「プチうつ」を抜ける6つの食習慣と心を元気にする7つの栄養素【精神科医監修】
「気分が落ち込んだり、精神が不安定になるのは、環境のせいだけではない。特定の栄養素が足りなくなってもなる」と、精神科医の功刀浩(くぬぎひろし)さんは話す。では心が病にならないためにはどんな栄養素が必要なのか。功刀先生が推奨する6つの食習慣と合わせて説明する。
約20年で約3倍も増えているうつ病
「厚生労働省のデータによると、うつ病と診断され専門医で治療を受けている患者の数は約128万人。約20年間で約3倍に増えています」
と話すのは、帝京大学医学部附属病院メンタルヘルス科長で精神科医の功刀浩(くぬぎひろし)さんだ。専門医の治療を受けている患者はごく一部で、医療機関で診断や治療を受けていない潜在的なうつ病患者数は、500万人を上回るとの見方もある。
「さらに長引くコロナ禍でのストレスや生活リズムの乱れなどにより、心の不調を抱える人は今後も増えると思われます」(功刀さん・以下同)
いまや心の病気は、誰がなってもおかしくない状況というわけだ。
「日本では長年、心の病気は育ってきた環境や教育が大きく影響すると考えられ、カウンセリングなどの精神療法や抗うつ薬を処方するなどの薬物療法が一般的でした。しかし近年の研究で、うつ病などの心の病気も、食事が大きく関係していることが判明しました。カロリーの過剰摂取や必要な栄養素の不足などが、心の不調にも繋がるのです」
そのため、うつ病の治療に栄養療法が用いられるようになってきているという。ではなぜ、栄養に偏りがあると心のバランスも崩れてしまうのか?
「肥満」はうつ病の発症リスク1.5倍
「カロリーの過剰摂取、いわゆる食べすぎや運動不足は肥満を誘発します。肥満はうつ病の発症リスクを1.5倍にあげるほか、肥満や運動不足が続いて糖尿病になると、リスクが2倍程度になります。なので、うつ病を引き起こさないためにも食べすぎには注意が必要なのです」
最新研究で明らかに! 心を元気にする7つの栄養素
さらに、不足するとうつ病を引き起こすリスクを高める栄養素の存在も明らかになっているという。
「それが、鉄、たんぱく質、ビタミンD、ビタミンB1、葉酸、亜鉛、DHA・EPAの7種です。これらの栄養素は、体の機能を保つだけでなく、脳機能にも重要な役割を担っています。
たとえば、やる気や幸福感をもたらすドーパミンや、心を落ち着かせるセロトニンなどの神経伝達物質を作るには、たんぱく質や鉄、ミネラルなどが必要です。これらの材料が不足すると、神経伝達物質が充分に分泌されなくなり、やる気が出なくなったり、気持ちが塞(ふさ)ぎがちになり、うつ病を発症しやすくなります」
食べる量が足りない場合も
栄養素が足りないのは単に偏った食生活の問題だけでなく、そもそもの食べる量が足りない場合もあるという。
「精白米など、精製・加工された食品は、味はいいかもしれませんが、葉酸などのビタミン、鉄、亜鉛などのミネラル、食物繊維が、玄米に比べ半分以下に減っています。ですから、なるべく精製していない玄米や全粒粉など本来の食材に近い形の状態で食べるようにしましょう」
体にいい食事は心や脳にもいい影響を与える。心が栄養不足にならないためにも、不足栄養素を、普段の食生活に意識的に取り入れていこう。
プチうつを抜ける6つの食習慣
【1】とにかくまず朝ご飯を食べる
うつ傾向のある人は朝食を食べていない人が多いという。
「朝食を摂る人はうつ病になりにくいというデータもあります。生活リズムを整えるためにも、夜の食事は控えめにし、早めに寝て、朝はしっかり食べるのを習慣化しましょう」(功刀さん・以下同)。
【2】和食&地中海式の食事で!
「不足しがちな7栄養素を補うには、魚、野菜、大豆製品、きのこ、貝類などが必要。これらの食材を摂りやすいのが和食や地中海式の食事です」。
ただし和食は塩分が高くなりがちなので、旨みのしっかりとしただしを使うなど工夫をしよう。
【3】食物繊維を摂って腸内環境をよくする
善玉菌(腸の働きを助ける細菌)が少ないと、うつ病の発症リスクが高まる。
「善玉菌を増やすためには、いも類やごぼう、海藻など食物繊維が豊富な食材を摂りましょう」。
【4】緑茶やコーヒーを飲むのがおすすめ
「緑茶に含まれるテアニンには抗うつ作用が。また、クロロゲン酸を含むコーヒーもうつ病予防にいいという研究結果があります。食後などに緑茶やコーヒーを飲む習慣をつけましょう」
【5】手を抜けるところは抜いてOK
疲れた日は、市販の総菜や冷凍食品で済ませてもよい。料理がストレスになるなら手抜きもOKだ。
「ただし、ラーメンだけなどの一品料理で済ませず、サラダをつけるなどして栄養バランスを意識して」。
【6】寝酒はいますぐやめるべし!
「酒を飲むと、寝つきはよくなりますが、眠りが浅くなるなど、睡眠の質は低下します。寝ても心と体の疲れがとれず、悪循環に陥ってしまいます」
教えてくれた人
功刀浩さん/精神科医
医学博士。帝京大学医学部附属病院メンタルヘルス科長・主任教授。食生活と心の病気の関係に着目し、多くの臨床研究に携わる。精神栄養学の第一人者。著書に『こころに効く精神栄養学』(女子栄養大学出版部)など多数。
取材・文/鳥居優美 イラスト/オカダナオコ
※女性セブン2022年11月24日号
https://josei7.com/
●精神科医が解説!10才老ける”コロナうつ”の対処法 |1日1回誰かと話す、肉を食べる、日光を浴びる…