの僕の思いが詰まってる。新しい絵もたくさん描いたんだけど、そのために昔のコントの映像をあらためて見て、当時に戻ったような気持になった。読んでいる人にも、ドリフを見てた頃の気持ちを思い出してほしいという願いを込めて「RETURNS」と付けました。
新しく描いたうちの1枚は、ハゲヅラをかぶった青い雷様の加藤(茶)と緑の雷様の僕が並んで座っている絵。空の上には黒い雷様の長さんと赤い雷様の仲本がいて、僕らに「2人で力を合わせて頑張れョー!」と声をかけている。きっとそう思ってくれてるんじゃないかなと想像しながら描いた。偶然だけど、発売日は長さんの命日なんだよね。長さんに「ブーたん、これからも加藤とふたりで、ドリフのことを伝えて行ってくれよ」と言われている気がする。
4月6日に出るもう一冊の本『アロハ 90歳の僕 ゆっくり、のんびり生きましょう』も、あとは印刷されるのを待つだけになった。この連載をベースに、ドリフのことやウクレレのこと、家族のことなど、僕の90年をぜんぶ詰め込んだ自叙伝です。
なんだかあわただしいみたいだけど、僕は僕のペースでしかやれないから、とくに「ああ、忙しいなあ」って感じでもないかな。毎日よく寝てよく食べて、仕事がオフの日はウクレレを楽しんでる。これからも、ゆっくり、のんびり生きていきます。
ブーさんからのひと言
「90歳になって、これからまだまだ新しいことに挑戦していきたいと思っています。自分なりのペースだけどね。100歳まで現役を目指して頑張りますのでよろしくお願いします」
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)、『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。同チャンネルでは期間限定で「ドリフ大爆笑」の名作コントのデジタルリマスター版を続々と配信している。3月20日に『高木ブー画集RETURNS ドリフターズよ永遠に』(ワニ・プラス、2,700円+税)が発売。4月6日には、この連載をまとめた『アロハ 90歳の僕 ゆっくり、のんびり生きましょう』(小学館、2,200円+税)が発売!
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。『大人養成講座』『大人力検定』など著書多数。1月26日に最新刊『無理をしない快感‐「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。