女優・小山明子さんは「水泳で介護うつを克服」60才に立ちはだかる”うつの壁”を乗り越える方法【精神科医提言】
60才うつを予防し、克服するには生活習慣の改善が基本となる。秋田さんが言う。
「60才前後は体力維持のためにも運動は不可欠ですが、うつにかかるとエネルギーが低下して動く気力が出にくい。まずはブラブラと少し歩くことから始めて、慣れてきたら毎日15~30分ほど朝の時間帯に公園や街路樹沿いを歩くのがおすすめです」
元福岡大学名誉教授の田中宏暁さんが提唱した「スロージョギング」も効果的だ。
「息が切れない程度にゆっくり走るジョギング法です。前方を見て背筋を伸ばし、足の指の付け根と土踏まずの間の少し盛り上がっている部分で着地するのがコツ。体のどこにも負担がかからないようにゆっくり走ることが大切で、ウオーキングをしている人に追い越されるほどゆっくりとしたスピードでもかまいません」(秋田さん)
1日30分がベストだが、最初は1分でも5分でもいいので継続することが大事だ。毎日でなくとも週2~3回続けられるようがんばりたい。
小山さんのうつ克服にとって大きかったのは「水泳」との出会いだった。
「入退院を繰り返す中、とにかく何かを始めようと、市の広報誌で見つけた水泳教室に通ってみたんです。すると泳ぐことが楽しくて、気分転換と健康のためには水泳がとても大切と思うようになりました。
プールではノーメイクだから小山明子と気づく人はいなかったし(笑い)。その後、乳がんや肺がんなどの手術をしたのでいまは泳げないけれど、水中を歩くクラスには通っています。私はプール通いを続けているから、いまでも何とか元気でいられます」(小山)
きちんと「睡眠」をとることも欠かせない。睡眠不足は最も脳に悪く、1日6~7時間の睡眠が望ましいという。
「充分な睡眠をとって規則正しく早起きすると、生活のリズムが整います。逆に朝グズグズして生活リズムが崩れると何もしなくても体が疲れたような気分になり、意欲の低下が始まります。この状態を放置しておくと、うつのリスクがどんどん高まります」(和田さん)
太陽の光を浴び、検査の数値にこだわらないことがうつを防ぐ
うつを防ぎ、良質な睡眠をとるには「太陽の光」も助けになる。
「精神を安定させ不安や恐怖を和らげるセロトニンは、太陽の光を浴びることで合成されます。とりわけ朝の日光を浴びることは、うつ気味の人の一日を快適なものにします。またセロトニンの分泌量が多いと、メラトニンという睡眠を司るホルモンがしっかり分泌されて、夜間の睡眠の質が向上します。特に60才以上の人は胸の上あたりにあって、免疫力にかかわる『胸腺(きょうせん)』が加齢に伴って脂肪化し、その機能が衰えてしまいます。しかし、日光を当てて活性化し機能がよみがえると、免疫力アップも望めます」(秋田さん)
すっかり春めいて暖かい日が続くようになったので、なるべく肌を露出して日光に当たることを心がけたい。
健康チェックのためにさまざまな検査をする人も多いが、数値にこだわりすぎないことも心しておきたい。
「いまは体調を整えるため塩分を控える、血圧や血糖値を下げる、体重を減らすなど“引き算”の処置ばかりすすめられますが、検査データの基準値には疑問や反論がいくらでもあります。高齢者は数値が高めの方が、体調が安定するケースも多く、数値にこだわりすぎないことが求められます」(和田さん)
秋田さんも「検査数値がすべてではありません」と語る。
「特にうつになりやすい人は繊細な人が多いので、自分の体の声をしっかりと聞いて心身の状態を観察することが大事です。もしもたばこやお酒など、一般的には体に悪いとされている生活習慣も自分がやめたいと思っていれば、がんばってやめる必要がありますが、そこまでやめたくなければ無理をする必要はありません」
教えてくれた人
秋田巌さん/『60歳うつ』著者でメンタルクリニックオータム院長、片田珠美さん/精神科医、和田秀樹さん/精神科医、小山明子さん/女優
文/池田道大 取材/平田淳、三好洋輝、村上力
※女性セブン2023年3月30日・4月6日号
https://josei7.com/
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