痛みでわかる体の異常「レディ・ガガの線維筋痛症、ナイチンゲールは慢性疲労症候群」【医師解説】
頭痛、肩痛、腰痛など誰にも相談できず、ひとりで悩み苦しんでいる人も多い。体のどこかが痛いのは、その部分で異常が起きている証拠でもある。血液検査などで異常が見つからなくても、その痛みの理由を知るのが重要だ。患者の痛みと向き合ってきた麻酔科専門医・柏木邦友さんに痛みの種類について解説してもらった。
「痛み」の種類でわかる体の異常
痛みには、頭痛や腹痛、ぎっくり腰など急に起こる「急性」のものと、肩こりや腰痛など長く続く「慢性」のものがある。
「主な痛みは、体のどこかで炎症が発生して起こるものや、神経が圧迫されて起こるものなど、体内に何らかの異常が起こることで感じるものです。これらは原因がはっきりとしていますが、中には、『痛覚変調性疼痛』といわれる、病気としては診断しづらいものがあります」(麻酔科専門医の柏木邦友さん・以下同)
「痛覚変調性疼痛」は2020年、国際疼痛学会によって定義づけられたが、かつては検査をしても「異常なし」と診断され、「気のせい」と片づけられてしまっていたという。
「痛覚変調性疼痛は、病気からくる身体的な要因だけでなく、ストレスや不安といった精神的要因も絡んでいることがあります」
健康だった人がある日突然、原因不明の疲労感や痛み、発熱に悩まされる慢性疲労症候群も痛覚変調性疼痛の一種だ。
「紀元前から記録が残っているほど古くからある病気で、昔は『神経衰弱』といわれていました。あのナイチンゲールも慢性疲労症候群で、人生の大半をベッドで過ごしたといわれています。
メカニズムはまだ解明されていませんが、研究で明らかになりつつある原因の1つが感染症。新型コロナウイルスの後遺症として、最近は注目を浴びていますが、これはウイルスに感染後、脳の炎症が持続的に起こることで、疲労や痛みを生じさせているのではないかと考えられています」
レディ・ガガさんを休養に追い込んだ「線維筋痛症」
このほか、検査をしても見つけにくい原因不明の病気として「線維筋痛症」がある。
「2017年にレディ・ガガさんが『線維筋痛症で闘病中』と公表したことで、一躍、その存在が広がった病気です。完璧主義の人がかかりやすいともいわれていますが、はっきりした原因はわかっていません。ただ、原因不明のため、見過ごされてしまうことが多く、患者さんは痛みに耐えながら日々を過ごさなくてはならないのです」
痛みを我慢しすぎると、痛みは強くなることは、すでに述べたが、それが進むと、別の病気を引き起こしてしまう。
「その1つが『異痛症』という病気です。たとえば、風が吹いたり、何かに軽く触れているだけなのに痛みを強く感じてしまいます。即効性のある治療法はまだありませんが、鎮痛剤を服用して症状を改善することはできますので、痛いと感じたら、すぐに医療機関に相談しましょう」
あなたが感じる痛みはどれ?メカニズムに基づく痛みの3分類
【1】侵害受容性疼痛(しんがいじゅようせいとうつう)
ぶつけた痛み、がんの痛み、歯痛、関節痛、尿管結石
【原因】
体のどこかで炎症が起こり、発痛物質のブラジキニン、発痛増強物質のプロスタグランジンが生み出されるため起こる。
【特徴】
体に炎症が起こるため、うずくような痛みやズキズキするもの、鋭い痛みなどがある。
【2】神経障害性疼痛
椎間板ヘルニア、帯状疱疹後の神経痛、坐骨神経痛、糖尿病性神経障害、多くの慢性疼痛
【原因】
神経が物理的に圧迫されることにより、神経の異常が起こるため。
【特徴】
「走る」「刺す」「切れる」「焼ける」「握る」と表現されたり、痛み以外に感覚鈍麻や筋力低下が起こることもある。
【3】慢性疲労症候群または痛覚変調性疼痛
線維筋痛症、慢性疲労症候群、過敏性腸症候群、多くの腰痛
【原因】
検査などで明らかな痛みの原因がわからない。
【特徴】
頭痛や微熱、全身の痛みのほかに強い疲労感、脱力感が長期にわたって続く。
教えてくれた人
柏木邦友さん/麻酔科専門医。東京マザーズクリニック麻酔科医、アネストメディカル代表。著書に『とれない「痛み」はない』(幻冬舎新書)がある。
取材・文/廉屋友美乃 イラスト/沼田健 資料提供/柏木邦友さん
※女性セブン2023年2月23日号
https://josei7.com/
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