兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第185回 診断書が欲しいだけなのに】
若年性認知症を患う兄の主治医は、いつもとても冷たい態度で、その様はまるでテレビドラマ『白い巨塔』に登場する財前五郎医師。それが主治医の先生を示す言葉が財前先生(仮)となった由縁なのです。今回は、兄の通院に付き添う妹のマナミコさんは、書類の手続きでも苦労が絶えないというお話です。
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病院窓口の対応には首を捻ることばかり
こんにちは、最近ひと塗りするとパンがたちまちウニ風味を纏う「ウニバター」がマイブームのツガエでございます。
2年に1度の恒例、障害者手帳と自立支援医療受給者証同時更新のための「診断書」を財前先生(仮)に書いていただく時期がやってまいりました。
なぜか「診断書」にはいい思い出がございません。
昨年、兄の年金請求のために診断書をお願いしたとき、その後の診察日に「僕から電話したことは認識されていますか?」と不満げに問われたことは忘れられません。先生からお問い合わせのお電話があったときにたまたま出られなかったのは確かです。でも先生の留守電を聞いてすぐに病院に折り返して先生(を名乗る人?)とお話ししてとっくに問題は解決済みだったのです。逆に「わたくしと数分お話ししたことは認識されていますか?」と言ってやりたいくらいでございました。
さて、今回の「診断書」でも少々ムカつくことがございました。
昨年、診察日のついでに診断書を申請したときに「郵送」と「受け取り」を選べる項目があったので、「郵送」にチェックを入れて提出したのです。すると窓口で「郵送の場合はレターパックをご持参ください」と言われたので、仕方なく「受け取り」に切り替え、わざわざ診察日でもない日に取りに行ってまいりました。
その経験があったので、今回は前日に郵便局でレターパックを購入して、意気揚々と申請窓口に向かったのでございます。午前中は混んでいるので午後を選んでいきましたが、文書申請の窓口は1つしかなく、なかなか順番が回ってきません。小一時間も待ち、やっと順番が回ってきたので、ここぞとばかりレターパックと申請書類を差し出すと、今度は「今日はご本人様はご一緒ですか?」と問われ、「いいえ」と言うと、「申請時にご本人様がいない場合は郵送できないんです」とおっしゃるではありませんか!
「ええっ?そうなんですか?」と驚くわたくしに「委任状はありますか?」と問う窓口のお姉さま。「いいえ、持ってないです」と答えると「今日はご本人様との関係を証明する戸籍などはお持ちではないですか?」とおっしゃる。そのお顔がツンとしたすまし顔だったので、わたくしは「ありません」といいながら苦笑してしまいました。「戸籍謄本や抄本を持ち歩く人なんている?」とツッコミたくなってしまったからです。
それをグッとこらえていると、「申請は受け付けられます。でも郵送はできないので受け取りに来ていただくことになりますけど、本日の申請でよろしいですか?」とおっしゃる窓口のお姉さまに「わかりました。受け取りに来ます」と告げ、レターパックを静かにひっこめたわたくしの滑稽をお笑いください。宛先に自分の住所を力強く書き込んでしまった520円のレターパックの出番がくるのは、きっと次回診断書が必要になったときぐらいでございます。
「これは2年後(次の障害者手帳更新時)でも使えるだろうか…」と思いながらのろのろと病院の玄関を出ようとしたところで「ツガエさんっ」と窓口の姉さまが小走りに駆け寄っていらっしゃいました。
「今見たら登録の住所が違うのですが、お引越しされましたか? 住所変更をしていただかないと書類が作れません」とおっしゃるではありませんか。
引越しは3年半前。保険証も現状の自立支援受給者証も現住所で作られているので「今日、住所変更していただかないと」と言われる意味がよくわかりませんでしたが、まぁ病院内のデータが変更されていないことは確かなようなので、言われるがままに住所変更の書類を書いて提出いたしました。
診断書を申請しに行くだけで往復5時間かかってしまうのですから、つくづく病院というところは面倒なところでございますね。窓口のお姉さまも、要領を得ないお年寄りや待たされて不機嫌な人たちを相手に奮闘されているのでお気の毒。今年は多少のことではイライラしないおおらかな人間になることを一年の抱負にしたいと思いました。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性59才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現64才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ
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