ケンタロウさんのリハビリを支える希望の車いす「COGY」に試乗してみた!
ケンタロウさんが愛用する車いすの名前は『COGY(コギー)』。
見た目は車いすだが、足を置く部分が自転車のペダルのようになっており、乗っている人が足を踏み込むことで、前にも後ろにも動かすことができる。
驚くことに、下肢麻痺の人でも、『COGY』に乗ると、足が自然と動き出し、自らの力で車いすを動かすことができるのだという。懸命のリハビリを続けても、一度失った機能の回復は難しいものだが、立って歩くことができない人であっても、『COGY』ならこぐことが可能なのである。
ケンタロウさんが『COGY』をこぐ姿が報じられてから、『COGY』のメーカー、株式会社TESSには、足に障害を持った人やその家族、高齢者施設からの問い合わせが殺到しているという。早速、株式会社TESSの鈴木堅之社長に話を伺うとともに、『COGY』に試乗させてもらうことにした。
「原始歩行」という反射機能を利用
「私たちが歩くときには、脳から『足を踏み出せ』という信号が発せられます。信号は脊髄を介して足の筋肉に伝わり足を踏み出すことができます。しかし足の不自由な人は、脳からの指令が足に伝わらないために、足を動かすことができません。頚椎や脊椎を負傷した人が四肢に麻痺を起こすのはそのためです。脳の指示が届かないわけですから、厳しいリハビリを続けても、思うようには回復しないのは当然なのです。
しかし、『COGY』に乗ると、生まれてから一度も自力で足を動かせなかった人でも、事故や病気で麻痺が起きた人でも、自然に右足、左足と交互に踏み込むことができます。このときの「こぐ」動作は、脳からの指示で行われているわけではありません。原始歩行 という反射機能を利用しているのです。
たとえば赤ちゃんの上半身を抱きかかえて足を床につけると、足をバタバタさせてまるで歩くような動作をするのですが、 あれも原始的歩行の反射です。右足を動かしたあとは左足、左足を動かしたあとは右足というように、足が交互に動く反射行動が人間には備わっているのです」(鈴木社長、以下「」内同)
『COGY』に使われている原始歩行を引き出す 理論は、鈴木社長とともに『COGY』の開発に携わってきた東北大学名誉教授の半田康延博士によって構築されてきたものだ。半田博士は30年以上も研究を続け、薬や手術に頼らず神経調節を行う技術をニューロモジュレーション』と名づけた。
その研究から、『COGY』の座面とペダルの距離や角度は、ニューロモジュレーションを引き出 しやすいように設計されているため、足に麻痺のある人でも、反射行動によって「こぐ」動作が可能になると考えられている。 パーキンソン病の患者、認知症の方たちの多くが、『COGY』に乗ることで、自力で移動し、生活の幅を広げているという。
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身長150㎝の記者が『COGY』に乗ってみた